表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/96

第78話:当方の眼(Side:モニカ①)

 ディアボロ・キングストンという名は、当方にとって最も忌むべき名であった。

 当方が視力を失い、常にゴーグルを装着する一因となった男だ。

 徐々に視界の隅が暗くなり光りが消失する……あのときの光景は今でも鮮明に覚えている。 キングストン家とラブロック家の間には溝が生まれたが、多額の慰謝料を支払うことで決着がついた。

 当方の両親は納得できなかったようだが、キングストン家は国内有数の大貴族。

 それ以上追及することは不可能だった。


 其の方が"エイレーネ聖騎士学園”に入学したと聞いたとき、当方は関わらないことを決意した。

 今さら謝罪など要らない。

 ゴーグルでの生活は慣れたし、当方は一生このままなのだと覚悟していた。


 関わらないことを決意したが、其の方と接触する日が訪れた。

 古代遺跡グリンピアの調査。

 奇妙にも、国内最高峰の難易度を誇る遺跡の攻略で、其の方とおよそ十年ぶりに相対することになった。


 調査の当日、アプリカード氏から其の方は改心した旨を伝えられた。

 暴虐ぶりは鳴りを潜め、懸命な努力家になったと……。

 アプリカード氏が騙されているのだろう、としか考えられなかった。

 グリンピアに足を踏み入れた後も、ついぞ変わることはなかった。

 其の方に救われるまでは。

 

 第七層まで到達したとき、当方はシャドーによる操作魔法の手に落ちた。

 有無を言わさない強力な魔法だった。

 当方に解除することはできず、このまま傀儡となり朽ち果てる運命かと思った。

 だが、救い主が現れた。

 そう……其の方だ。

 なるべく当方を傷つけないよう立ち回り、シャドーを破壊。

 操作されぼんやりとした頭でも、其の方の戦いぶりは認識できた。

 圧倒的な実力だと。


 シャドーの破壊が完了すると、其の方は当方の元へ近寄った。

 当方の傷と眼を治させてほしいと言う。

 闇属性で回復魔法を習得したとも。


 ――何を言っているのだ……。 


 それが素直な感想だった。

 当方は断る。

 とうてい信じられなかった。

 だが、其の方が続けて言った言葉に、当方は胸を打たれた。 


「ゴーグル越しではなく、あなたの目にたくさんの素晴らしい光景を見せてあげたいのです。今まで見られなかった分を取り返すくらい……」


 その言葉を聞いたとき、当方の硬く固まった心が解きほぐされるのを感じた。

 全て任せることを覚悟し、其の方に身を委ねた。


 ――もう二度とこの目で世界を認識できることはない。

 

 頭では理解していても、心では諦めきれなかったのだ。

 そして、其の方は癒やしてくれた。

 当方の身体と眼を……。

 ゴーグル越しではなく、直接見える世界。

 感動とともに目に飛び込んできた其の方は、文字通り輝いて見えた。

 今日この瞬間を、当方は忘れることがないだろう。


 幼少期を思い返すと、其の方が当方を森に連れ出したのは……当方のためだった。

 病気がなかなか治癒せず、室内に籠もりっぱなしの当方に、外の景色を見せたいと……。

 当方もまた寝てなくてはならないのに、其の方の申し出を受けてしまった。


 ――あの時、其の方が医術師を呼んでくれたから、当方は視力を失う程度で済んだのだ。

 

 対応が遅れはしたが、最悪の結果は免れた。

 生存さえしていれば、どんな困難にも打ち勝てる日が来る。

 其の方との出会いでそう学んだ。

 両親にも当方から話をしておこう。


 それと、ゴーグルはこれからも装着するつもりだ。

 其の方に心理的な負担を与え続けてやる。

 決して、当方を忘れないように。


 其の方との間には深い軋轢があった。

 だが、今の当方の胸には確かな想いがある。


 ――ディアボロ氏……ありがとう。其の方のおかげで、当方はこの目でもう一度世界を見ることができる。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!

評価は下にある【☆☆☆☆☆】をタップorクリックするだけでできます。

★は最大で5つまで、10ポイントまで応援いただけます!

ブックマークもポチッと押せば超簡単にできます。


どうぞ応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ