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第83話:石板の解読

「おい、ディアボロ。先生たちから聞いたぜ。闇オークションを闇の組織から守ったそうじゃねえか。まぁ、変な言い方だが」


 今日一日の授業が終わり、帰り支度をしていたらバッドが俺の前に来て言った。

 そのまま、シエルとマロンを交えて闇オークションでの話が盛り上がる。

 ドーイラルでの襲撃事件から、およそ一週間が過ぎた。

 闇オークションに出品された貴重な品々は、ほとんどが略奪されたものの、死人は出なかった。

 おおかた、囚人たちは金目の物しか興味がなかったのだろう。

 <深淵の聖水>は学園に保管されることになったので、ひとまずは安心だ。

 分析、研究を行った後、王国の宝物庫に移送されるとも。

 しばらく話した後、シエルとマロンが教室の時計を見ながら言った。


「ねえ、ディアボロ。そろそろ時間よ。サチリー先生たちのところに行かないと」

「遅刻しては失礼ですね。せっかく貴重な機会をいただきましたのですから」

「ああ、そうだな。行こう。……バッド、悪い、続きはまた今度で頼むよ」


 名残惜しいところもあるが話を切り上げ、俺とシエル、マロンは教室を出る。

 向かうは地下二階にある資料庫だ。

 古代遺跡グリンピア、そしてドーイラルでの活躍が評価され、なんと特別に石版の解読を見学させてくれることになったのだ。

 原作ゲームでもなかった特別なイベント。

 実際の考古学に触れる気分だ。

 もちろん石版に記された内容も気になるが、単純に楽しみだった。


 三人で歩くこと十分ほど。

 学園の資料庫に着いた。

 みんなで扉をノックする。


「「失礼しまーす」」

「どうぞ」


 聞き慣れた担任の先生の声が聞こえ、扉が自然に開かれた。

 30m四方くらいの広い空間が広がり、サチリー先生とアプリカード先生だけがいる。

 基本的に、解読はこの二人の先生が担うとのことだった。

 部屋の両脇には、首のない鎧や錆びた長剣、不気味な絵の描かれた本など、見慣れぬアイテムがたくさん並べられている。

 そして、あの石版は部屋の一番奥で宙に浮いている。

 俺たちが歩を進めると、サチリー先生が握手してくれた。


「こんにちは……皆さん……。2年生の魔法学担当……サチリーです。石版の解読は……私が主に担っております……」

「「よろしくお願いします」」


 俺たちは学園会議でサチリー先生と何度か会ったことはあるが、会議で見るよりシャキッとした印象だった。

 自分の専門分野や興味の惹かれる対象については、普段より何倍も頭の回転が速くなる……というゲームの設定を思い出す。

 挨拶が済むと、サチリー先生が丸眼鏡をかけ直しながら言った。


「さあ……どうぞ石版の近くに来てください……。お手を触れなければ……大丈夫ですので……」

「「あ、ありがとうございます」」


 ドキドキと緊張しながら石版に近寄る。

 土埃や汚れが除去されているからか、古代遺跡グリンピアで見つけたときより一段と鮮明に表面の絵や文字の刻印が見えた。

 俺もシエルもマロンも、見事な彫刻に言葉を失う。

 中央には五大聖騎士それぞれの姿が刻まれ、右上には太陽、左下には満月が刻まれる。

 顔の表情や衣服の皺まで細かく再現されており、まるで本人がこの場にいるかのようだ。

 実際に作られてからもう何百年も経っているだろうが、刻印は鮮明に読める。

 人類の発展の礎を見ているかのような気持ちで圧倒されてしまう。


「魔導具で浮遊させていますので……後ろも見ることができますよ……」


 サチリー先生がくるりと手の平を回転させると、石版も一緒に回った。

 裏面には古代文字で書かれた文章が、カレンダーのように十二カ所に分かれて刻まれている。

 ゲームでは日本語の翻訳が表示されたが、もちろんこの世界ではそうはならない。

 古代文字については学園の授業でも勉強する機会はあったが、まだまだ基礎的な単語しかわからない。

 サチリー先生に聞いてみる。


「サチリー先生は全部読めるんですか?」

「ここの一節の……解読が難航……しています……。文章自体は読めるものの……内容の把握が難しいのです……」


 そう言って、ちょうど十月辺りに相当する場所の一節を指した。

 俺に古代文字の全文は読めないものの、サチリー先生が諳んじてくれた。


〔汝らの平和を願う心が、魔を討ち払う聖なる光が再び煌めかせる〕


 どこかで聞き覚えがあるような……そうだ、原作ゲームで見た内容じゃないか。

 サチリー先生たちは悩んでいるようなので教えてあげる。


「その文章は五大聖騎士の末裔について説明しているんですよ。俺たちの平和を願う心が、魔王を完全に倒す人物を生み出した……という意味です」


 俺が言うと、二人の先生は一瞬固まった。

 サチリー先生が興味深そうに丸眼鏡をかけ直す。


「……ディアボロ君は……ずいぶんと詳しいですね。まるで、すでに内容を知っているかのような……」

「あ、いやっ! 家の図書室で読んだ本に書いてあったというか、何というか……!」


 ま、まずい。

 あまり話しすぎると転生者だってことがバレてしまう。

 ほどほどにしておかなければ……。

 特にサチリー先生の興味を必要以上に惹いてしまったら、断罪とは別の意味で俺の命が危なくなる気がする。

 正体がバレる危険はあったものの、俺の発言がきっかけとなったのか、サチリー先生とアプリカード先生は活発に討論を始める。

 しばし話し合った後、サチリー先生が俺たちに言った。


「ディアボロ君……ありがとうございます。あなたのおかげで……五大聖騎士の末裔の……情報が……明らかとなりました……」

「そうですか。それならよかったです」

「せっかくなので……この場で皆さんに……お教えします……」

 

 原作の場面を思い出すなぁ。

 五大聖騎士の末裔なんて選ばれし者だとわかったプレイヤーは、みなネット上でも盛り上がったっけ。

 単純にゲームの展開を思い出すだけ……そのはずだった。


〔黄金の髪に碧眼の瞳を持ち、己の内なる闇に克する者……汝が我らのなり〕


 サチリー先生に教えてもらった後、ふと疑問が湧いた。

 ……あれ?


 ――内容が違う。


 原作ゲームでは、もっと明確にフォルトについての記載があったはずだ。

 記憶をたどってみても、やはり石版の内容はゲームと違った。

 思案を巡らせていたら、今度はアプリカード先生が呟くように言う。

 

「これは……もしかして、ディアボロさんを示しているのではないですか?」


 俺が五大聖騎士ヘルトの末裔……?

 そんなはずはない。

 このゲームにそんな裏設定はなかったはずだ。

 アプリカード先生の話を聞くと、途端にシエルとマロンは嬉しそうに話した。


「やっぱり、ディアボロは選ばれし男だったのよ。私は一目見たときからわかっていたけどね」

「シエル様のおっしゃる通りでございます。まさか、五大聖騎士の末裔だったなんて……」

「ど、どうだろうね。ただの間違いだと思うけど……」


 二人とも、すっかりその気になってしまった。

 彼女たちはテンション高く話すが、やはり間違い……だと思う。

 キングストン家と五大聖騎士の繋がりは、原作でも言及されなかったし、そもそもそんな設定自体ない。

 確信は持っているものの、とても気になる。


 ――念のため、今度実家に帰ったとき、家系図でも調べてみるか……。


 浮き足立つみんなの中で、俺は心の中で静かに決心した。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


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