第41話:許せない(Side:フォルト②)
「ちくしょうがっ! 傲慢野郎のディアボロめ! あいつがいるせいで、僕は少しも目立てないじゃないか!」
寮の前を歩きながら小石を蹴り飛ばす。
“オートイコール校”との親善試合が終わり、“エイレーネ聖騎士学園”へと帰還した。
今日から学園は長期休暇だが、僕は寮に残っている。
貧相な村よりずっとマシだからな。
それにしても腹立たしい。
己の特別性を貴族たちに見せつけるはずだったのに、またしても失敗に終わった。
僕は敵の罠にかかり、崖で足を滑らせたのだ。
結果、落下し、試験終了まで眠り続ける羽目に……。
またしても、僕は二番手に甘んじることになってしまったのだ。
――本来なら、聖属性を持つこの僕が一番優遇されるべきなのだ!
ベンチに荒く腰掛ける。
とてもじゃないが眠るような気分にはなれず、今日もイライラと過ごすことになりそうだ。
「こんばんは、フォルト君。よくお会いしますね」
ぶつぶつと毒づいていると、後方から美しい声が聞こえた。
誰かいるとは思わなかったので、心臓が跳ね上がる。
振り返ると、青い髪に赤い瞳の女がいた。
フェイクル――3年生担当の教員だ。
本当に神出鬼没な女だな、こいつは。
「せ、先生こそ、どうしてこんな夜遅くに外にいるんですか?」
「私も夜は眠れないことが多いのですよ。それにあなたの悩みもよくわかります」
「なんでそんなことがわかるんですか。まだ何も言っていないのに」
「実は、私も平民の出身なんです」
「え、そうなんですか!?」
まさか、フェイクル先生も僕と同じ平民だったとは。
急激に親近感が増してくる。
初めて会ったときから、何となく近しいオーラを感じたんだよな。
さすが、僕の冴えわたった直感だ。
「優秀なフォルト君が苦しんでいる様を見るのは、私も心が痛みます。……特別に、次の模擬試験の内容を教えてあげましょうか?」
「ほんとですか! ぜひ、教えてください!」
「もちろん、内緒ですよ。誰にも言わないでくださいね。特定の生徒を優遇したことがバレては問題になりますので」
「大丈夫です! 絶対に誰にも言いません!」
なんたる幸運だ。
僕だけ先に情報を得られるなんて。
これも毎日真面目に、勉学や修行に取り組んでいるからだ。
やっぱり、神様は見ていてくださるんだな。
フェイクル先生は僕の耳元に口を近づける。
柑橘系の爽やかな香水が鼻をくすぐり胸が高まった。
「いいですか、よく聞いてください。次、1年生は冒険者ギルドでの実地訓練を行います」
「冒険者……ギルドですか?」
「はい。学園内での試験を積んだ生徒に、さらに実戦的な経験を積ませるんです」
「なるほど……」
他の生徒は知り得ない情報を、いち早く得る。
思い知ったか、ディアボロ。
これが平民と貴族の差だ。
「それと、あなたの邪魔ばかりするディアボロさんを出し抜く策も授けてあげます」
「ありがとうございます、フェイクル先生! なんて素晴らしい先生でしょうか!」
「これも同じ平民出身の好ですよ。まず、ディアボロさんの実力はかなりのものです。ですので、真正面から戦ってはダメです。地形とモンスターの性質を利用して……に崩れる……特別な魔法陣を……」
そのまま、フェイクル先生から詳細な地理やモンスターの生息地を教えてもらう。
これぞ特別扱いの極み。
自分が他の人間とは違う気持ちになり、テンションが上がる。
――見ていろ、ディアボロ・キングストン。貴族の身分を見せびらしていられるのもそれまでだ。
次こそ僕はお前に勝つ。
再起不能になるほど、絶望的に心が砕けるほど叩きのめす。
そして、僕こそが特別な存在であることを思い知らせてやる。
休みの間、僕はフェイクル先生の下で、あの憎い貴族を貶める作戦を練っていた。
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