第54話:金髪(Side:クリス①)
――ディアボロ・キングストン。
あいつは何なんだ。
いきなりサーゼドーザにやってきて、金を置いて帰っていった。
これでポーションを買えと。
あの金髪がどうしてお母さんのことを知っていたのかは謎だ。
だけど、あいつのおかげでお母さんの病気は良くなった。
ポーションは高い。
たとえCランクの一般的な物でも。
私たちはその瞬間を生きるので精いっぱいだった。
だから……私は冒険者を襲うことを決めた。
ギルドの近くに張り込んで、目星を付けたパーティーの後を追う。
クエストがひと段落して、疲労が溜まったところを狙う計画だ。
作戦はうまくいった。
私は魔法が得意だったし、暗がりからの襲撃は効果的だった。
でも、お母さんはそのお金でポーションを買おうとはしなかった。
以前はどうしてかわからなかったけど、今になってはわかる。
強盗まがいの手段で手に入れたお金なんて、使う気にもならないだろう。
私はそんな簡単なことにも気づかなかった。
あの金髪が来なかったら、どんな人生を歩んでいたかと思う。
あいつは私を真っ当な道に戻してくれた。
襲った冒険者たちには、お母さんと一緒に謝った。
もちろん、みんなは怒っていたけど、懸命に謝ると許してくれた。
ホッとしたけど、自分の行いを恥ずかしく感じた。
金髪が来てから、サーゼドーザの暮らしは見違えるように良くなっている。
あの後キングストン家を名乗る初老の執事が来て、ならず者を追い払い、住民たちに仕事を斡旋してくれた。
周辺貴族の使用人や、ギルドの雑用係、商会の荷物運び……。
金髪が来る前は縁がないと思っていた仕事ばかりだ。
お母さんも子爵家の使用人の口を紹介され、私も一緒に住み込みで働くことになった。
受け入れられるか不安だったけど、キングストン家の紹介状を見せたら歓待された。
仕事は大変だけど、温かい食事と清潔なベッドを提供された。
お風呂だって毎日入れる。
気がついたら、感謝の言葉をよく口にするようになっていた。
以前はありがとう、なんてろくに話さなかったのに。
これもきっと、金髪が来たからだろう。
今では周りの人に感謝したい気持ちでいっぱいだ。
サーゼドーザにいた頃では考えられない心境の変化を迎えていた。
――“エイレーネ聖騎士学園”のディアボロ・キングストン。
いつか恩返しをしたい。
それが、今の私の目標だ。
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