狙撃支援:イリシャ
イリシャ
レナは最前線で舞い踊るように戦っていた。
その姿を見届けながら、あては息をひとつ。
「ふぅ……さて、あての役目、果たさなあきまへんなぁ」
Barrett M82のバイポッドを低く構え、スコープを覗く。
茂みの奥、木陰、岩の裏。敵の配置は完璧や――まるで罠のようどす。
けれど……マスターの伝令にあったやろ?
> 【支援要請:高台の狙撃→突撃→左右展開】
「おおきに、マスター。……それなら、あての銃で穴をあけまひょ」
スコープの中心に、敵後衛の隊長格――
仮面をつけたホブ魔法兵が映った。
「お命、もろても……かまへんやろ?」
引き金に力を込める。
静寂を切り裂く、重く鋭い銃声――
バンッッ!
弾は仮面を貫き、魔法兵の頭部をえぐる。
同時に、周囲の敵が悲鳴をあげ、慌てて散る。
「ええ混乱ぶりどすなぁ……どれ、もう一人いっときまひょか」
連射ではない。一発一発が命を刈り取る精密射撃。
まるで、あての心が弾に乗り移ったようどす。
「レナはん。背後から来てまっせ」
レナの足元に迫る短剣使いを、狙撃で仕留めながら呟く。
「……あて、守りたいものがあるさかい。マスターも、レナはんも。ひとりたりとも、通しまへんえ」
引き金を再度、そっと引いた。
マサキ
(すげぇ……イリシャ、あんなに遠いのに寸分の狂いもない)
森の奥から、爆音のたびに敵が吹き飛ぶ。
(レナが前で暴れて、イリシャが後ろで削ってる。こっちは……ただ状況を見守るしかない。)