第57話:感謝と決心
「デイジーも資料を探しに来たのか?」
「うん、なんだかお話しするのは久しぶりだね」
デイジーはいつものように、地味目なワンピースを着ている。
服装に反して、その表情は明るかった。
すでに数冊の本を小脇に挟んでいるから、彼女も資料探しに来たんだろう。
本来なら自分からあまり人に話しかけない性格なのだが、原作とはだいぶ違う。
やっぱり、シナリオは少しずつ変化しているのかもな。
「課題は順調か?」
「うん、一生懸命頑張っているよ。ディアボロ君のおかげで毎日やる気に満ちあふれているから」
「……俺のおかげ?」
デイジーは呟くように言った。
俺のおかげって何だろう。
「私……この学園に入学してから、ずっと自信がなかったの。何やっても人より時間がかかるし、要領もあまり良くないし、地味だし……でも、ディアボロ君に会ってから……いや、試験の時に助けられてから変わった」
「試験って、あのトロールに襲われたときか?」
デイジーは黙ってうなずく。
「森でフォルト君に見捨てられたとき、もうダメだと思った。でも、それだけじゃない。もっと頑張らないといけないとも思った」
「……そうだったのか」
「ディアボロ君は努力しているから強い。だから、私も努力を続ける。ずっとこの気持ちを伝えたかったんだけど遅くなっちゃった」
彼女がそんなことを思っているなんて、まったく想像しなかった。
「じゃあ……またね。私も頑張るから」
そう言って、デイジーは地下書庫から出て行った。
しばらく彼女の話の余韻が残っていたが、俺も数冊の本を取り座席に戻る。
シエルたちはすでにテーブルで黙々と課題を進めていた。
みんなの顔を見ていると、静かに……だけど強く思うことがあった。
シエル、マロン、クララ姫、デイジー……彼女たちだけじゃない。
アルコル師匠にアプリカード先生やレオパル先生、バッド……この世界には俺の大事な人たちがいる。
おそらく、魔王は復活する。
阻止することができればいいが、今のところ有効な手段がない。
だったら……。
――魔王を倒せるくらい強くなってやる。そしてみんなを守る。
これからも俺は努力を重ねる。
固く拳を握り、羊皮紙にペンを走らせた。
□□□
課題終了後の夜。
俺の部屋には勝ち誇った表情のクララ姫がいた。
「では、約束通り今晩は私がディアボロさんを独り占めいたします」
「「ぐぎぎ……」」
課題の発表はクララ姫が最高点だった。
独自の解釈を入れた内容が、サチリー先生から高い評価を受けた。
「きっと、私のレポートは“五大聖騎士”についての考察が足りなかったんだわ……」
「私はエイレーネ王国周辺の地理と魔族の侵略を、もっと深く調べるべきでした……」
悔しそうに部屋から出るシエルとマロン。
クララ姫は嬉しそうに俺を寝室へと連れていく。
「では、ディアボロさん。始めましょうか」
「は、はい、何を……でしょうかね」
彼女は色んな物を持っているのだが、なぜかモザイクがかかっていてよく見えない。
「まずは下準備を……」
「え? あ、あれ? あれれ~?」
気づいたら、両手両足を縛られてしまった。
迫りくるモザイクのアイテム。
「では、いきますよ。ディアボロさん」
「ま、待って! せめて何をするのかだけ教えて……ぁぁああああ~!」
新たな境地を開かされたのだが、その話はまた今度にしよう。
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