第89話:半魔族
「まさか、学園に直接攻め込んでくるなんて……俺たちも戦うぞ!」
「ええ(はい)!」
俺たち四人も即座に戦闘態勢をとり、魔族の軍勢を待ち構える。
先生たちからも、いつか”魔族教会”は襲撃してくる可能性があると日頃から聞いていた。 日々の注意喚起のおかげもあってか、生徒たちの中にはすぐにパニックから落ち着く者も多い。
『『ゴァァァアッ!』』
魔族たちは口からは火球を放ったり、両手からは雷を出したりして、校舎や地面を破壊する。
どれもモンスターでいうとAランク相当の強力な攻撃だ。
おまけに、視界に入っているだけで何十体もいる。
<深淵の聖水>を奪いにきたのだろうか。
何はともあれ、今は目の前の敵を倒すべきだ。
傍らのシエルたちに呼びかける。
「みんな、敵は何体いるかわからない! 一丸となって戦うんだ!」
「「了解!」」
学園の先生たちもすでに襲撃に気づいているはずだが、もちろん対処を任せっきりにするわけにはいかない。
俺たちだって、学園の生徒なんだ。
さっそく、目の前に四体の魔族が降り立つ。
どれも身体は軽く3mを超える巨体の持ち主だ。
全身の筋肉は盛り上がり、それでいて無駄を感じさせない肉体だ。
話し合う間もなく、俺たちは目の前の魔族に向かう。
「《闇の瞳》《闇の双剣》!」
俺は魔力で二本の剣を創造する。
双剣を扱うのは難しいが、その分攻撃力が上がる。
今後のためにも、魔法だけでなく体術のレパートリーも増やしておきたい。
視界の隅ではシエルたちの戦いも見えるが、今は目の前の敵に集中だ。
魔族は翼をはためかせジャンプすると、勢いよく右ストレートをかましてきた。
直線的だがかなりのスピードだ。
右に飛んで躱し、がら空きの胴体に剣を振り下ろす。
ガギンッ! と硬い音が響き、跳ね返された。
おそらく、この硬さは体表の堅牢さによるものではない。
それならば……。
「《闇の瞳》」
目に意識を集中すると、魔族の身体を覆う魔力のオーラが見えた。
鎧のように全身を隈なくまとう。
魔力の層はどこも高密度で、おまけに均等でほころびがない。
かなり高度な魔法を使っていた。
分析している間も魔族は連続で攻撃を仕掛ける。
躱すたび、どんどん体力と魔力が消費されるのを感じた。
激しく動く戦闘中での併用は、やはり消費量が多いな。
「みんな、こいつらは魔力のオーラで守られている! どこか一点を集中して攻撃するんだ!」
「「わかった(わかりました)!」」
シエルたちに呼びかけ、俺も剣を振るう。
狙うは心臓の一点だ。
剣を弾かれるたび、少しずつ傷が刻まれる。
わずかな傷を狙い続けて剣撃を重ね、魔力の層を剥がしていく。
戦いながら前世でこのゲームをプレイした記憶を思い出す。
魔族はみな、頭から生えた角と背中から生えた翼、そして濃い紫の身体が共通の特徴だった。
旧世代も新世代も両方そうだ。
こいつらもまったく同じ姿だから、魔族と考えて間違いない。
だが……どことなく人間の気配を感じるのはなぜだ。
魔族と戦うのは初めてなものの、表情や目つきからなんとなく感じる。
これは……一度確認してみた方がよさそうだ。
「<魔斬撃>!」
『グァァッ!』
両方の双剣を水平に構え、剣先で心臓を突く。
魔力の層はまだ分厚く残っていたが、切っ先はわずかに身体へ届いた。
ちょうど計算通りだ。
刃を少し食い込ませ、血の色を確認したい。
原作ゲームだと、魔族の血は青だ。
目の前の魔族の顔には苦しげな表情が浮かび、胸からは血が垂れる。
そう……俺たちと同じ赤いが……。
「みんな、この魔族たちは血が赤い! 人間の可能性があるぞ!」
「「……! 人間の可能性!?」」
「だから、殺すのは避けた方がいい!」
原理や原因はわからないが、ただの魔族じゃないことは確かだ。
もし人間ならば、殺してしまうのはまずい。
「《闇の拳》!」
《闇の双剣》を解除し、右拳に魔力を集めた。
俺の拳は一回り大きくなり、
心臓を狙い、一撃で気絶させる。
魔力の層に空いた穴に目がけて、渾身の右ストレートを喰らわす。
『……グァァッ!』
魔族は勢いよく吹っ飛び、校舎の壁に激突した。
ぐったりと崩れ落ち、動くことはなかった。
ちょうどシエルたちの戦闘も終わったようで、みな俺の周りに集まった。
「みんな、大丈夫か?」
「ええ、私たちは平気よ。魔族もあの通り」
彼女たちが戦っていた魔族は、地面にのめり込んでいたり煤だらけで気絶していたり、身体中に蔦がまとわりついたりして、完全に気絶状態だった。
「早く他の人たちを助けにいこう」
「そうね」
校舎に向かって足を踏み出したとき、目の前の地面にいくつもの魔力弾が飛んできた。
俺たちは急いで後ろに飛び退いて避ける。
魔力弾が当たった地面は、じわじわと溶け始めた。
この攻撃は……以前にも見たことがある。
そう思ったとき、マロンとクララ姫が空を指して叫んだ。
「ディアボロ様、見てください!」
「空に何かいます!」
上空から、二人の男女がゆっくりと舞い降りる。
闇オークションで遭遇した謎の女フェイクル、そして……このゲームの主人公であるフォルトが姿を現した。
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