第84話:噂の一人歩き
石版の解読からさらに一週間ほどが過ぎた。
教室に向かう校内を歩いていると、俺を見た生徒たちが小声で何やら話し始める。
「おい……あの噂聞いたか? 俺、もう驚きでここのところ眠れてねえよ」
「もちろん聞いたさ。ディアボロと五大聖騎士の関係……」
「入学したときから目立ってましたが、やはりきちんとした理由があったのですね」
石版の内容が学内にも知らされた結果、ディアボロは五大聖騎士の末裔である……という噂が広まってしまった。
間違いだと話すものの、みんな簡単に信じてはくれなかった。
歩きながら、シエルとマロンは誇らしげに話す。
たとえ誤解でも、婚約者や仕える主が五大聖騎士の末裔……というのは、大変に嬉しいのだろう。
「私の見る目は正しかったというわけね。婚約者が五大聖騎士の末裔なんて、私も誇らしいわ」
「シエル様のおっしゃる通りでございます。まさしく、ディアボロ様は唯一無二のお方ですね」
「いやいや、俺はそんな人間じゃないって。キングストン家にだって、五大聖騎士の伝承とかは伝わってないんだから」
「ディアボロが知らないだけかもしれないわ」
否定するが、二人は俺が五大聖騎士の末裔だと、すっかり信じてしまっていた。
もし本当なら父上からも話がありそうなものだが……。
教室の手前まで来たところで、正面から丸眼鏡をかけた先生が歩いてきた。
ピョコピョコと飛び跳ねた寝癖を揺らしながら……。
「おはよう……ございます……みなさん……」
「「おはようございます、サチリー先生」」
石版の解読でお世話になったサチリー先生だ。
いつも眠そうな顔をされているが、実のところとても頭が良いのだ。
挨拶を交わした後、サチリー先生は俺に向かって淡々と言った。
「あの……ディアボロ君。一つお願いがあるのですが……」
「は、はい、何でしょうか」
石版の解読の日以来、サチリー先生とも接触する機会が増えてしまった。
悪い人ではないのだが、話すと全てを見透かされている気分になって緊張するんだよな。
「私はあなたに……強い興味が生まれました。……詳しく調べるため……あなたの身体を…………バラしてもいいですか?」
「逆に聞きますけど、なんでいいと思ったんですか!?」
サチリー先生は悪意があるわけじゃない。
でも、それが逆に怖いんだよな。
目もやけに据わっているし。
ボロが出る前に、そそくさと話を切り上げ教室に入る。
自分の席に行くや否や、今度は二人組の男女が俺の近くに来た。
「バッドにデイジーか。おはよう」
「よお、ディアボロ。お前、五大聖騎士の末裔だったんだってな。道理で強いわけだぜ。まさしく、俺のライバルにふさわしい男だ」
「おはよう、ディアボロ君。噂を聞いてビックリしたけど、ディアボロ君なら何もおかしくないってすぐ思ったよ」
二人とも嬉しそうに話す。
真実がどうであれ、素直に嬉しかった。
しばしみんなで楽しく話すと、アプリカード先生が教室に入った。
「皆さん、おはようございます。さあ、席に着いてください。学園の中はディアボロさんの噂で持ちきりですが、授業には関係ありませんからね。気持ちを切り替えてください。まずは各自課題の発表から……」
朝の連絡事項もそこそこに、さっそく授業が始まる。
教科書を開きながら決めた。
家系図を確認するため、次の休みには一度キングストン家に帰ろう。
久しぶりに父上やラウームたちの顔も見たいしな。
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