交戦:レナ、封殺槌振るう
レナ
風すら怯えたかのように、時間が一瞬止まった。
その空白を最初に破ったのは――わっち、レナでありんした。
「さァて、舞台開けるでありんすよ♡」
土埃を巻き上げ、レナの身体が地を蹴った。
身の丈よりも長いハンマーを軽々と片手で振り上げ、真っ直ぐ敵陣へと突っ込む。
前衛のホブゴブリン三体が、咄嗟に武器を構えた。
――遅いわ。
「なぁに、そんなもんで防げると思ったのかえ? あきれけぇるねッ!」
レナの全身が回転し、大ハンマーが描く放物線が空気を裂く。
次の瞬間――
ドガァン!
爆裂と同時に一体目のホブが空中に舞い、背後の木に叩きつけられた。
さらに反動でハンマーが回転し、もう一体の胸を貫くように叩き潰す。
残る一体がスキルを詠唱しようと口を開く……が。
「――《封殺槌》」
レナが踏み込んでからわずか2秒。
ハンマーの打撃面が敵の腹部にめり込み、スキル詠唱の光が霧散する。
全身が痙攣し、崩れ落ちるホブ。
「どれ、スライム様の火成弾も味わっておくれな」
レナはすかさず腰のホルスターからMk23を抜き、
背後の岩陰に隠れていた弓兵に、火成弾を**パン、パン!**と連射。
──着弾後、爆裂し、周囲の敵を吹き飛ばす。
敵は吹き飛び、スキルも封じられ、のたうち回るしかない。
「さ、次はあんたでありんすなぁ……」
視線の先。
ひときわ大きな影が、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。
筋骨隆々の体躯、片手に刃こぼれした斧を握った“異様なホブゴブリン”。
通常個体とは異なる、明確な殺気。
「まァ、前座にしちゃ上等な相手ざんすな。スライム様の前で無様は晒せやせん……!」
レナが重心を下げ、構えを低くした。
前哨戦の、最初の山場が――今、始まる。