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《人間になりたいだけなのに、俺のメイドが強すぎる》  作者: やはぎ・エリンギ
メイド設定集

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第一章:武器を託した日

マサキ


俺は、祈るような気持ちで力を振り絞った。


この粘液の身体に宿る“創造錬金術”で、

地中の鉱石を素材に、思い描いた武器を組み上げる。


ひとつは、戦鎚ハンマー――

どんな魔法も、振り下ろせば沈黙させる重み。

もうひとつは、軍用ハンドガンMk23 SOCOM。

遠距離対応、即応性重視。


そして、もう一組。

Barrett M82。重すぎるはずの大型狙撃銃。

加えて、湾曲した短剣――ナックル付きカランビット。

刃に“麻痺”のエネルギーを込めた。


……これが俺にできる、最大の助けだ。


俺はそれらをスライムの体から突き出し、

目の前で倒れていた二人の少女へと差し出した。


一人は、小柄な茶髪の少女。

もう一人は、長い黒髪を編み、どこか優雅な雰囲気をまとっていた。


俺の意思が伝わるかどうかはわからない。

けれど、二人は――その瞳で、俺を見た。


そして、手を伸ばす。


 


この瞬間、すべてが始まった。



レナ


……わっちは、いったい何を握っていやしょう。


気がつけば、右手には鉄の塊のようなハンマー。

左手には、小ぶりながら禍々しい黒の武器。


あの黒いスライムが、目の前でぷるぷる震えていやした。


「……な、なんでこんなもん……」


武器なんぞ握ったのは初めてでありんす。

それでも、手のひらにすっと馴染む感覚は、どうにもおかしい。


(これ……“わっち用”に作られたみてぇじゃござんせんか?)


目の前では、ゴブリンどもが涎を垂らして近づいてくる。


「……へ、へっ。なめられたもんでござんすなぁ!」


震えながらも、銃を構え――

引き金を引いた。


パンッ!


ゴブリンの膝が吹き飛んだ。思わず声を漏らす。


「な、なんだこりゃァ! これ、わっちが撃ったのかい⁉」


そのまま走り出し、両手でハンマーを握る。


「……いっちょ、やったりましょうや!」


「魔法使い風情が、のさばってんじゃござんせんよ!」


叫びながら、ゴブリンの魔法詠唱者に叩き込む。


ズドォン!


魔力の光が弾け、消えた。

【スキル封印、成功。】


 頭の中にメッセージが響く


「次は誰でありんす?」


気づけば――笑っていた。

あのスライムを、ちらりと見た。

……なんだか、ちょっとだけ誇らしかった。



イリシャ


こんな武器を持つのは、……初めてや。


けど、なんやろ。重さも、この変なスコープの位置も、全部……

まるで、あての身体に合わせて作られとるみたいやわ。

「……あんた、ほんまに……不思議な方やなぁ」


何と呼んだほうがええんやろか?

あの黒くて、震えてるだけの粘液の中に……なんでこんな“贈り物”を詰められるんやろ。


スコープを覗く。

魔法陣を展開しようとしている後衛のゴブリン。

ちゅうても、あての視界の中では、ただの的どす。


「……旦那はん、失礼つかまつりますえ」


トン。


指先が、引き金を撫でる。


パンッ!


ゴブリンの頭が弾け、吹き飛んだ。

他の奴らがこちらを見たときには、遅い


「ふふ……近づいたらあかんよ」


渡されていたナックル付きカランビットを抜き、ひと突き。


刃が当たった瞬間、相手がバタリと倒れこむ。

動けない。麻痺効果。


「……この刃も、使いやすぅて困るどす」


周りに、敵はもう見当たらない。


 


振り返ると、あのスライムが、じっとこちらを見ている。


……ああ、もう。

そんな目で見つめられたら、なんや、胸が苦しなるわぁ。


「旦那はん……あて、あんはんにお仕えしとうてしゃあないんどす」


レナも、同じようにぺこりと頭を下げていた。


「……おいでなんし、マスター。あっしら、あんたのもんでござんす」


その言葉を受けて、スライムは、ぶるぶるっと震えた。


それが、喜びなのか、照れ隠しなのか。

たぶん──両方だったのかもしれない。



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