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第90話:原作主人公とあのときの女

「久しぶり、ディアボロ。元気か? その顔を見る限り、相変わらず平凡な毎日を送っていそうだな」


 ゆらり……と、フォルトが一歩前に進み出る。

 ドーイラルで出会ったときより、さらに悪の雰囲気が強くなっている。

 目つきはきつく、表情は怖く、ゲームのキャラデザとはかけ離れていた。

 俺は警戒を緩めないまま問う。


「フォルト……この襲撃はお前が計画したことなのか?」

「僕は計画なんてしないよ。誰よりも価値がある”導き手”だからね」


 得意げな表情でフォルトは語る。

 もう、原作主人公の面影はどこにもない。

 終ぞ改心することなく、悪の道に飲み込まれてしまった。

 ここまできたら、無理矢理にでも止めるしかない。

 シエルたちもわかっているようで、魔力を練り上げるのが伝わる。

 フォルトも感じ取ったのか、その目に黒い焔が渦巻く。


「ディアボロ、お前の命はここまでだ! 消えてなくなれ! 《聖なる剣》!」


 フォルトの右手に白く輝く光の剣が創造される。

 裏で修行を積んでいるらしく、攻撃魔法の練度も上がっていた。


「落ち着け、フォルト。四対二だ。勝ち目はない」

「ククク……どうかな?」


 フォルトが不気味に笑ったと同時に、空から三体の魔族が舞い降りた。

 まだまだ戦力は豊富というわけか。

 傍らのシエルたちが言う。


「ディアボロ、魔族は私たちが倒すわ。フォルトをお願い」

「わかった、頼む。……行くぞ!」


 俺たちは一斉に駆け出す。

 魔族は宙に飛び、シエル、マロン、クララ姫に襲いかかった。

 俺は脇目も振らず、一直線にフォルトに向かう。

 シエルたち三人は大丈夫だ。

 彼女らは強い。

 問題はフェイクルという女だが、攻撃する意志は示さず一歩下がった。

 注意は怠らないとして、まずはフォルトだ。

《闇の瞳》を併用し、フォルトの全身を注意深く見る。

 魔族のような魔力の層は見えなかった。

 続いて《闇の剣》を創造し、勢いよく振りかぶる。

 フォルトの剣とぶつかり、火花が散った。

 以前より力も強くなっており、一時的に鍔迫り合いの状況となる。

 剣の向こう側に、フォルトの不気味な笑みが垣間見えた。


「ディアボロ、僕様はお前を倒すためずっと修行してきたんだ。今日、その目的が達成できると思うと嬉しくてしょうがないね」

「いい加減目を覚ませ。お前の力はこんなことのために使うようなものじゃない」

「僕様に指図するな!」


 フォルトはより一層力を強める。

 たしかに、学園にいた頃とは別人のように強くなった。

 だが、修行なら俺だって積んでいるんだ。

 力を込め、光の剣を薙ぎ払う。

 金属同士がぶつかる重い音が響き、フォルトは後ろに退いた。

 光の剣は所々欠けている。

 彼より俺の方が、魔力の質が高いためだ。

 フォルトは光の剣を解除すると、憎らしげに俺を睨んだ。


「いい気になるなよ、ディアボロ。僕の力はこの程度ではない。《聖波動の嵐》!」


 無数の光の弾が俺に向かって襲い来る。

 直線的ではなく、一発一発がカーブを描いて飛んできた。

《闇の瞳》を維持しながら、立ち止まったまま全てを剣で切り裂く。

 下手に動かず一点に留まった方が、体力と魔力の消耗を防げるからな。

 フェイクルは手を出さず、ジッと俺とフォルトの戦いを見守っている。

 フォルト以上に、彼女の方が不気味だった。

 いったい……何を考えているんだ。

 聖弾の嵐を全て斬り捨てると、突然フェイクルがフォルトを止めた。


「フォルトさん、もう十分です。よくやってくれましたね」

「……フェイクル先生? 止めないでください! 僕はまだやれます!」

「あなたの力を疑っているわけではありませんよ。フォルトさんが直接手を下すまでもないのですから」


 なぜ戦いを止めたんだ。

 敵の思惑がわからない。

 フェイクルは俺の方を向くと、不敵な笑みを浮かべて言った。


「ディアボロ、教員たちがいつまでも加勢に来ないのはなぜだろうな?」


 その言葉を聞き、最悪の事態が脳裏をよぎる。

 

「何をした、フェイクル!」

「別に何もしていない。この学園に攻め込むのは私たちだけではない……というだけの話だ。お前なら地面の震えを感じ取れると思うが?」


 すかさず地面に手を当てた。

 戦っている最中は気づかなかったが、微かに大地が揺れている。

 まるで大量の生き物が移動しているかのような……。


「さようなら、ディアボロ。願わくばこの場で死んでほしいものだな。《転送装置の陣・簡易式》」

「ま、待てっ!」

 

 フェイクルが地面に手をかざすと、近未来的な円筒形の物体が二本現れた。

 中心は青白く光り、上下は金属の板で蓋をされたような物体が……。

 即座に、物体から小さな稲光が轟き、フェイクルとフォルトを覆う。

 猛スピードで空高く飛び去ってしまった。

 すぐにでも追いかけたかったができない。

 シエルたちも魔族を倒したようで俺と合流する。

 彼女らは切羽詰まった表情で、学園の南側に広がる草原を指した。


「ディアボロ、大変よ! あれを見て!」

「ああ、これはまずい状況だ……」


 草原には、見たことないほど大量の土埃が舞う。

 遠目からでも何が起きているのかわかった。

 モンスターの……大スタンピードが学園に迫る。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


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