第92話:学園の危機は……
鬼武人は日本刀のような刀を構え、魔道具を守るように立った。
向こうから攻撃を仕掛けてくる気配はない。
魔道具の守護のみが役割なのだろう。
立ち上がり体勢を取り直すと、シエルが呟いた。
「あんなモンスター見たことないわ」
「あいつは鬼武人。暗黒炎龍と同じ……Sランクだよ」
「えっ……お、鬼武人!? 初めて聞いたわ。しかもSランクなんて……!」
シエルが驚くのも無理はない。
あれは特殊なモンスターだ。
このゲームは日本製なので、和風なモンスターも何種類か出てくる。
開発でも特別扱いされたのかエンカウント率が極めて低く、どいつこいつも恐ろしく強かった。
目の前の鬼武人も例外ではない。
東洋の島国から来た英傑の霊魂が宿っており、生前の剣術がそのまま使えるという設定だ。
身体を覆う鎧は斬撃以外の物理攻撃を100%カットする絶対防御の鎧、〈朱雀威大鎧〉。
手に持つ刀は解放度★9未満の魔法を全て斬り裂き無に帰す妖刀、〈獅子蜻蛉〉。
原作では強力な剣系統のアイテムを入手するか、解放度を★9まで上げないと文字通り傷一つつけられなかった。
Sランクモンスターの中でもトップクラスの強さ。
あまりの強さにプレイヤーは畏怖を抱き、むしろ尊敬を集めるほどの強敵だった。
俺たちが睨み合いを続ける中、シュンッ! シュンッ! と魔道具からAランクモンスターが数体現れた。
なるほど、時間が経てば経つほど不利になるというわけか。
「シエルは召喚されるモンスターを倒してくれ! 俺はあいつを倒す!」
「わかったわ、任せて!」
シエルはAランクモンスターに、俺は鬼武人に走る。
「《暗黒剣》!」
解放度★9の剣を生み出す。
いつもの《闇の剣》より何段階もどす黒い、西洋風の両手剣だ。
今までの戦いでだいぶ魔力を消耗してしまった。
短期決着をつけるつもりで鬼武人に挑む。
あと3mほどまで近寄った瞬間、動かなかった鬼武人が突然剣を振り上げた。
猛烈なスピードで〈獅子蜻蛉〉が襲い掛かる。
すかさず、《暗黒剣》で迎え撃った。
腕全体をハンマーで殴られたような衝撃が襲う。
鬼武人は妖刀を振り上げ、猛烈な勢いで振り下ろす。
――は、速いっ……!。
上段、下段、中段、右、左……。
三次元な剣術は、間合いのどこにも隙が無い。
だが、どんな強敵にも必ず弱点がある。
そう、あの暗黒炎龍と同じように。
前世でこのゲームをやりこみまくった俺は、もちろん鬼武人の弱点も知っていた。
こいつの弱点は……首元だ!
現実の甲冑と同じく関節には鎧の隙間がある。
そこを狙えば致命傷を与えられる。
だが猛烈な剣撃を凌ぐうちに、《暗黒剣》の辺縁が少しずつ薄くなってきた。
もう時間が無い。
“試練の島”でソフィーと戦った経験を思い出せ。
どんな敵も一撃で仕留めるという彼女の気概を……。
「<漆黒の一撃>!」
地面を蹴り上げると同時に、力の限り《暗黒剣》を突き出した。
防御が手薄になり、<獅子蜻蛉>の猛撃が全身を襲う。
激しい痛みを感じ鮮血が宙に舞う。
構うものか。
今の俺の使命はこいつを倒すことなんだ。
《暗黒剣》は鬼武人の首元を貫く。
鬼武人の甲冑から血のような赤い魔力が噴き出すと、役目を終えたかのようにガランと崩れ落ちた。
やっぱり強かったな……。
魔法を解除したところで、ちょうどシエルが俺の元へ駆け寄った。
彼女の戦いも終わったようだ。
「やったわね、ディアボロ。さすがよ……って、怪我が!」
「なに、これくらいは問題ないさ。それより、さっさと魔道具を壊そう」
シエルと一緒に魔道具へ手をかざす。
同時に、スタンピードを終わらせる魔法を唱えた。
「《闇の大射撃》」
「《超重力圧殺》」
魔道具は結界ごと壊され、木っ端微塵に吹っ飛んだ。
学園に攻め入るモンスターは動きを止め、その全身は少しずつ塵となって消えていく。
人為的な召喚のため、魔道具が壊されれば一緒に倒されてしまうのだろう。
ふと、上空からおーい! という声が聞こえた。
空を見ると、クルーガー先生が箒で飛んでいる。
“魔族教会”のメンバーはみんな捕まったとのことだった。
「全部終わったのね……」
「ああ、そうだな……」
隣にいるシエルと微笑み合う。
フェイクルという女の謎は残ったままだが、“魔族教会”の襲撃から無事に学園を、そしてみんなを守ることができた。
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