第40話:前期終了祝い
「前期終了……おめでとうー!」
「「おめでとう(ございまーす)!」」
みんなで乾杯し、グラスを呷る。
冷えた林檎ソーダが気持ちよく喉を伝った。
ここはキングストン家のリビング。
テーブルの上には、たくさんの菓子や食べ物が並んでいる。
隣にはシエルとマロン。
部屋の中には笑い声が絶えない。
俺たちは今、前期終了を祝っているのだ。
「結局、ディアボロが最後まで独走していたわね。一度くらい抜かせると思ったのに」
「私もまったく敵いませんでした。もっと努力しないといけませんね」
「いやいや、二人だってすごい良い成績だったじゃないか」
前期の最終成績は1位から、俺、シエル、コルアル、マロン、デイジー……の順番だった。
アプリカード先生が引きつった顔で褒めてくれたな。
コルアル(アルコル師匠)は本気出せばもっと高順位を狙えたろうに、試験とかは適当に流していた。
それでも3位なのだから、さすがは“死導きの魔女”だ。
噂をすれば何とやらで、アルコル師匠がやってきた。
「楽しんでいるか~? 前期が終わったからって気を抜きすぎないようにの~」
「こんにちは、アルコル師匠」
「お邪魔してますっ」
アルコル師匠は部屋に来ては、新品のアイスを掻っ攫っていく。
溶けてないのが欲しいから。
……魔法で出せばいいのでは?
「アルコル師匠のおかげで、私たちは強くなれたわよね。感謝の気持ちは忘れないようにしないと」
「いっそのこと、学園でも魔法を見てほしいくらいです」
「いつも一緒にいた気になるのは不思議だわ」
シエルとマロンは、納得した様子でうんうんとうなずく。
だから、コルアルとアルコル師匠は同一人物なんだが。
結局、一度も気づかなかった。
今のところ、アルコル師匠は何も変わったことはしていない。
ただ学校生活を楽しんでいるだけのようだ。
シナリオに悪影響があるかと不安だったが、この調子なら気にしなくていいかな。
「ディアボロ様、シエル様、失礼いたします。おかわりのお菓子でございます」
アルコル師匠が出ていくのと入れ替わりで、ラウームがやってきた。
器用にも両手で四枚のお盆を運ぶ。
その上にはお菓子や食べ物が美しく並べられているも、少しも落ちる気配はない。
さすが、ベテランの執事だな。
ラウームが入ってくると、すぐマロンも手伝っていた。
「ありがとう。どれもおいしそうだな。しかし、ちょっと数が多すぎやしないかね」
「いえ、私たちにとってはちょうどいいわ。足りないくらいよ」
「安心してください、ディアボロ様。全て食べてしまいますので」
お菓子の補給が済むや否や、瞬く間に数が減っていく。
彼女らのお腹はどうなっているのだ。
もうずいぶんと長いこと食べて飲んでいるぞ。
俺はすでに限界が近いのだが……。
「あの……ディアボロ様……」
俺の皿に載せられた菓子類を睨んでいると、ラウームに話しかけられた。
「ん? どうした、ラウーム?」
「大変失礼なお願いがあるのですが……よろしいでしょうか……」
「あ、ああ、俺にできることだったら何でもやるよ」
ラウームはそれこそ大変に真剣な表情で告げる。
な、なんだよ、気になるじゃないか。
何を言われるのかと思い、ゴクリと唾を飲むのだが、ラウームはとんでもないことを言ってきた。
「私に……回復魔法を使ってくださいませんか?」
「え!? どこか具合が悪いのか!?」
回復魔法を使ってくれだとぉ!?
ヤバい、ヤバい、ヤバい!
これは聞き捨てならないぞ。
ここに来て断罪フラグの復活か……!?
「い、いえ、至って健康でありますが……」
「え、健康なの?」
「は、はい……健康は健康でございます……」
驚かすんじゃないよ、まったく。
執事ギャグか?
質の悪い冗談だぜ。
「そうか、心配したよ。体調が悪いときは遠慮なく言ってくれよな」
「は、はい…………失礼します……」
なぜか、ラウームはしょんぼりしながら部屋を出る。
やっぱり、どこか悪いのか?
不安になるような仕草はしないでくれ。
ラウームが見えなくなると同時に、今度は父上が入ってきた。
すかさず、シエルもマロンもピシッと姿勢を正し、起立して出迎える。
父上は手で座るように合図を送った。
「二人とも座っていてくれ。シエル嬢、よく来てくれたな。マロンも今日は休みなんだから、もっと楽にしなさい」
父上が言い、室内の空気は和らぐ。
だが、俺は幾分かドキドキしながら言葉を待っていた。
「ディアボロ……学校は楽しいか?」
「は、はい、父上のおかげで楽しく過ごさせていただいておりますっ」
もう親子の確執は消失したものの、何となく気まずいというか近寄りがたい気持ちになる。
父上はジッと俺を見ていた。
相変わらず威圧感が半端ないが、その目の奥には優しさが映る。
「……これからも頑張れ」
ボソりと呟くと、父上は部屋から出て行った。
心の中で、静かにそして強く決心する。
――期待してくれる父上のためにも、もっと頑張らないとな。
いつの間にか、たくさんあった食べ物や菓子は姿を消し、ソーダのボトルも空になっていた。
全部食べてしまったようだ。
「さて、片付けは後にして一度寝室へ行きましょうか」
「え」
「そうですね。お休みはたっぷりありますが、今日からたっぷり楽しみましょう」
「え」
アプリカード先生の目と耳を気にすることはない。
……いや、気にした方がいいのか?
大いに遊び、学び、責めを受け……後期の始業が近づいていった。
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