第47話:教会の人柱(Side:フェイクル①)
学園から脱出した私は、森の中を駆けていた。
どうやら、フォルトは退学処分になったらしい。
ダンジョンの落盤事故に見せかけて、暗黒炎龍にディアボロたちを殺させる作戦も失敗したようだ。
仕方がないだろう。
無能を形にしたような男だからな。
まぁ、失敗したところで別に構わない。
元々そこまで期待していなかったのだ。
収監予定の者は、一度街の収容施設に連れて行かれる。
そこで諸々の手続きを済ますのだ。
“エイレーネ聖騎士学園”も例外はないはず。
木陰に潜み機を窺う。
学園から街までは、必ずこの幅が広い一本道を通る。
フォルトにはまだ利用価値があるので、回収する予定だ。
「それにしても、ディアボロは面白いヤツだ……」
思わず小声が漏れる。
今まで暴虐だったが、ある日突然優しい人物に変わったという。
修行嫌いが嘘のように鍛錬を積み、勉学と訓練に励み、他人を慮る性格になった。
何の前触れもなく。
この現象に、私はある仮設を立てていた。
――ディアボロの中には異なる人間が宿っている。そう、この私と同じように……。
そのように考えれば辻褄が合う。
外見は同じで、中身だけ変わっているのだ。
簡単には信じられない話だろうが、私の仮説は真実だと考えられる。
あの男は今後の計画に支障をきたす可能性もあるが、逆に利用できる可能性もあった。
よって、しばらくは様子を見ることとする。
「「はっ! はいやっー!」」
待機していると、馬車が走る音が聞こえてきた。
フォルトを乗せているあの護送馬車だ。
さて、雑念は振り払わなければ。
大事な仕事の時間だ。
「《闇分身》」
私の身体からゆっくりと、オーラのような分身が現れた。
分身体は道の中央に出ると、佇んで馬車を待つ。
思った通り、馬車は目の前で止まった。
「「こら、そこをどきなさい。急いでいるんだ……ぐぁっ!」」
分身に気を取られた騎士たちを不意打ちするのは簡単だった。
たしか、騎士はもう一人いたはずだな。
「おい、何があった……うぐっ!」
護送用の頑強なキャビンから出てきた騎士を倒す。
これで邪魔者はいなくなった。
キャビンの中を覗くと、怯えた様子のフォルトがいた。
「フェイクル先生! どうしてここに!?」
「あなたを助けに来ました。まずはこちらに……縄を解いてあげましょう」
フォルトを外に出し縄を解く。
身体が自由になるや否や、フォルトは叫んだ。
「お、お前は誰なんだよ! 学園の先生じゃないんだろ!? この僕を騙しやがって! どうしてくれんだ!」
「騙していて申し訳ありません。たしかに、私は“エイレーネ聖騎士学園”の人間ではありません」
「ほら見ろ! じゃあ誰だって言うんだよ!」
「私は……“魔族教会”の人間です」
「…………え?」
先ほどの威勢はどこに行ったのか、フォルトは力が抜けたような真顔になる。
ポカンとしては私の顔を眺めていた。
――“魔族教会”。
封印されて久しい魔王を復活せんと活動している教団の名だ。
愚か者たちからは危険視されることも多いが、私たちの思想こそ人類を導く。
「優秀な人材を集めるため、各地を放浪していました。結果、フォルトさんという素晴らしい人を見つけることができたんです。どうですか? 私たちのところに来ませんか?」
「あ、い、いや……でも……」
フォルトは怖気づいている。
ふむ、少しずつ警戒心を解いていくとするか。
「フォルトさん、考えてもみてください。平民でありながら聖属性を持つ、極めて貴重な人材であるあなたをないがしろにしたのは、“エイレーネ聖騎士学園”です」
「え……? い、いったいどういう意味で……」
「彼らはあなたの価値に気づかなかった」
フォルトの視線が揺らぎだす。
この男は本当に扱いやすい。
価値があるとか特別だとか言っておけば、簡単に操ることができる。
「あなたは“エイレーネ聖騎士学園”のような鳥籠に閉じ込められるような器ではありません。どうか……あなたの特別な才能を私たちに貸してくださいませんか?」
「特別な…………才能…………」
「そうです。あなたには特別な才能がある」
肩を掴んで力強く告げる。
フォルトの瞳から怯えや迷いは消え、代わりに黒い野心の炎が燃え盛った。
「フェイクル…………いや、フェイクル先生、僕を連れていってください。……“魔族教会”に」
「ええ……もちろんです。これからもよろしくお願いしますね」
大事な人材を連れ、森の中に足を踏み入れる。
――光と闇は表裏一体。
フォルト…………こいつは良い人柱になる。
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