第87話:厳しいポージング
「ほら、ディアボロ。動かないで。何度も言っているでしょう」
「ディアボロ様、恐れながら申し上げます。微動だにしないようお願いいたします」
「どうしても動いてしまうのなら、私の蔦で縛らなきゃいけなくなりますね」
「す、すみません……頑張ります」
姿勢の辛さに耐え兼ねわずかに動いただけで、シエル、マロン、そしてクララ姫の厳しいお言葉が飛んでくる。
ここは学園寮にある俺(+シエル+マロン)の部屋。
"文化体術総合競技会”の話があってから、俺はずっと様々なポージングをとらされていた。
剣を構えたポーズ、仁王立ちのポーズ、魔法を発動しているポーズ……。
もう何通りのポージングを指示されたのかわからない。
ずっと同じ態勢で止まるのは大変でへとへとに息を切らしていると、シエルがさらなる要求を告げた。
「ディアボロ、次は空を飛んでる格好をして」
「あ、あの、具体的にはどういうポーズを……」
「パタパタパタッ! ぴゅーんっ、どどうっ! って、感じよ」
「わかりました……」
感覚派筆頭であるシエルのお眼鏡に叶うようなポーズを懸命に考える。
"文化体術総合競技会”に向けて、すでにグループ分けは済んでいた。
俺はシエル、マロン、クララ姫の四人と組む。
それは良い。
良いどころか大変に素晴らしいメンバーだ。
……だがしかし、問題は文化祭当日に提出するというシンボルにあった。
俺以外の三人が決めたのは……なんと俺の彫像だったのだ。
まずはデッサンを書いてから像の製作にうつるとのこと。
もちろん拒否したものの、多数決によって決まってしまった。
これぞ民主主義。
「ディアボロ様、早くポーズを取ってください」
「他のグループに遅れをとっては大変ですわ」
「あ、はい、すみません……」
儚い過去に思いを寄せる間もなく、今度はマロンとクララ姫に叱責される。
大慌てで手を広げ、空を飛ぶポージングを取る。
チラリとシエルを見ると、猛スピードで羽ペンを動かしキャンパスに何かを書いていた。
どうやら、お眼鏡にかなったらしくてホッとする。
正直に言って、"超成長の洞窟”での修行に匹敵する辛さと厳しさだ。
まさか、自室でこんな辛い目に遭うとは思わなかった。
とっさに思いついたポーズは予想以上に辛く、ぷるぷると身体を震わせていたら、ガチャリと扉が開かれた。
紫髪のロリ魔法使い様が姿を現す。
「「コルアルさん、こんにちは」」
「おっ、相変わらずやっておるの。ヒャーイヒャイヒャイ、いい気味じゃ! クソガキのみっともない姿はアイスの最高の肴じゃよ」
俺の痴態を見て、コルアル……もといアルコル師匠は上機嫌で大笑いする。
アイスを食べながら俺をせせら笑うのが、最近のマイブームらしい。
こんなにわかりやすいヒントが多発しているのに、集中のためかシエルたちの誰も正体に気づかない。
いや、平時でも気づかないか。
願わくば、早くポージングが決定してほしいところだ。
足が吊りそうになりながら諸々のポーズを取るうちに、少しずつ日は暮れていった。
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