第44話:なぜ
「みんな、静かにするんだ。なるべく刺激しない方がいい」
小声で言うと、シエル、マロン、クララ姫はそっとうなずいた。
暗黒炎龍は口の端から黒い蒸気を漂わせながら、俺たち四人を睨む。
敵かどうか見定めているような様子だ。
なるべくなら余計な戦闘は避けたい。
相手がSランクならなおさらだ。
俺一人ならまだしも、ここには大事な仲間たちがいる。
「慎重に下がろう。視界から外れたら一気に駆け出すんだ」
じりじりと下がり、もう少しで通路だというときだ。
上方から白い光の弾が飛んできて、暗黒炎龍の頭に当たった。
『ゴアアアアア!!』
暗黒炎龍は威嚇するように巨大な咆哮を轟かせる。
光弾が飛んできた方向を見ると…………フォルトが立っていた。
崩落した天井の縁に彼がいる。
さっきのは《聖弾》だったのか。
フォルトは誇らしげな顔で俺を見降ろす。
「何をやっているんだ、フォルト! 刺激するんじゃない!」
「ディアボロ、君は僕の罠にかかったのさ。暗黒炎龍の目の前に落とすというね。優しく食われることを祈るんだな。……まぁ、安心しなよ。学園には“不運な事故”ということで報告しておくからさ」
吐き捨てるように言うと、フォルトは姿を消した。
さすがのシエルたちも怒っている。
「あの人最低ね。ディアボロの命をなんだと思っているの」
「絶対に許せません」
「学園に戻ったら先生たちに報告いたしましょう」
「そうだな。となると、まずはこいつをどうにかしないといけないが……」
暗黒炎龍は今や、完全に俺たちを敵と判断しているようだ。
《聖弾》の一撃を喰らって、フォルトと俺たちは仲間だと認識したんだろう。
口から漂う吐息は黒みを増し、こちらを睨む視線はさらに凶暴だ。
「ディアボロ、私たちが戦うわ! いつも守られてばかりだもの」
「シ、シエル……!」
「そうです! 私はディアボロ様のメイド。主をお守りするのが使命です」
「命を救っていただいた恩、今こそお返しするべきですわ!」
「マロンにクララ姫まで……」
シエルの掛け声で、マロンとクララ姫が俺の前に立ちふさがった。
彼女らは俺を守ろうとしてくれているのか……。
「《重力超網》!」
「《蔦磔の刑》!」
空中からは重力で生成された巨大な網が現れ、床から何本もの太い蔦が生み出され、暗黒炎龍の全身を止めた。
シエルの重力魔法とクララ姫の植物魔法だ。
マロンは周りの空間が歪むほどの魔力を溜め、一気に放った。
「《業火の大竜巻》!!」
『グルァアアァッ!』
暗黒炎龍の全身を、炎の巨大な竜巻が覆う。
天井を突き抜けるほどの勢いで燃やし尽くす…………ことはできなかった。
『ゥゥゥウウ……ガアアァッ!』
鼓膜が破れそうなほど大きな咆哮が轟いた後、炎の竜巻は弾け飛んでしまった。
暗黒炎龍がゆらりと姿を見せる。
全身は焦げているものの、致命傷を負ったわけではなさそうだ。
「さすがはSランクといったところか」
「「そ、そんな……」」
マロンたちは厳しい表情だ。
彼女らは命をかけて俺を守ろうとしてくれた。
今度は俺の番だ。
彼女らと入れ替わるように前に出ると、暗黒炎龍は黒い火球を放ってきた。
触れた生物を完全に灰にする悪魔のブレスだ。
炎の一部が触れただけでも非常に危険なので、特大のバリアでみんなを守る。
「《闇の大結界》」
かざした右手から黒いオーラのようなバリアが展開される。
火球が当たると、爆発する間もなく吸い込んでしまった。
向こう側は透けて見えるので、暗黒炎龍の驚愕とした様子もわかる。
敵が不意を突かれているうちに仕留めるのが吉だな。
魔力で剣を生み出し、即座に力強く振るった。
「《闇斬撃の標》!」
漆黒の衝撃波が、暗黒炎龍の首に目掛けて猛スピードで飛んでいく。
『! グルァ!』
すかさず、暗黒炎龍はもう一度火球を放って迎え撃った。
だが、斬撃は火球ごと切り裂いてその首を落とす。
ゴトンッと重い音が響き、ダンジョンは静けさに包まれる。
一瞬の沈黙の後、三人の仲間は俺の元に駆け寄ってきた。
「ありがとう、ディアボロ! さすがだわ。あんなに強力なドラゴンも一撃で倒してしまうなんて!」
「私の炎は全然効きませんでした。お見事です、ディアボロ様!」
「やはり、あなたは今まで見たどんな強者より強いお方です!」
「いやいや、みんなが弱らせてくれたおかげだよ」
シエルたちと一緒に、暗黒炎龍を倒したことを喜ぶ。
喜びはするものの、俺はある疑問を感じていた。
フォルトが言っていた罠。
それは怪我人がいるとかは全部嘘で、俺たちをおびき寄せるためだろう。
――しかし、どうしてフォルトは正確な位置を知っていたんだ? 暗黒炎龍の目の前に落ちるような、ダンジョンの正確な位置を。
疑問は止まないが、まずは脱出しなければ。
シエルに重力魔法を使ってもらい、俺たちは第五層に戻る。
ちょうど、崩落した穴の中を通った形だ。
「まったく、面倒なヤツだ。君が灰になるのを見届けるつもりだったが、どうやら僕が直々に手を下す必要があるようだね」
床に降り立つと、俺たちを待っていたかのようにフォルトが立っていた。
彼の目を見るだけで、これから何が起きるのか容易に想像つく。
いよいよ、道を間違えてしまった原作主人公との戦闘が始まるのだ。
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