【おまけ】《スライムとメイドの小休止①》
スライムと夜のおはなし
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焚き火の明かりが揺れる夜、スライムのマサキはぬるりと横たわっていた。
……というか、自然と地面に広がっていた。もう慣れてきた。
そんな彼の両隣で、なぜかメイド二人が言い争っている。
レナ「あのスライム様、今日わっちの目ばっか見てたでござんしょ? 明らかにわっち贔屓でござんすよね!」
イリシャ「ふふ、それは“感謝”のまなざしどしたんやない? あての銃があんだけ当たれば、そらあてに惚れてまうやろ〜?」
レナ「はァ!? あのまなざしは忠義に応えた目でござんすよ! どこぞの色目使いとは格が違いやして!」
イリシャ「おやおや、ちっちゃいわりに口は達者やなぁ。マスターはぜ〜んぶ、あてが受け止めたるさかい♡」
レナ「黙んなせぇっ! わっちはメインヒロインでござんすっ!」
……そんな口論を横で聞きながら、マサキはただ震えていた。
喋れないから止めることもできず、身体をぷるぷる揺らすしかない。
たぶん、「どっちでもないよ……」って言いたいのだと思う。
でも二人は、そんなスライムの意思をまるで汲まずに――
レナ「スライム様、今夜はわっちが添い寝してさしあげやす!」
イリシャ「いややわ〜。マスター、あてのお膝で寝たいって言ってはったやんかぁ♡」
こうして、粘液生命体マサキの眠れぬ夜は、今日もぬるっと更けていった。