第9話:才能(Side:アルコル①)
グランデに言われ、ワシはキングストン家にやってきた。
息子に魔法の訓練をつけてほしいと。
数十年ぶりに連絡をよこしてきたかと思ったら、何を言い出すことか。
――ディアボロ・キングストン。
ワシですらその悪逆非道ぶりは知っておる。
他人を見下し、いじめ、暴力を振るい、自分が誰よりも立場が上の人間だと思い込んでいる……。
ヒャーイヒャイヒャイ。
そんなウワサを耳にするたび、ワシは楽しくて仕方なかったの。
イキッたクソガキほど、いじめがいがあるものじゃ。
ワシが直々にその自信をへし折ってやるからの、覚悟しておけ。
そうして、ワシはキングストン家にやってきた。
ディアボロは、見ての通りクソガキじゃった。
まさしく、世の中を舐め腐った顔、生意気そうな目……。
ワシはこういう人間の死に顔が見たいんじゃよ。
魔法の師匠なんぞ気だるいだけじゃが、楽しみができた。
修行にかこつけてくすぐり殺してやる~。
お前の人生もここまでじゃ~。
そう思っておった。
修行を始める前までは。
ディアボロは完全に常軌を逸していたのじゃ。
あそこまで才気あふれる人間を、ワシは見たことがない。
そもそも、魔力ボールの生成でさえ、おいそれとできるものではないじゃろうに。
“超成長の洞窟”という特殊な条件を鑑みても、この成長具合はおかしい。
修行を初めて一週間で四つ、て。
ワシと同じかそれ以上の成果なんじゃが。
何より、あやつが修行を楽しんでいるのが信じられん。
修行なんて、辛くてイヤなものじゃろうが。
それなのに、ディアボロは楽しそうに修行をする。
あやつは普通ではない。
嫉妬で必要以上にきつく当たってしまったわ。
そして、とうとうあやつはやりおった。
闇属性で、回復魔法を習得したのじゃ。
このワシですら不可能だったことを、ディアボロは成し遂げた。
これは……すごいことじゃ。
さすがのワシも驚いたわ。
ディアボロの傷は一瞬で消えたし、マロンとかいうメイドの様子を見ても、体力が全回復したとわかる。
あやつは常識を変えおった。
おじんの昇天顔はキモかったがの。
仮にも弟子が成果を上げ嬉しい反面、ワシの胸には小さな寂しさがあった。
――どうして、あそこまで修行しなかったのかと。
“死導きの魔女”と呼ばれ、良い気になって……いつの間にか、鍛錬することを忘れてしまった。
これが己の限界だと感じていたのは、勝手に感じていただけ。
むしろ、ワシこそがゼロから修行しなければならん。
あのクソガキに気づかされたのじゃ。
腹立たしいが、感謝しなければならないの。
闇属性に回復魔法は使えない。
世界では言われている。
そして、世界で信じられていることは正しい。
魔法使いとして成熟したくせに、すっかり信じ込んでいた。
常識を疑うのが魔法使いじゃろうが。
――間違っていたのはワシらだったんじゃな……。
師匠としての役割を果たした感が出ているが、ワシはあやつの今後をこの先も見たい。
できれば間近で。
ワシから頼むのは悔しいな、と思っていたら、一つ面白い話を聞いた。
グランデによると、ディアボロは来年の“エイレーネ聖騎士学園”入学を目指しているらしい。
クソガキのくせに生意気なヤツじゃな。
じゃが、その話を聞いたとき、いいことを思いついたのじゃ。
――……ワシも学校行っちゃおうかな。
思い返せば、一度も学校なんぞに通ったことはなかった。
これは良い機会じゃな。
ワシにかかれば、学園の試験なんぞちょちょいのちょいじゃ。
遅咲きの青春……有望な弟子の成長……。
人生もそろそろ終盤かと思っていたが、なんだか楽しみになってきたのぉ。
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