第95話(第二部最終話):そして、冬休み
その後三ヶ月ほど時は流れ、冬真っ只中の十二月中旬を迎えた。
今日は終業式。
生徒はみな学園の大講堂に集まる。
ただ、俺だけは壇上に立っていた。
目の前にはクルーガー先生。
なぜかというと……。
「ディアボロ・ヴィスコンティ、貴殿の活躍をここに表する。……これからも頑張るんじゃよ」
「ありがとうございます」
クルーガー先生から魔石プレートを貰うと、講堂は生徒たちの拍手で満たされる。
“文化体術総合競技会”での一件を経て、俺は“魔族教会”の侵略を退けた功労者と評価された。
手元のプレートからは小さな花火が光り、俺を祝福する。
その後の調査で、学園を襲った魔族は半魔族と判明した。
元はゾゾネ刑務所にいた囚人であり、何らかの魔法――おそらく魔族の魔法で、半魔族に変化させられたようだ。
今は学園と王宮が共同で元に戻す治療を進めているが、全員意識がぼんやりしており全容の解明には時間がかかるとも聞く。
そして気になるのは、フェイクルの存在だ。
まだ数度しか戦ったことはないものの、かなりの強敵であることは容易に想像つく。
何より、彼女の歪な魔法が脳裏にこびりついていた。
――《転送装置ノ陣・簡易式》……。どことなく、現代的な魔法だった。
地面から現れた筒のような物体は、映画や漫画で見る転送装置に非常に似ていた。
新しく開発された魔道具と言ってしまえばそうなのだろうが、どうしても気になっていた。
そもそも、このゲームにあんな魔法はない。
同時に、フェイクルの正体にも一つの可能性が浮かび上がる。
――もし、フェイクルが俺と同じ転生者だったら……。
現代的な魔法が使えたことにも説明がつく。
だが、みんなには話せないでいた。
まだ可能性にしか過ぎないし、俺はディアボロでないと話すことにもなるだろう。
だから今は頭の片隅に置き、今まで以上に修行に励むことにした。
この先、また戦う気がするのだ。
フェイクルともフォルトとも……。
座席に戻って胸につけると、シエルたちいつもの三人が祝してくれた。
みんなの笑顔を見ていると、平和の尊さと維持する大変さ、改めてその両方を感じるな。
クルーガー先生の短い挨拶で終業式は終わり、生徒たちは各々のクラスに戻る。
最後、各担任からホームルームがあるのだ。
教室に入り静かに待つと、アプリカード先生が入ってきた。
「さて、今年最後のホームルームを行います。皆さんも知っての通り、約三ヶ月前我々は“魔族教会”の襲撃を受けました。皆さんの懸命な戦いもあり無事に退けましたが、学園は今以上のより実践的な訓練を始めることを決定しました。具体的には、“魔法局”でのインターンです」
アプリカード先生の言葉を聞いて、教室はどよめく。
――魔法局。
魔族との戦いの最前線を務める、エイレーネ王国の最重要国家機関だ。
ここ“エイレーネ聖騎士学園”の卒業生でも、本当に優秀な一握りの人材しか入省できない。
今までのダンジョンや森での訓練より、何段階もレベルが高い内容であろうことは容易に想像つく。
「本来なら二年生の二学期から始まるスケジュールでしたが、先ほど述べた事情もあり、予定が繰り上がりました。冬休み開けすぐにでも始められるよう調整していますので、休みの間も決して気を抜きすぎないように」
みな、緊張した表情でうなずいていた。
“魔族教会”はみんなで一丸となって退けたものの、本物の魔族たちとの戦闘はまだだ。
戦力を温存しているとも考えられる。
まだまだ決して油断はできないのだ。
ホームルームも終わり、俺たちは教室を出る。
しばらくは寮から離れ、懐かしの実家生活だな。
クララ姫は直接王都に帰るそうで、校舎の前でお別れした。
「それでは、皆さん。しばしのお別れですね。またお会いできるのを楽しみにしております」
「クララ姫、お元気で」
王族専用の超絶豪華な馬車に乗り込むクララ姫を見送り、俺たちも帰路に就く。
傍らのシエルとマロンは、何だかんだ久々の帰宅が楽しみのようだった。
「寮もいいけど、私はやっぱり実家の方が落ち着くわ」
「私も早くお父さんの顔が見たいです」
「みんなもシエルとマロンに会えるのを楽しみにしているさ」
二人と話しながらも、心の中で気を引き締める。
――年が明けたら魔法局でのインターンか。
空を見上げると雲一つない快晴だった。
今日から冬休みが始まる。
よく学びよく遊び、有意義な時間を過ごしたい。
……この世界の平和を守るために。
お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます
これにて第二部が完結いたしました!
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