廃村カリュド、静寂の門
廃村カリュドに近づくにつれ、辺りは静まり返っていた。
吹き抜ける風の音と、遠くで鳴く鳥の声がやけに耳に残る。
そんな中、突然マサキの脳裏に電子音のような響きが鳴り響いた。
> ピコン!《隠しスキル:異世界言語》を習得しました。
・異世界住人との意思疎通が可能になります
・読解および文字記述能力を獲得しました
(……読める? 書ける?)
マサキは、ぷるりと身体を震わせると、
スライム体の内部から淡く光る魔力糸のようなものを紡ぎ出した。
それは空中に流れるように伸び、やがて――
《空中に文字が浮かび上がる》
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レナの武器
「Mk23 SOCOM:銃身強化済、反動低減」
「魔封ハンマー:打撃時に対象スキルを封印」
イリシャの武器
「Barrett M82:照準補助あり、魔力干渉弾対応」
「ナックル付きカランビット:麻痺毒塗布済、接触即時効果」
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レナ
「……こいは……なんじゃ? 空に……“字”が浮かびんした……?」
イリシャ
「ふふ……あてらの武器の説明どすやろ。マスターがあてらに教えてくれてはる」
ふたりが驚いたように、指先で空中の光文字をなぞる。
すると――
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> ピコン!《連携補助:器用度+5》
・対象:レナ、イリシャ
・発動条件:装備品への構造的理解および強化内容の認識
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マサキの視界の隅に、ふたりのステータス変化が表示された。
レナ
「スライム様、ありがたきしあわせ……。わっち、ちゃんと“わかって”動きんす!」
イリシャ
「あて、理解できたら強くなれる。……マスター、ちゃんと伝わってまっせ」
ふたりの目に、確かな決意と輝きが宿る。
――それは、戦場で命を預け合う者たちの、無言の合図だった。
廃村の門が、静かにその口をひらく。
次なる戦いの幕が、そこにはあった――。