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『ねぶた』

『ねぶた』


※ かなりいい加減な情報もふくまれていますので、正しく知りたい方は下記を参考にしてください。

https://www.nebuta.jp/know/origin.html

 日本の火祭り 青森ねぶた


 青森に『青森ねぶた祭り』という祭がある。

 東北三大祭りだとか四大祭だとか言われているが、見た目の勇壮さや賑わいからすれば、文句無しに東北最大規模の祭だ。

 この祭を知らない人は、日本において少数派に分類されるだろう。

 このねぶた祭、今でこそ国の重要無形民俗文化財に指定されているが、藩政時代や明治時代にはしばしば禁止令が出されている。

 大型の灯籠を担いで町中を練り歩く行為を、今で言う所の無届け【何かに反対・抗議・過激な投石込みデモ】に繋がると、幕府や明治政府は見ていたのだろう。

 何だかんだ偉そうな事を言っていても、幕府や明治政府は祭りの集まりにもビビッて規制して抑え込まなければならない程、我がままな根性無しのヘタレだった。

 国民が楽しみにしている【お祭り】までも、時のお偉いさん方は手前勝手な都合で潰してしまっていたようだ。

 今も、所によってはたいして変わらないのだがね。


 現代の青森ねぶた祭は、青森市で8月2〜7日に開催される夏祭りで、延べ300万人以上の観光客が訪れるほどの超ビックイベントになっている。

 開催費用は約2億数千万円。

 おおーー! すげえ! 1%でいいから俺にくれ、提灯持って市内一周走ってやる。


 ねぶたはいわば張りぼてである。

 皆さん御存知のように、しっかりはっきり間違いなく絶対に張りぼてだ。

 見掛けは素晴らしいのだが中は空っぽで、外から見て見栄えするように照明を使って外角だけを夜の空間に浮かび上がらせている。

 張りぼてもここまでくると芸術、文化財として認められる域となる。

 近年ではこの様な張りぼて手法を使って、さえない映画や音楽に凄い出来のプロモーションビデオを作って大勢の観客を動員したり売ったり。

 内容の説明をはぐらかして見かけだけ立派にとった写真などで、ネット販売の促進をしたり。

 そんな悪徳商法まがいの際どい商売が流行っている。

 広告の力は実に恐ろしいものだ。

 賢明なる消費者の皆様には、つまらない買い物をしたり、変な勧誘にひっかかったりしない為にも、本物を見極める心眼を大切にしていただきたい所である。


 ねぶたで街中練り歩く張りぼて。

 どうやって作るかというと、まず題材を決定してから設計図となる下絵を描く。

 それから下絵を参考にしながら各パーツを作る。

 題材は伝説や歴史上の人物・歌舞伎・神仏・地元の伝説や偉人、テレビ番組などにしている。

 はっきり言っちゃうと、目立った者勝ちみたいな所がある祭だから、派手で名前の知られた者をでかい張りぼての題材にして客の目を引くのが最もポピュラーな作戦である。

 人物とは限らず、初代青森名誉市民【棟方志功】の生誕100周年には、彼の版画を題材にしたものが登場している。 

 著作権侵害にはならなかったようだ。


 題材が決まって各パーツが粗方出来上がると、パーツ類をとり付けて一つの作品にする為の骨組み作りのが始まる。

 元々中は空っぽーカーラカラッポーの張りぼてであるから、壊れさえしなければ中に入ってからの見栄えは気にする必要は無い。

 外から綺麗に凄く良い物に見えてさえいれば、観客は納得してくれる。

 もっとも、中からの光でライトアップするのだから、妙な影が外にまで見えてくるようでは失格である。

 骨組みが完成したら内側に設置する灯り用の電気配線をする。

 内側からの灯りはパソコンのバックライトみたいなものだ。

 バックライト無しでは薄暗くて何が書かれているか分からない液晶画面も、バックライト一発点灯でパソコンは嘘と真実が入り乱れるネット社会にいざなってくれる。

 張りぼてのねぶたもまた、中のライト一発点灯と同時に、観客を夢の世界へと引き込む。

 灯りは人々を暗示にかけるための必須アイテムだ。


 戦前まで、人形型ねぶたの骨組みは竹を曲げてつくっていたのだが、昭和30年代に北川啓三というねぶた師が針金を使って複雑なねぶたを作ってから、針金で細かい部分を作る技法が主流となっていった。

 当時としては新しい試みで反感はあったらしいのだが、その出来栄えの良さから直ぐに反感は消えて主流となっている。

 こればかりは、ねぶたその物を作るのが庶民であるだけに、いくら威張り散らした御役人様でもあれこれヤッテはいけないとは言えなかったようだ。

 細かい部分を初めて針金で作った北川啓三という人、ねぶた師という生業の人だとの記録があるのだが、随分とアイデアが溢れていた人らしく、それまでロウソクだった内部の明かりを蛍光灯に替えて過激に明るく煌き輝くねぶたを最初に作った人でもある。

「ねぶたの神様」と評されている北川は、とっくに三途の河の渡しねぶたで向こう岸に渡ってしまっているが、現在の主流となっているねぶたの基礎は、北川啓三が築いたと言える。


 骨組みができると、いよいよ針金の表面を覆う紙貼りとなる。

 見かけの悪い部分や見られるとまずいような所はこの時点で巧妙に隠す。

 移動中や制作中に多少荒が出ても、その上から紙を貼り重ねてしまえば、短い祭りの期間中くらいなら何とか客を誤魔化していられる。

 張りぼてのいい所である。

 費用は極力安く、見栄えはこの上無くよろしくがこの祭りの真骨頂と言えなくも無いような気がする。


 紙を貼っただけではまだドラエモンだかアラレちゃんだか分からない。

 ここから紙の上に黒いフチ取りを描く『書き割り』という作業に入る。

 デッサンみたいな感じだが、この後に待っている着色時に紙に滲んで色が混じって薄らこ汚い初めての水彩画みたいになっちゃうのを防ぐ『ロウ書き』という作業の為の下書きと思っていいだろう。

 たぶん、憶測でしかない。

 ロウ書きという作業がどんな作業か、実の所、俺知らないし……。


 ロウ書きが終われば、白地の張りぼて紙に彩色する色付けに入る。

 完成間近といった時期で派手に楽しい作業であるような気がしないでもないが、おおよそ大物作りの場合祭りの前日に仕上がったなどという話はよくある事で、きっとねぶたも例外ではないだろう。

 皆様どうも御苦労様です


 最後にやってくるのが、持ち上げて台車に設置する『台上げ』という工程。

 祭り間際のクライマックスとも言える作業だが、何で最初から台車の上で制作しないのか、色々と事情があるのだろう。

 これら10の工程を経て完成するねぶた、どれが1でどれが5なんだか、書いてる俺も分からなくなっているが、とにかく仕上がった事にして次に進んでみよう。


 前記にもあるように、その祭りの模様から危険な奴との烙印を押されてしまったねぶたは、戦時中も大日本帝国政府によって禁止されていたが、戦況が悪化した1944年には戦意高揚の為に解禁されている。

 何時の時代も上の方に胡坐かいてる奴等は、庶民の心情などお構いなしに我儘放題にやってくれるものだ。

 戦後は企業がねぶた運行の主体となっているから、それなりに稼いでいるらしい。

 2億からの金をかけてやれるという事はそれなりの経済効果が見込めるというか、実際にそれ以上の利益があるからやっている。

 300万人×(宿泊・食事等、一人頭1万円の消費とかなり少なく見積もっても)=300億円の売り上げ×粗利3割で90億円だもの2億や5億や10億かけられる。

 どっかの財政難自治体が無理してみえはって開く、一分間隔に打ち上げる寂しい限りの夏祭り花火大会とはスケールが違う。

 震災の影響で観光客が減ったとは言え、地道に復活・復興しているようだから、元に戻るのもそう遠い話ではないだろう。


※ この記事は2011年の東日本大震災の数年後に描かれたものです。


 現在ねぶたの最大サイズは幅約9m、これは道路幅の実情からして限界。

 奥行きは約8m。

 これも道路を曲がり切れる限界値に近い数字だろうな。 

 きっと。

 高さ約5m、これは道路上を横断する電線の一番低い高さとして法で定められているから、これ以上高くすると電線をぶった切ってしまう。

 近所迷惑な祭りになってしまうからの高さ制限だが、確か京都の祇園祭の山車は5m以上の高さがあって、山車が通る時には道路横断している電線を撤去していたと思う。

 五所川原立佞武多にいたっては高さ20mの張りぼてが街中を練り歩く。

 この場合の電線はどうなっているのか、定かではない。


 自由に動き回れて尚且つ『ねぶた』の魅力を十分に引き出す為の規定といった感じの大きさである。

 明治から大正にかけてのねぶたは電線が無かったので、背が高く立った姿勢の写真が現存している。

 そのまま引き継がれたのが五所川原の立佞武多である。

 電気の普及が人々にとって良かったのか悪かったのか、伝統や技術・芸術・習慣までも変えてしまう現代テクノロジーは、使い方を熟知した使い手が正しく使ってこそ人の為・世の為になるもの。

 ちょいと間違えば大惨事になりかねない事を承知しておかねばならないだろう。


 ねぶたは毎年8月1日に前夜祭が有って、2日〜7日までが本祭。

 2〜6日に夜間運行だから、昼間の運行日に行っても光り輝くねぶたは見られない。

 要事前チェック。

 ただ、7日は昼間の運行としているが、夜に海上をねぶたが移動する花火大会が催される。

 結局いつ行ってもいいのだな。

 さすがに頭の固い役人主催でなく、民間の商売上手が知恵を集めて催している祭だけあって、完成された見せ場の作り方はたいしたものだ。


 こんなに凄いねぶたの実行委員会でも、暴走した参加者というか祭り荒しに悩まされた時期があって、出発点やルートの関係でねぶたに最後尾ができると、その後ろにくっついてやりたい放題やった連中がいた。

 黒装束などの衣装でねぶたに参加していたこの族を【カラス族】と言って、大きな社会問題にまでなったのだが、関係各氏の並々ならぬ努力とボランティアの協力、適切な対策と対応で締め出しに成功している。

 何の政策も声明も無いまま一国の代表が雲隠れして、テロリストを野放しにし国民を見捨てたも同然で、ライフラインの復旧もままならない。

 危険な爆弾とか地雷がそこら中に転がっているのに報道規制して、だんまり決め込んで国民が犠牲になったってお構い無し。

 何処かの国の政府とは大違いである。


 単なる金儲けではない、祭りに対する真っ正直な情熱と郷土愛が彼らを動かしているんだろうな。

 結果として集った人間が作る大きな波が、大きな金を動かしているだけなんだよね。


 めっちゃクチャかっこいいじゃねえかよー! ねぶた!

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