第58話:学園会議……への出席
「さて、ディアボロよ。急な呼び立てですまんな」
「あ、いえ……全然大丈夫でございます、クルーガー先生」
目の前に座っているのは、学園長のクルーガー先生。
周囲には、アプリカード先生やレオパル先生、サチリー先生などの教員たちが集まっていた。
ここは大会議室。
俺は今、学園会議に参加しているのだ。
なぜかは……わからん。
何かやらかした記憶はないんだがな…………いや、心当たりがあった。
そう、夜の件だ。
まさか、シエルやマロンと過ごす夜が糾弾されるのだろうか。
アプリカード先生をさりげなく見ると、厳しい視線が返ってきた。
今のところ断罪フラグは落ち着いているが、社会的な死を迎えそうだった。
「さて、本題に入る前に、お主にも伝えておくことがある。フォルトの処遇は覚えておるな?」
「はい、覚えています。監獄行きになったと」
「フォルトがな…………どうやら、脱走したようなんじゃ」
「え!?」
マジか。
衝撃な言葉に、思わず素の声が出てしまった。
クルーガー先生は真面目な顔のまま話を続ける。
「正確に言うと、刑務所に運ぶまでの護送馬車から脱走したんじゃ。警備の衛兵は根こそぎ倒されておった」
「そうだったんですか……初めて聞きました」
「まだ公にはなっておらんからな。じゃが、もう少し調査が進めば学園の皆にも公表するつもりじゃ」
脱走するなんて、あいつはどこまで悪いヤツなんだ。
己の犯した罪と見つめ合い、静かに反省するべきだろうに。
……ん?
いきなりフォルトの話が振られたということは……。
「もしかして、今日俺が呼ばれた理由はフォルトに関わることでしょうか?」
「いかにも。本来なら教員たちのみで対応するべき事案じゃが、お主は一年生の中でも格別に優秀だからの。意見をもらおうとワシらの中で話し合ったのじゃよ」
「そんな……俺の意見だなんて恐縮です」
やっぱり、フォルトの話か。
夜の件じゃなくて静かにホッとする。
「ワシらが調査を進めた結果、フォルトには“魔族教会”が関わっている可能性が浮上した」
「……“魔族教会”……ですか?」
クルーガー先生の言葉に首をかしげる。
初めて聞いた組織の名だ。
「ああ、お主が知らないのも無理はない。最近設立された組織らしいからの。じゃが、侮ってはならぬ。魔王の復活を目論んでいる者たちの集団なのだ。魔族に手を貸してな」
大会議室を包む空気が一段と張り詰める。
俺もまた、嫌な汗が背中を伝った。
魔王復活を企む人間がいるなんて……。
五大聖騎士が懸命に築いた平和が台無しになるぞ。
俺は前世でプレイしていたから、魔王復活エンドを知っている。
力を得た魔族たちが同時に世界を襲い、地上は恐怖に包まれるのだ。
街は壊され人は死に、空に響くは悲鳴や泣き声ばかり……。
まさしく、阿鼻叫喚の地獄絵図に世の中は変貌を遂げる。
原作主人公が負けてしまうと、本当のゲームオーバーだ。
世界は再び魔王と魔族に支配され、もう二度と人間の世界は戻ってこない。
「魔王の復活なんて……絶対に俺が阻止してやります」
気がついたら、自然と決意が口をついてでた。
俺はこの世界に転生して、本当に良かったと思っている。
シエルやマロン、アルコル師匠、デイジー、バッド……。
前世では出会えなかったような、素晴らしい人たちと親しくなれた。
断罪フラグの恐怖は心の底にあるものの、毎日が楽しくてしょうがないんだ。
クルーガー先生はフッ……と静かに笑った。
「よく言ってくれたの。それでこそ、“エイレーネ聖騎士学園”の生徒じゃ」
「俺の正直な気持ちです」
「ディアボロ……」
今度はレオパル先生が口を開く。
もしかして、しっかり話すのは入学試験以来かな。
なんだか久しぶりだ。
「お前はフェイクルという女のことを知っておるか?」
「いえ、知りません」
またもや、知らない人間の名前が出てきた。
原作にはいなかったはずだから、モブの生徒かな。
「どうやら、この女はエイレーネ聖騎士学園の教員を騙り、フォルトに接触していたらしい。おそらく、フォルトの脱走もこの女が支援した可能性がある」
「つまり、黒幕がいたというわけですね」
「ああ、そういうことだ。さらに、フェイクルは“魔族教会”の一員であることもわかった」
少しずつ、話が不穏な空気に包まれてきた。
魔王復活を企む組織と、フォルトに繋がりがある……。
まだ確証はないが、ほぼ確かな気がする。
「ですが、どうしてフォルトに接触したのでしょうか」
「そこまではまだわからない。聖属性の魔力は貴重だからな。何かしらの理由で目につけたのかもしれん」
「なるほど……」
特に、フォルトはまだ入学したての一年生だ。
二年生や三年生などの、熟練した使い手よりは御しやすかったのかもしれない。
「そして、ここからが本題だ。ペル・ペリドに“魔族教会”の人間が出入りしているという情報が得られた」
「“水葬の暗黒街”とも呼ばれる、あの黒い街ですか」
「ああ。“魔族教会”なんていう裏の組織が身を隠すのにもってこいだな」
名前は知っていても、原作では終ぞ行くことすらなかった街だ。
世の中のはみ出し者が集まった街。
当然のように治安も悪い。
「学園から厳選した調査団を派遣することに決まったのだが……お前も一緒に行くか?」
「ええ、ぜひお願いします。願ってもないことです」
「ありがとう。お前もいれば、私らも安心だ」
“魔族教会”にフォルトか……。
魔王復活を企む“魔族教会”、フェイクルという謎の女。
どちらも原作に出てこなかったはずだ。
俺の知らないところで何が起こっている。
ふと、シエルやマロン、クララ姫の笑顔が脳裏に思い浮かんだ。
――何が来ようと、俺はみんなの幸せを絶対に守る。
俺は拳を固く握り締めた。
お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます
【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】
少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!
評価は下にある【☆☆☆☆☆】をタップorクリックするだけでできます。
★は最大で5つまで、10ポイントまで応援いただけます!
ブックマークもポチッと押せば超簡単にできます。
どうぞ応援よろしくお願いします!




