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第64話:再会と話

「な、雪崩ぇ!?」

「雪が緩んでいたのかもしれませんわ!」


 襲い来る白い塊。

 あんな物量をまともにくらってはひとたまりもない。

 今すぐ逃げなければ!

 雪崩から逃げるには、とにかく左右の端っこに向かうことだ。

 とうてい走って逃げられるようなもんじゃない。

 幸いまだ距離はある。

 頑張れば逃げ切れるはずだ。


「クララ姫、走れますか!?」

「もちろんですわ!」


 俺たちは急いで走る。

 だが、雪に足を取られて思うように進まない。

 いつの間にか膝くらいまで積もっており、足を引き抜いては踏み込む動作で余計な手間と時間が取られる。

 このままじゃまずい……どうする。

 必死に頭を働かせていると、クララ姫が俺の手を握って言った。


「ディアボロさん、逃げ切るのは難しそうです。……迎え撃ちましょう」

「い、いや、しかし、相手は雪崩ですよっ……!」

「私たちならできるはずです」


 クララ姫は言う。

 彼女の力強い視線に勇気をもらった。

 同時に、逃げてばかりではないいけないと思う。


「そうですね……それに、この先みんなを守るには雪崩くらい弾き返さないとダメですよね」

「それでこそディアボロさんですわ」


 俺とクララ姫は逃げるのを止め、雪崩の真正面に立つ。

 身体中に魔力を集中させた。

 全てをなぎ倒す雪の塊はもう目の前だ。

 相手はモンスターの類ではない。

 自然の脅威そのもの。

 だが、いくら強大な敵でも俺たちなら対処できる……!

 “エイレーネ聖騎士学園”で修行を積んできたんだ!


「《蔦の巨壁イビー・ビッグウォール》!」

「《闇結界》!」


 目の前の地面から、数え切れないほどの蔦が現れ、巨大な壁のように幾重にも重なる。

 さらにその後ろに、濃い紫色のバリアを展開した。

 闇属性の魔力が凝縮した守りの結界だ。

 ドームのように俺たちを護る。

 クララ姫と俺の二重の壁。

 相手がどんなに強くても防ぎきるつもりだった。

 雪崩が防御壁に衝突する。

 俺たちの身体は直接触れてはいないのに、圧迫されているような感覚覚えた。

 息苦しさまで感じる。


「くっ……なんて、力だ!」

「押し潰されてしまいそうですわ……!」


 俺とクララ姫は懸命に魔力を込める。

 雪崩は凄まじい衝撃だ。

 少しでも魔力が抜けると、即座に押し潰されてしまうだろう。

 自然の猛威を身をもって体感した。

 モンスターのブレスや殴打とはまた別の重い衝撃。

 殺意などは感じず、ただただ容赦ない自然の厳しさがそこにはあった。

 永遠に続くかと思われた雪崩だったが、徐々に勢いが弱くなる。

 見えない巨人の手に押されているような圧力もなくなり、周囲に静けさが戻った。

 俺はおそるおそるクララ姫に話しかける。


「もう……大丈夫みたいですね。雪の動きが止まりました」

「魔法を解除して外の様子を見てみましょうか……」


 俺たちは緊張しながら魔法を解く。

 防御壁があったところだけ、ぽっかりと空間がある。

 雪の間からはクララ姫が出した蔦の端が見えた。

 二重のバリアは雪崩をうまく防いでくれたらしい。

 俺とクララ姫は互いにホッとする。

 同時に、俺の心には感謝の気持ちがあふれた。


「クララ姫がいなかったら、今頃俺は雪の下でしたよ。本当にありがとうございました」

「いえいえ、何をおっしゃいますか。私の魔法よりディアボロさんの結界の方が何段階も協力でしたよ」


 たぶん、二人一緒にいなければ危なかったと思う。

 自然の脅威を目の当たりにした出来事だったが、クララ姫との絆がより深まった気がする。


「では、そろそろフラッグ探しを再開しましょうか」

「そうですね。幸いなことに、まだ誰も見つけていないようですわ」


 銀のフラッグを獲得すると、その瞬間アナウンスが流れる。

 だから、まだ誰もクリアしていないことはわかっていた。

 そうはいっても、これは早いもの勝ちだ。

 すぐ捜索を再開しなければ。


「クララ姫、ちょっと待っててくださいね。今雪の上に運びますから。《闇の反重……」

「いえ、私にお任せを。ディアボロさんも疲れているでしょう。《蔦運び(イビー・キャリー)》」


 地面の雪から太い蔦が現れ、俺とクララ姫を雪崩の上に運んでくれた。

 目に飛び込むは、一面の雪景色。

 吹雪と雪崩の影響もあるためか、雪以外何も見えなくなってしまった。


「困りました、真っ白ですね。吹雪は弱まってもこれじゃあ……」

「ディアボロさん、西の方角に何か黒いとんがりが見えますわ」


 クララ姫に言われ西を見ると、確かに雪の中から黒いとんがりが見える。

 いや、濃い緑のとんがりだ。

 風が吹くと先っぽがゆらゆら揺れた。

 たったそれだけの動きで安心感がわく。


「きっと、あれは森の一部ですよ。雪以外を見て安心しました」

「考えてみれば、私たちがいる場所は雪崩で高くなっていますものね。下に降りれば森に行けるはずですわ」

「どこか落ち着くところで、一度休憩しましょうか」

「ええ、そうしましょう」

 

 緊張が解けたのか、どっと疲れが出た。

 クララ姫も息が荒い。

 雪崩は防いだものの、やはり魔力の消費量は多かったのだろう。

 森なら枯れ枝も落ちているだろうし、暖も取れそうだ。

 今度は俺がクララ姫を下に降ろそうと思ったとき、バチバチという過激な音とともに空から雷が降ってきた。

 直撃する寸でのところで横に飛んでよけた。

 クララ姫もまた、蔦の壁で防御していた。

 この落雷は天候によるものではない。

 雨雲は出ていないし、落ちた場所からは魔力も感じる。

 そして俺は、この雷攻撃に見覚えがあった。

 後ろから誰かが雪を踏みつける音が聞こえる。

 振り返らずとも正体はわかった。


「探したぞ、ディアボロ。大事なことだから二回言うが、私はお前をずっと探していた。……ほぅ、今回は別の女と一緒か。しかも、王女クララとは恐れ入った。相変わらず好色な男だな」


 オートイコール校のエース、ソフィーだ。

 まさか、こんなところで遭遇してしまうとは……。

 雪崩や雪嶺熊より強敵だ。

 俺もクララ姫も緊張感が高まる。

 さらに悪いことに、弱まったはずの吹雪が強くなってきた。

 雪崩が起きる前より、一段と視界が悪くなる。


「……クララ姫、同時に攻撃しましょう。試練の島で戦いましたが、彼女は相当強いです」

「私もディアボロさんの意見に賛成です。私が隙を作るので、ディアボロさんが攻撃してください」


 俺とクララ姫は小声で相談する。

 二対一とはいえ、決して油断できない相手だ。


「どうやら、吹雪が強くなってきたようだな。さて、ディアボロと王女クララ。私と一緒にビバークしてもらおうか」


 有無を言わさぬ勢いでソフィーは言った。



 □□□



「さあ、準備ができたぞ。中に入れ」

「は、はい……」

「お邪魔いたしますわ……」


 かまくらみたいな雪の塊に入る。

 ソフィーと遭遇した後、一緒に森の中でビバークすることになったのだ。

 枯れ枝にソフィーが雷魔法で火をつける。

 かまくらの中がぽわっと暖かくなった。

 冷え切った身体がじんわりと温まるのは大変に心地いい。

 ソフィーもまた、焚き火に手を当て暖まる。

 出会ったときはすぐ戦闘になるのかと緊張したが、結局彼女から戦いの意思は見られなかった。

 休憩もそこそこに、俺とクララ姫は同時に気になっていたことを尋ねる。


「ところで、ソフィー。お仲間はいないの?」

「もしかして、はぐれてしまったのですか?」


 ソフィーの仲間が姿を見せない。

 遭難したのかと心配したが、彼女は淡々と俺たちに言った。


「チームメイトとは別行動だ。手分けしてフラッグを探している」

「「なるほど……」」


 この演習では、チームメイトが別々に行動してもOK。

 片方が再起不能状態にならなければいいのだ。


「さて、ディアボロ。お前を探していたのは他でもない。……話しておきたいことがあるんだ」


 ソフィーは真剣な顔で告げた。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


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