【おまけ】《スライムとメイドの小休止③》
――拷問部屋にて
戦闘の疲れも癒え、探索が一段落した頃。
マサキは廃屋の一角で、妙に重厚な扉を見つけた。
「……あれ? この部屋、まだ誰も見てなかったよな?」
近づこうとしたそのとき――
「あぁ〜〜〜! いぃ〜〜〜〜〜〜っ!!」
「す、スプラッシュッ!!!」
――なんとも説明しがたい奇声が内部から飛び出してきた。
思わずビクリと身を引くマサキ。
直後、ギィィ……と扉が開き、返り血まみれのレナが、どこか遠い目をして無言で出てきた。
「……」
無言でマサキを撫でると、血の滴るハンマーを片手に、ふらふらと廊下の奥へ消えていく。
(え……なに? なにがあったの……?)
不安と好奇心がせめぎ合いながらも、マサキはそっと扉を押し開けた。
――中は、まるで中世の拷問部屋のようだった。
壁に吊された錆びた鎖、吊るされた謎の革具、そして――
部屋の中央。
一本のロウソクに照らされた“異形のシルエット”。
その中心に座していたのは――ゼルだった。
上半身裸。
全身に打撲痕。
両足には鉄球付きの枷。
そして“あの”形をしたブリキ製の処刑道具――いわゆる“拷問馬”にまたがり、
白目を剥きながらも……なぜか――
満面の恍惚の笑みで気を失っている。
マサキは小さく震え、そっと扉を閉めた。
(……もう二度と、この部屋のことは思い出さないでおこう)
廊下に出ると、さっきのレナが湯けむりへと向かっていくのが見えた。
その背中からは、どこか誇らしげな達成感すら滲んでいた。
廃村カリュド――そこは、戦場であり、
“性癖”の地雷原でもあった。