第45話:原作主人公
「フォルト、どうしてこんなことをしたんだ。さすがに冗談では済まされないぞ」
「どうしたって……全て君が悪いのさ」
「……俺が?」
いきなりお前が悪いと言われ面食らう。
記憶を思い返してみるが、恨まれるような心当たりはなかった。
「フォルト、罠ってどういうことなの! 私たちを下層に落とすなんて! 下手したら死ぬところだったわ!」
「しかも、あの暗黒炎龍の目の前ですよ! 本当に怖かったんですから!」
「ディアボロさんがいなかったらどうなっていたことか!」
フォルトは両手を上げ、シエルたちの言葉を制した。
「ディアボロ、君さえいなければ僕はこんなことをする必要はなかったんだ。君さえいなければね……僕は真に特別な存在になれたのさ。学園の中で光り輝き、あらゆる人物からの注目を集める人間にね」
フォルトは不気味な微笑みを浮かべながら話す。
彼の話を聞いているだけで、少しずつ怒りが沸いてきた。
「お前は……そんなことのために俺たちを……シエルやマロン、クララ姫まで危険にさらしたのか?」
「そうだ。……いや、そんなことなんて言わないでもらおうか。僕の崇高な目的なんだからね」
「だったら、俺だけ狙えばいいだろう。彼女たちまで巻き込むんじゃない」
「君が侍らせている女も同罪だ。僕の魅力を無視するのだからね」
意味がわからない。
まるで、ただの逆恨みじゃないか。
逆恨みどころか、一方的な恨みだ。
シエルたちはもはや呆れ果てている。
「……あの人は何を言っているの」
「まったく理解できません」
「ディアボロさんは少しも悪くありませんのに……あまりにも横暴すぎます」
彼女たちの言葉も、フォルトに届くことはないようだ。
完全に目が欲望で曇っている。
自尊心や虚栄心、色欲……本来なら澄んだはずの瞳は濁りに濁っていた。
「フォルト、一緒に学園へ帰ろう。そしてアプリカード先生やクルーガー先生に謝るんだ」
「馬鹿にするな。僕は謝るようなことはしていない。むしろ、謝るべきは君の方さ、ディアボロ。君のせいで僕の特別性は損なわれてしまったんだ」
「フォルト……」
説得を試みたが、聞く耳をもってくれなかった。
彼は特別うんぬんと言っているが、実はフォルトには……五大聖騎士の血が流れている。
エイレーネ王国を救った五人の聖騎士の一人――“清浄の守り手”ヘルトの血が……。
だから、彼が特別な存在なのは確かだ。
確かなのだが……。
「さあ、今ここで君を亡き者にし、僕こそ学園の羨望の的であることを実証する。君がいなくなれば、みんな僕に注目するはずなんだ」
肝心の本人に難がありすぎる。
フォルトはどこで道を間違えてしまったんだ。
「落ち着けって、フォルト。まずは話を聞いてくれ。お前がやったことは人を命の危険にさらす、本当に危険な行いなんだよ」
「僕は冷静だ。頭は冴えに冴え渡っているさ」
……ダメか。
フォルトはもう考え直すつもりはないようだ。
本気で俺を殺そうとしている。
「ディアボロ、お前の命は今日ここで終わりだ! 《次聖弾》!」
フォルトは何の躊躇もなく、俺たち目がけて光の弾を飛ばしてきた。
今までの《聖弾》より一段階大きく強い攻撃魔法だ。
学園生活で訓練を積んでいるから、彼も成長しているのだろう。
だが、この程度の攻撃……。
「……な、なに!? 素手で……弾いたっ!?」
右手を軽く動かしただけで、フォルトの攻撃は弾き飛ばされた。
ダンジョンの壁に当たって爆発し、大きな窪みを作る。
フォルトは一瞬驚いていたが、すぐにまた睨むような形相になった。
「まぁ、いいさ。僕だって大変な鍛錬を積んできた。ディアボロ程度簡単に倒してやる」
話していても埒が明かないだろう。
ここは倒して連れ帰るのみだ。
「フォルト、少し痛いかもしれないが我慢してくれな」
「は? いきなり何を言い出すん…………がっ……はっ……!」
俺の拳がフォルトの腹に食い込む。
全力で駆け出して、彼の腹を殴ったのだ。
もちろん、殺してしまうほどの威力ではない。
少しの間気絶させるだけだ。
拳がメリメリと食い込む中、フォルトは息も絶え絶えに話す。
「な……なんで……勝てないんだ……」
震えるように吐き出された言葉から、フォルトの本当にわからない気持ちが伝わってきた。
勝てない理由か……。
それはこの上ないほどシンプルだ。
「修行を積んでいないからだよ」
「……ぼ……僕は特別なんだ……だから、修行なんて必要な……い……」
呟くように言うと、フォルトはガクリと気絶した。
力なく俺の手にのしかかる。
フォルトの体勢を変えていると、シエルとマロン、そしてクララ姫が駆け寄ってきた。
「大丈夫だった、ディアボロ。怪我はない?」
「ディアボロ様、ご無事ですかっ」
「またまた守られてしまいましたね」
床には大きな穴が開き、下層には暗黒炎龍が死に絶えているはずだ。
手元には気絶したフォルト。
「俺は大丈夫だよ。まずは……先生たちに報告して判断を仰ごう」
クエストは達成したし、俺たちだけでは対処できない問題だ。
よって、すぐ学園に帰るのが先決だろう。
フォルトをおぶりながらダンジョンの出口へ向かう。
――しかし、彼はどこで道を間違えてしまったのだろうな。
お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます
【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】
少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!
評価は下にある【☆☆☆☆☆】をタップorクリックするだけでできます。
★は最大で5つまで、10ポイントまで応援いただけます!
ブックマークもポチッと押せば超簡単にできます。
どうぞ応援よろしくお願いします!




