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第5話:修行の途中成果

「アルコル師匠、見てください! 魔力ボールが7個まで乗るようになりましたよ! どうすか!?」


 二週間も経つと、急速に魔力が安定しだした。

 ずっとボールの輪郭がぼやぼやしていたが、今はシャキッとハッキリ見える。

 しかも、五分くらいで消えていたのが、最低でも三十分は保つようになっていた。

 頑張ればもっと維持できそうだぞ。

 最高記録も更新し、7個まで乗せることができたのだ。

 修行の成果が出ているのだろう。

 ステータスも確認してみよう。



【ディアボロ・キングストン】

 性別:男

 年齢:14歳

 Lv:20

 体力値:200

 魔力値:800

 魔力属性:闇(解放度:★7)

 称号:真面目な令息、給料上げてくれる方、クソガキ、スパンキングボーイ、努力家、重い想い人



 素晴らしい成長ぶりだ。

 解放度も順調に上がっているぞ。

 きっと、魔力ボールの個数と連動しているんだろうな。

 アルコル師匠も承知のようだ。

 称号の重い想い人ってのが謎だが。

 “超成長の洞窟”は、中にいるだけで全身にピシピシと細かい傷がつく。

 アルコル師匠曰く、洞窟内に漂う魔力の濃度が濃いから、身体にもダメージが入るらしい。

 自分は防御魔法でガードしているから問題ないとも言っていた。

 生と死を行ったり来たりするような毎日だが、成長しているみたいで単純に嬉しい。

 喜びながらアルコル師匠を見るも、無表情でこちらを見ているだけだった。


「うむ……貴様はなかなか筋がいいのかもしれん……ワシの想像を超える成長スピードじゃ……」

「ありがとうございますっ! もっともっと頑張りますよ!」


 アルコル師匠が褒めるなんて珍しい。

 もしかしたら、初めてかもしれん。

 やっぱり褒められるのは嬉しいな。

 さらにやる気が湧いてくる。

 そういえば、最近はくすぐられることもなくなってきた。

 賽の河原の石積みは卒業したということか。


「アルコル様、ディアボロ様っ。修行中、失礼いたしますっ。ちょっとよろしいでしょうかっ」


 次は8個目だ……と魔力を捻出しだしたとき、マロンの声が聞こえてきた。

 なんか、いつもより慌てた様子だな。

 魔力ボールを維持したまま洞窟の外を見る。

 ……マロンの隣には衝撃的な人物がいて、魔力ボールは全て弾け飛んだ。


「ち、父上ぇぇえ!?」

「調子はどうだ。真面目にやっているのか?」


 まさかのグランデ・キングストン。

 つまり、俺の父親が立っていた。

 いつものような厳しい視線でこちらを見ている。

 な、なんで父上がここにっ。

 原作では、顔も見たくない……とディアボロには伝えていたはずだが。

 アルコル師匠に続いて洞窟から出る。


「どうした、グランデ。お主が来るとは珍しいのぅ」

「ディアボロの生存を確認しにきたのだ。領地内に死体を放置しておくと不衛生だからな」

「そんなこと言って、実際は息子が心配になって来たんじゃないのかの? 顔に書いてあるぞよ。ヒャーイヒャイヒャイ!」

「別にわざわざ言わなくていいぞ、アルコル殿」


 父上はしかめっ面をしながら注意する。

 公爵家の当主なんていったら忙しいだろうに。

 わざわざ息子の修行を見に来てくれたのか。

 俺はしどろもどろになっていたが、アルコル師匠はヒャイヒャイと笑っていた。


「グランデ、朗報じゃ。お主の息子はクソガキじゃが、意外と筋がいい。こんなに上達する人間はワシ以来かもしれんぞ」

「……ディアボロが?」

「ワシは嘘は吐かん。お主もよく知っておろう」


 父上は静かに俺を見る。

 その視線には、以前のような強い疑念は感じなかった。

 少しずつ俺を信頼し始めてくれているのだろうか。


「どうじゃ、クソガキ。グランデに修行の途中成果を見せてやらんか」

「えっ……?」


 不意に、アルコル師匠が告げた。


「お主はもうずいぶんと力がついているはずじゃからな。一度闇魔法を使ってみたらどうじゃ? ワシが許可する」

「いいんですか!? よっしゃー! ずっとこの瞬間を待ちわびてました!」

「失敗したら殺すがの」


 ジェットコースターのように感情が揺れ動く。

 許可が出たのは嬉しいが、死ぬのはイヤだぞ。


「それは……楽しみだな……」


 ポツリと父上は言った。

 父上もまた、俺を処刑するメンバーの一人だ。

 もちろん断罪ルートの回避もそうだが、それ以上に普通の親子として仲良くしたい。

 前世では親孝行らしい親孝行ができなかったからな。

 いや、思い返せばゲームの世界に閉じこもっていた。

 病弱な体が恨めしく、自分の運命を恨んだこともある。

 だが、俺は生まれ変わった。

 新しい人生では、息子として、ディアボロとして……この世界の父親に少しでも良いところを見せたい。


「よし、決まりじゃな。クソガキ、準備しろ。疲れたとは言わせんぞ」

「は、はいっ。でも、何の魔法を使えばいいですか?」

「今日はちょうどいい具合に曇りじゃ。空に火球を放って雲を蹴散らすんじゃよ」

「え……雲を……?」


 たしかに、今日は曇りだ。

 空一面は白い。

 しかし、空に火球を届かすなんてできるのか?

 まだ魔法を使ったことさえないのに。

 少々ビビッていたら、アルコル師匠にパンッと尻を叩かれた。


「今の貴様ならできるはずじゃ」


 父上もマロンも、みんな真剣な表情で俺を見ている。

 ここで逃げ出すような俺ではない。

 深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

 次の瞬間には、両手を空にかざし闇魔法を唱えた。


「《闇の大火球ダークネス・ファイヤーボール》!」


 俺の手のひらから巨大な黒い火球が現れ、猛スピードで放たれた。

 一直線に空へ向かう。

 五秒も経たずに、火球は見えないほど小さくなった。

 大丈夫か……? 途中で消えたりしないよな……? と不安になったときだ。

 マロンが驚きの声で叫んだ。


「え、ウ、ウソッ!? 空が……!」


 突然、全ての雲が消えた。

 空一面に青空が広がる。

 マロンは感動した様子で、目がキラキラと輝いている。

 父上もまた、呆然と空を見ていた。


「ま、まさか……本当に雲を消してしまうとは……信じられん……」

「要するに、ワシの指導がそれだけ素晴らしかったというわけじゃ! まだまだワシも捨てたもんじゃないのぅ! ヒャーイヒャイヒャイ!」


 そこは俺を褒めてくれ、アルコル師匠……とは思ったが、今回も黙っておくことにする。

 尻を叩かれるからな。

 しかし、魔法って楽しい。

 なんていうか、こう……爽快感が素晴らしいんだ。

 ロマンにあふれているし。

 うまく説明できないが。


「ディアボロ……」

「は、はいっ!」


 感傷に浸っていたら、父上に話しかけられドキッとした。

 やっぱりまだドキドキする。

 父上は何も言わない。

 な、なにを言われるんだ……?

 緊張で凝り固まっていたら、静かに告げられた。


「これからも頑張りなさい」


 静かに言うと、父上はゆっくりと屋敷へと歩きだした。

 マロンもペコリとお辞儀し、慌ててその後を追う。

 二人の背中を見ていると、じんわりとした温かさが心にあふれた。


「さて、ワシたちも修行再開するかの」

「はい! よろしくお願いします!」


 俺は“超成長の洞窟”に走りながら引き返す。

 父上が少しずつ認めてくれている気がして、嬉しかった。

 回復魔法の習得まであと少しだ。

 気づけば、修行を始めて二ヶ月が経った。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 闇属性火魔法? じゃあ水属性の人は水属性火魔法、つまりウォーターファイヤーボールを使うん?
[良い点] メイドたちを叩いたり殴ったりして強くなってるなら師匠からスパンキングでも経験値入ってるんだろうな 超成長の洞窟で師匠にしごかれながら魔法の鍛練 めちゃくちゃ効率いいやん
[気になる点] 闇属性って括りにしてるのに火も回復も使えるんだ
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