表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/96

第56話:学生らしい課題

「では……皆さん。今日は歴史の授業を行います……課題はエイレーネ王国の建国と五大聖騎士について……です」


 教卓でぼそぼそと呟くのは、寝ぐせが跳ねた丸眼鏡の女性。

 魔法学担当のサチリー先生だ。

 今日はアプリカード先生の講義や模擬試験ではなかった。

 “エイレーネ聖騎士学園”は実技形式の試験が多いが、もちろん座学もある。

 シエルやマロン、クララ姫と一緒に、俺も頑張って勉学に励んでいた。

 学園には五大聖騎士に匹敵する人材を育てる……という目的があるから、俺たちは魔法以外にも幅広い知識の習得を求められた。

 ちなみに、彼女と恋仲になるルートはない。


「王国と五大聖騎士については……皆さんもご存じだと……思いますが……自分の手で調べると……一段と理解が深まり……ます……」


 要するに、レポート発表みたいな授業かな。

 日本だと嫌われ筆頭の課題だが、ここは目標の高い貴族が集う学校。

 文句を言うヤツは一人もいなかった。

 無論、俺もだ。

 調べ物は学園付属の図書館(ライブラリー)で行うことになり、俺たち生徒は移動する。

 適当な四人席を確保した。

 右にはシエル、正面にはマロン、その横にはクララ姫。

 彼女らの視線はさりげなくバチバチとぶつかる。

 まるで実技試験みたいだな。

 やる気があふれていて何より…………いや! ま、まさか、今回も……!


「……言っておくけど、一番高い点を取った人がディアボロを独り占めするんだからね」

「承知しております、シエル様。ディアボロ様を手に入れるため、図書館中の本を調べるつもりです」

「私も全力で取り組ませていただきますわ。王宮教育の本気を見せて差し上げます」


 ふむ、当分疲れる夜が続くというわけか。

 課題を進めながら、俺はこれまでの状況を整理し、今後の予想を立てることにした。

 ちょうど、じっくり考えるのに適した環境だしな。

 となると、一番の懸念点は……。


 ――ゲームのシナリオはどうなっているんだろう……?


 ずっと気にかかっている。

 フォルト君は表舞台から姿を消したから、シナリオを気にする必要はもうないと思っていた。

 だが、クリスの件を考えると、まだイベントは生きていると考えるべきだ。

 彼女は原作通りの場所に住んでいたし、取り巻く環境も同じだった。

 つまり、イベントが生存しているということは、断罪フラグも生存……。


「……どうしたの、ディアボロ。首がもげそうなほどうなだれているけど」

「い、いや、何でもないんだ。そう、何でもない……」


 言い聞かせるように呟く。

 いつになったら将来安泰と言えるのか。

 さらに、断罪フラグもそうだが、それより心配な点がある。


 ――“魔王”の復活。


 その名の通り、全ての魔族を支配する絶対王。

 数百年前、人類の英雄“五大聖騎士”に封印されたが、徐々に効力は弱まっている。

 主人公フォルトと仲間たちは終ぞ、魔王と対峙……。

 俺が生きているゲーム世界、【エイレーネの五大聖騎士】の一番大きな山場だ。

 だが、問題が一つある。

 魔王の復活はランダムなのだ。

 いや、ランダムというと語弊があるか。

 どうやら複雑なアルゴリズムで決まるらしく、いつ復活するのかまったく予想もつかない。

 学園のミニゲームやサブイベントが楽しくて、そればっかりやっていたらいきなり魔王が復活。

 低レベルの主人公フォルトは何もできずあっさりゲームオーバー……なんて報告もあった。


 ――いつ魔王が復活するか、どうすれば復活してしまうのか、誰一人としてわからない。


 それがこのゲームに、独特の緊張感をもたらしていた。


「じゃあ、ディアボロ。ちょっと席外すわね。一番書庫に行ってくるから」

「でしたら、私は二番書庫に行きます。隅から隅まで探しますよ~」

「私は三番書庫に行きましょう。良いまとめを作るには、良い資料が必要です」


 彼女らの声で現実に戻った。

 シエルたち三人は席を立ち、資料を探しに行く。

 手元の羊皮紙を見ると真っ白だった。

 片や、三人はもう半分以上埋まっている。

 すっかり考え込んでしまったようだ。

 課題は課題でちゃんとやらなければ。

 将来の心配より、まずは目の前の課題だな。

 俺もとりあえず資料を探すか。

 前世の知識と照らし合わせてみよう。

 書庫は一番から三番まであるが、どこも生徒たちでいっぱいだ。

 しょうがないので、一番人気がない地下書庫に来た。

 背の高い本棚が等間隔に10個ほど並ぶ。

 適当に探すと、目を引かれるタイトルが見つかった。


 ――“五大聖騎士の伝承と伝説”……か。ちょうどいい。


 魔王を封印した英雄たち。

 彼らは“五大聖騎士”と呼ばれ、人々の尊敬を今も集めていた。

 

 巨大な斧であらゆる敵を駆逐した老戦士、“終わりの斧”――ゲオルク。

 一人で七属性もの魔法を操った大賢者、“叡智の結晶”――トリスタン。

 どんなに遠くからでも必ず心臓を撃ち抜いた弓の名手、“心臓撃ちの弓”――シャルロット。

 燃え盛る拳で湖すら干上がらせた至高の拳闘士、“烈火の宝拳”――リリヤ。

 そして、類まれな聖属性を扱い彼らの導き手となった聖騎士、“清浄の守り手”――ヘルト。


 簡単に言うと、勇者パーティーみたいなもんかな。

 この辺りの伝承は原作通りか……。

 他にも調べてみようと本棚を探っていると、後ろから可憐な声が聞こえた。


「ディ、ディアボロ君。あなたも資料探しに来たの?」


 振り返ると、デイジーが立っていた。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!

評価は下にある【☆☆☆☆☆】をタップorクリックするだけでできます。

★は最大で5つまで、10ポイントまで応援いただけます!

ブックマークもポチッと押せば超簡単にできます。


どうぞ応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ