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第93話:舞踏会

□□□


「ダンスが上達したわね、ディアボロ。」

「ああ、この日のために特訓したからな」


 微笑むシエルの手を握りリードすると、学園の大ホールに優雅なピアノの音楽が響く。

 俺は今、シエルと一緒にダンスを踊っていた。

 周りを見渡しても、生徒たちは各々のペアとダンスを踊る。

 “文化体術総合競技会”は途中で中止となってしまったが、先生たちの厚意で舞踏会だけ開かれることになったのだ。


 “魔族教会”の襲撃から二週間ほどが過ぎ、徐々に学園に平穏が戻ってきた。

 校舎や学園の敷地には破壊された痕跡が所々残っているものの、概ね雰囲気は明るい。

 死者が一人もいなかったことと、みんなで協力して撃退できたからだ。

 復旧作業も順調に進んでおり、あと二週間もすれば完全に平常時に戻ると聞いた。

 生徒も作業を手伝っているので授業はお休みだが、修理や修復に忙しい日々を送る。

 一曲ワルツを踊り壁際に設置された休憩スペースで休んでいると、マロンとクララ姫が飲み物を持ってきてくれた。


「ジュースをどうぞ、ディアボロ様、シエル様。お二人ともとてもダンスがお上手ですね」

「まるで、王宮のダンスパーティーでも見ているかのようでしたわ」


 二人とも俺たちのダンスを褒めてくれる。

 ジュースを飲んでいたら、マロンとクララ姫は今日はまだ踊っていないことに気がついた。

 俺の世話で舞踏会が終わっては申し訳ないな。


「ねえ、二人は誰かと踊ったりしないの? 俺のことなんか気にしなくていいが……」

「「私たちが踊るのは、もちろん……」」


 マロンとクララ姫は意味深な表情で顔を見合わせる。

 な、なんだ?


「「ディアボロさん以外は考えられません」」

「なるほど……」


 どうやら、シエルたちは事前に俺と踊る順番を決めていたらしい。

 みんなと踊るのは楽しいものの不安になる。

 ダンスって結構体力使うんだよな。

 三連続いけるだろうか。

 夜のダンスで鍛えてはいるものの……。

 ふしだらな妄想をしたためか、大ホールの向こう側からアプリカード先生とレオパル先生が歩いてきた。

 俺たちは椅子から立って出迎える。


「「お疲れ様です、アプリカード先生、レオパル先生」」

「こんなときまで硬くならなくていいですよ。あなたたちのためのパーティーなのですから」

「休みたまえ」


 休んでいいと言われ、俺たちはすっと身体の力を抜く。

 アプリカード先生は爽やかな緑のドレスを、レオパル先生はシックな黒のドレスだ。

 二人とも普段とは全然違う雰囲気だった。

 シエルが感嘆とした様子で呟くように言う。


「先生たち、とってもお綺麗です……。見とれてしまいました」

「ありがとうございます、シエルさん。皆さんも素敵ですよ」


 アプリカード先生は嬉しそうに言うと、真面目な表情になって俺の方を向いた。


「……ディアボロさん」

「は、はい、すみません」


 条件反射のように謝罪する。

 毎日のように怒られてしまうので(主に夜の過ごし方について)、すっかり謝る癖がついてしまった。

 また夜の過ごし方について注意を受けるのだろうか。

 ドキドキと待っていたら、予想に反してアプリカード先生は俺を褒めてくれた。


「私はディアボロさんが五大聖騎士の末裔だと、今でも信じています」


 レオパル先生もまた、わずかな微笑みを浮かべて俺に言う。


「お前は学園でも一、二を争う努力家だ。入学したときもそうだが、私はお前に驚いてばかりだ」


 これからも頑張りなさい、と言うと、二人の先生たちはダンス会場へと歩いていった。

 朗らかな余韻を残し、俺は二人の後ろ姿を見送る。

 アプリカード先生はクルーガー先生と、レオパル先生はリオン先生とダンスを踊り始める。

 四人ともこなれており、生徒よりずっと優雅なダンスだった。

 俺たちはしばしぼんやりと眺めていたが、やがてマロンが思い出したように俺の手を握る。


「さあ、ディアボロ様。次は私とお願いいたします」

「そうだな。待たせてごめんよ、マロン」

「その次は私ですからね、ディアボロさん」


 シエル、マロン、クララ姫……みんなと変わりばんこに踊るうち、夜は少しずつ暮れていった。

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