表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/96

第6話:マロンの病気を治す

 修行を初めてから二ヶ月も経った頃。

 とうとう魔力ボールを10個まで乗せられた。

 この頃になると、アルコル師匠も俺をクソガキとは呼ばなくなっていた。

 相変わらず尻を叩かれることはあるが、認められたようで嬉しい。

 ステータスもまた、色々とぶっ飛んでいた。



【ディアボロ・キングストン】

 性別:男

 年齢:14歳

 Lv:45

 体力値:1500

 魔力値:8000

 魔力属性:闇(解放度:★10)

 称号:超真面目な令息、給料上げてくれる方、ディアボロ、スパンキングボーイ、すごい努力家、重い想い人



 やっぱり、努力っていいな。

 本当に気絶しそうになりながら修行したからな。

 頑張った達成感があった。

 ステータスだって、ラスボスとはいかないまでも、中ボスとか大ボスレベルだ。

 しかし、自分の名前が称号なのはどうなんだ?

 いや、そんなことよりも……。


「アルコル師匠、回復魔法が使えるか試してもいいですか?」

「ああ、いいじゃろう。しかし、最初に攻撃魔法を使いたいと言わないのが不思議じゃな。闇属性といったら、真骨頂は攻撃魔法じゃが」

「いや、まぁ、いろいろありまして」


 “超成長の洞窟”から外に出る。

 まずは自分の身体に向けて使ってみるか。

 ちょうどいい具合にボロボロだ。

 念願の闇属性の回復魔法……どんな感じかな。


「《闇の癒しダークネス・ヒーリング》!」


 俺の全身が淡い黒の光に包まれる。

 呪いだとかそういう怖い雰囲気はなく、優しげな光だ。

 なんていうか、こう……お風呂に入っているような心地よさだな。

 全身にあった細かい傷が消える。

 疲労感もなくなり、活力があふれてくる。

 おまけに、尻の痛みもキレイサッパリと消え去ってしまった。


「すげえ! 本当に回復できましたよ! 回復魔法が使えました! うおおおお!」


 天に向かって拳を突き上げる。

 ゲームではちょいちょいと経験値を貯めるだけだったが、実際にやるとこんなに大変なんだな。

 困難を乗り越えた分、余計に嬉しい。

 一人で感動しきりだ。

 アルコル師匠はというと、ただただ呆然と俺を見ていた。

 調子にのるな、とまた尻を叩かれるのかと思ったが違うらしい。

 俺の前に来たかと思うと、静かに右手を出してきた。


「ディアボロ、貴様はワシが思っている以上の人材だったようじゃ。ここまで実力が突出しているとは思わなかった。……褒めざるを得ないの」

「アルコル師匠……!」

「貴様はワシの一番弟子じゃ」


 固い握手を交わす。

 最初はどうなることかと思ったが、この人についてきて本当に良かった。


「ようやく……ようやく達成できましたっ! これもアルコル師匠のおかげです!」

「まぁ、それはそうじゃの。……そうか、ディアボロが成長できたのは、100パ―セントワシのおかげというわけじゃ! やっぱり、ワシはすごいんじゃ! ヒャーイヒャイヒャイ!」


 褒めたかと思いきや、次の瞬間にはアルコル師匠はヒャイヒャイと笑い出した。

 まぁ、いつもの流れなわけだが、本題はこの後だ。


 ――マロンの病気を治さなければ。


 自然と表情が硬くなる。

 ついに、断罪フラグと直接戦う瞬間が来た。

 ヒャイヒャイ笑うアルコル師匠を連れ、俺たちは離れに向かう。

 マロンはちょうどラウームと一緒に、庭の草木へ水をやっていた。

 俺を見つけるとマロンは笑顔になるが、ラウームは相変わらず表情が厳しい。

 いや、無表情といった具合か。

 マロンは嬉しそうにパタパタと駆け寄ってくる。


「お帰りなさいませ、ディアボロ様。今日の修行は終わったのですか? さっそくお風呂の支度を……けほっ、こほっ」

「ほら、あまり無理するなよ。まだ完全に治ったわけじゃないんだから」

「も、申し訳ございません、ディアボロ様……こほっこほっ」


 マロンの体調は浮き沈みの経過をたどっている。

 一時はよくなったものの、日によっては咳がたくさん出てしまう。

 俺もなるべく気遣うようにしているが、やはり完治にはまだ程遠い。

 特に、走ったり運動すると、こほこほと咳き込んでしまうのだ。

 病気に苦しんでいる彼女を見ていると、前世の記憶が思い出される。

 好きに走ることもできない。

 病の苦しさは俺が一番よく知っているつもりだ。


「マロン、ラウーム、朗報がある。頑張って修行した結果、回復魔法が使えるようになったんだ」

「誠でございますか、ディアボロ様! あぁ……毎朝、毎昼、毎夜、お祈りを捧げた甲斐がありました!」


 マロンはすぐに喜んでくれたが、ラウームは真実か疑っているようだ。

 ジッとアルコル師匠を見ている。


「なに、そんなに疑わんでもディアボロの言っていることは真実じゃよ。ワシですら習得できなかった回復魔法を習得しおった」

「なんですと……?」

「だから、マロンの病気を治させてほしいんだ」


 俺が言うと、ラウームはマロンの前に立ちはだかった。


「ど、どうしたの、お父さん?」

「……ディアボロ様、申し訳ございません。それでも、マロンの身体を任せるわけにはいきません。もしマロンに何かあったらどうするのでしょうか」

「ちょっと、お父さん! ディアボロ様は毎日必死に修行されているんだよ!」


 マロンに服の袖を引っぱられても、ラウームは表情を崩さない。

 娘を守りたいという、父親の意思が伝わった。

 元より、俺だって無理矢理回復魔法を使いたくはない。


「頼む……この通りだ。俺はどうしても、マロンの病気を治したい。彼女に元気になってほしいんだ」


 頭を下げて必死に頼み込む。

 俺の信頼がないのは、今までの行いのせいだ。

 彼は少しも悪くない。

 しばし沈黙が過ぎた後、ラウームは静かに言った。


「そこまで仰るのなら……」


 渋々と脇にどき、マロンへの道を空けてくれた。


「ありがとう、ラウーム」

「何かあったらすぐ公爵様に報告いたしますが」

「もちろんだ」


 マロンはいつにも増して、緊張した様子で佇んでいる。

 安心させるよう、彼女の肩に手を乗せた。


「マロン、すぐ終わるからな。何もしなくていいぞ。リラックスしていてくれ」

「は、はい」


 ドキドキした表情のマロン。

 俺も静かに深呼吸し、回復魔法を唱えた。


「《闇の癒し》!」


 即座に、マロンの身体を黒い光が覆い始める。

 いい感じだ。

 俺が自分に対して使ったときと全く同じ光景だった。

 ラウームが緊張した様子で話しかける。


「ど、どうだ、マロン。苦しくないか?」

「うん、全然問題ないよ。むしろ、お風呂に入っているような気持ちよさ……んんっ! ……あぁあ~!」


 突然、恍惚とした嬌声を上げ、マロンはなまめかしい表情で身体をくねらした。

 しかも、頬が赤く照っており非常に艶っぽい。

 え、え、え……なにこれ。

 人に使うとこんな感じになるの?

 ラウームの顔は途端に彫刻のように硬くなる。

 俺はどっと冷や汗をかく。


「……ディアボロ様?」

「ま、待ってくれ! これは違うんだ! これは違くて……!」

「っ……ああ~ん!」


 ひと際大きな喘ぎ声を上げ、マロンは静かになった。

 落差が激しく、かなり不安になる。


「だ、大丈夫か、マロン?」

「……はぃい! なんだかすごく元気になりましたぁあ! 今ならいくら走っても疲れない気がしますぅう!」

「あっ、ちょっ……マロン!」


 いきなり、マロンは全速力で庭を走り出した。

 そ、そんなに走ったら咳が……!

 俺とラウームはヒヤリとしたが、マロンが咳き込む様子はない。

 以前なら、十秒も経たずに動けなくなっていたのに。


「お父さーん! 私、元気になったよー! ディアボロ様が病気を治してくれた! ディアボロ様ー! 本当にありがとうございまーす! こんなに走れるなんて夢のようです!」


 マロンは走りながら、笑顔で俺たちに手を振る。

 その光景を見ていると、じわじわと喜びがあふれてきた。

 無事に……無事に、マロンの病気を治せた!

 これで断罪フラグの一つを潰せたわけだ。

 くぅぅぅ……! 素晴らしい達成感!

 将来の不安が消えるのは、なんて清々しいんだ。


「ディアボロ様、私にもその回復魔法を使ってください」


 心の中で喜んでいたら、ラウームが告げた。


「え、ラウームも? どこか具合悪かったっけ?」

「五十肩がございます。ディアボロ様の回復魔法をこの身でも体験したく思います」


 原作にない裏設定の提示。

 きっと、ディアボロが本当に治したか確かめたいのだろう。

 そういうことなら断る選択肢などない。


「わかった。じゃあ、いくぞ。《闇の癒し》!」

「……んっ……あぁんっ! ……あぁぁあ~!」


 ラウームの嬌声が天に昇る。

 彼もまた両手で身体を抱えてはくねらしていた。

 それを見ては、ヒャイヒャイと笑うアルコル師匠。

 正直なところ、おじさんの恍惚とした表情を見せられ、少々複雑な気持ちにはなった。


「ど、どうだろうか、ラウーム。身体の調子は?」

「……ぅぅぅぅう! 素晴らしく元気になりましたぁあ! これが……! これが、闇属性の回復魔法なのですね! マロンの病気を治してくれてありがとうございますぅう!」


 ラウームはお礼を叫んだ後、嬉しそうに体操を始める。

 どうやら、元気いっぱいになったようだ。

 安心すると同時に不安になる。

 毎回こんな感じなのかな。

 ……いや、問題ないだろ。

 きっと偶然が重なったんだ。

 諸々大丈夫そうでホッと一息ついていたら、ランニングを終えたマロンが興奮しながら話しかけてきた。

 彼女の顔に、もう白い布はない。

 にっこりした笑顔が爽やかだった。


「ディアボロ様、本当にありがとうございます。おかげで身体がすこぶる元気になりました。こんなに空気をおいしく吸えるなんて、生まれて初めてでございます」

「いやいや、それなら良かった。マロンの笑顔が見られて、頑張った甲斐があったよ」

「なんだか……ディアボロ様のことを考えると身体が熱くなってしまいます」


 マロンは頬を赤らめ、またもや身体をくねらす。

 ……本当に病気は治ったよな? 体調はもう問題ないんだよな?

 俺はやはり心配になってしまうのであった。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!

評価は下にある【☆☆☆☆☆】をタップorクリックするだけでできます。

★は最大で5つまで、10ポイントまで応援いただけます!

ブックマークもポチッと押せば超簡単にできます。


どうぞ応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「五十肩がございます。ディアボロ様の回復魔法をこの身でも体験したく思います」 じゃあ娘より先に闇回復受けてやれよ 娘で安全を確認してから自分てオヤジw
[一言] 原理としてはマイナスにマイナスを掛けて打ち消してる感じなのかな
[気になる点] 一緒にいたアルコル師匠のレベルは、★9のまま?人により上限があるのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ