第72話:第七層
「いやぁ、結構下まで来たんじゃねえの?」
「今は第七層だな。最深部までもう少しだ」
「この遺跡、入り組みすぎなんじゃよ。もっと歩きやすくしとけって話じゃ。アイスもないし」
その後俺たちは順調に進み、現在第七層までたどり着いた。
この階層まで来ると、さすがに"魔脱”の影響も強く、疲労感が強くなった。
バッドとアルコル師匠も顔に疲れが滲む。
なるべく戦闘を避けて最深部まで行きたいところだが、なかなかそう簡単にはいかないだろう。
グリンピアは下層に行くほどモンスターの密度が濃くなるのだ。
そんなことを考えていたら、通路の奥にキラリと二つの点が輝いた。
『シャァァ……』
暗闇から長い身体を持つモンスターが現れる。
思った通り、さっそく出てきやがった。
こいつはBランクモンスター、機甲サーペント。
全身を特殊な金属<レプロ晶石>の装甲で覆われた巨大な蛇型モンスターだ。
<レプロ晶石>は魔法攻撃を跳ね返す性質を持つ。
威力は半分ほどに減弱するが、それでも厄介なことに違いはない。
腹にも細かいトゲが生えており、まきつきながら敵を切り裂く。
装甲をパージして、身軽になることもできる。
見たところ、全長は最低でも4mくらいありそうだな。
機甲サーペントを倒す定石は、一対一のバトル。
魔法攻撃の反射を極力抑えるためだ。
鎧の隙間を縫うように物理的なダメージを与えなければならない。
バッドとアルコル師匠は疲労が滲んでいるし、ここは俺が戦おう。
「二人とも、こいつは俺が倒すよ」
「頼むぜ、ディアボロ。頑張れ」
「そうじゃそうじゃ、少しは働け」
バッドの声援とアルコル師匠の小言を背に、前へ向かって歩く。
機甲サーペントは舌をチロチロ出して俺を睨む。
"魔脱”の影響もあるし、早期決着を狙いたいところだ。
最初はゆっくりと歩いていたが、闇の剣を生成し、徐々に助走を強める。
機甲サーペントもまた、俺を敵だと認識したらしい。
口を大きく開き、勢いよく噛みついてくる。
すかさず、あの魔法を発動させた。
「《闇幻影の演舞》」
『ガァッ!?』
俺の身体から、何体もの分身が出現する。
これは《闇迷彩》を応用した魔法だ。
分身に実体はなく、単なる幻影に過ぎない。
だが、敵の目をくらますことはできる。
思った通り、機甲サーペントの噛みつきは分身の一体を空振りした。
身体が伸びているので、装甲の隙間がより大きくなる。
生身めがけて闇の剣を振り下ろした。
肉を断ち骨を断ち切る。
機甲サーペントは断末魔の叫びを上げた後、ぐったりと地面に崩れ落ちた、
背中からは、バッドとアルコル師匠の声が聞こえる。
「よくやったぞ、ディアボロ。それでこそ俺のライバルだ」
「クソガキにしてはまぁまぁじゃ。褒めるには値しないがの」
何はともあれ、無傷で倒すことができてよかった。
体力も魔力もなるべく節約したいからな。
機甲サーペントの亡骸を横に、俺たちは奥へと進む。
しばらく歩くと、三つの空洞が現れた。
今度はバッドの意見を尊重するということで、真ん中の空洞に足を踏み入れる。
しかし、入るや否やバシッと弾き飛ばされてしまった。
みんなで疑問に思っていると、目の前の空中に古代文字の一節が浮かぶ。
〔一つの旅路に進めるのは、唯一の汝なり〕
この通路は一人しか通れない魔法がかけられているのか。
どうやら、三人で行動できるのもここまでのようだ。
バッドとアルコル師匠にも伝える。
「おいおい、なんだよ。これからが本番だろうが」
「ちょうどいいわい。ワシもクソガキどもの世話に飽きてきたところじゃ」
この通路にかけられた魔法も古代魔法なので、解除するのは時間も手間もかかるだろう。
これからは一人で進まなければならない。
少しばかり寂しくなるな。
「じゃあ、またな。最深部で会おうぜ」
「ディアボロ、ワシより先に最深部に着いたら尻を叩くからの」
バッドは正面、アルコル師匠は左の通路に進む。
必然的に、残された俺は右の通路を選ぶ。
暗いが松明のおかげで数歩先まで見える。
モンスターの出現に警戒しながら数分も歩いていると、四角い広場に出た。
奥の方は暗くてよく見えない。
足を踏み出したとき、正面から魔力の弾が飛んできた。
横に飛んで避ける。
魔力の弾は地面に当たると、激しい風が巻き起こった。
これは……風魔法による攻撃だ。
《闇の眼》を使っていなければ直撃していた。
「誰だっ!」
暗闇に向かって問いかけるも、返事はない。
眼を凝らすと、前方に魔力の塊が見えた。
人型の形だ。
シャドーか?
自然と緊張が強くなる。
ジッと注視していると、暗がりから何者かが静かに姿を現した。
濃い緑色の髪を揺らし、顔は見えない。
ゴーグルで覆われているからだ。
攻撃してきたのは……モニカ先輩だった。
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