第4話:ディアボロ様は変わられた(Side:マロン①)
ディアボロ様は変わられた。
ある日突然。
私は今でも鮮明に覚えている。
一人じゃ持てないほどの重い荷物を運ばされていたときだった。
ディアボロ様はいつものように高笑いした後、鏡を見て止まった。
しばらく呆然としたかと思うと、悲鳴を上げてご自身の顔を眺める。
あんなにうろたえていたディアボロ様を見るのは初めてだった。
あの日以来、丸っきり別人になられた。
使用人の給料を増やしてくれたし、さらには仕事量まで減らしてくれた。
しかも、あの公爵様に直接ご相談してくれたのだ。
メイドの目から見ても親子仲は最悪だった。
今までのディアボロ様は話そうともしなかったのに……。
私たちのために、覚悟を決めてくれたのだろう。
おかげで、みんなのびのびと働けている。
離れの使用人たちは、ほとんどがディアボロ様に対する評価を改めた。
前より優しい、いつも褒めてくれる、使用人を尊重してくれる素晴らしい善人になってくれた……と。
こんな充実した日々が来るなんて、私にはとうてい信じられなかった。
お父さんは何か裏があるんじゃないかと、まだ警戒しているようだったけど、私にはわかる。
ディアボロ様は本当に変わったんだ。
もう前みたいな暴虐令息には戻らない。
目つきもすごく柔らかくなって、人となりもずいぶんと穏やかになられた。
敬称だって、すでに二つも削除しているのだ。
前は俺様様だったけど、今ではただ俺とご自身を呼んでいた。
原因はわからないけど、ディアボロ様が変わられたのは事実だ。
昔は……正直恨んでいた。
私は生まれつき身体が弱い。
動きすぎると咳が出る持病もあり、メイドの仕事をするので精一杯だった。
以前のディアボロ様はそんな私をいじめるように、あえて色んな仕事を任せてきた。
重い荷物の運搬や、埃っぽい部屋の掃除、夜遅くまでの水仕事……。
私の身体はもう限界だった。
倒れそうになったときディアボロ様が改心されたのは、もしかしたら何か意味があるのかもしれない。
ディアボロ様が変わったと確信したのは、何も使用人への対応や、言葉遣いだけじゃない。
毎日、血の滲むような魔法の修業をされているのだ。
お師匠様は、あの“死導きの魔女”と呼ばれるアルコル様。
そして、修業場所は、キングストン家に代々伝わる“超成長の洞窟”。
私は外から眺めているだけだけど、どれだけ苦しい修行かわかる。
いつも全身から汗が噴き出ているし、食事の度にフラフラだった。
本当に限界の限界まで修行されている。
おまけに、アルコル様はディアボロ様のお尻に執着しているみたいで、とにかくお尻を叩かれていた。
でも、ディアボロ様は楽しそうなのだ。
あんなに厳しくて辛そうな修行なのに……。
一週間も経った頃、私は聞いてみた。
どうして、闇属性で回復魔法を習得しようとしているのですか? と。
そんなの、一般的に不可能とされている。
だって、世界最高峰レベルの闇属性の使い手のアルコル様ですら回復魔法は使えないのだから。
何がディアボロ様をあそこまで突き動かしているのか知りたかった。
「マロンの病気を治したいんだ」
その言葉を聞いたとき、この人は本気なんだと思った。
本気の本気で私の病気を治そうとしてくれているんだ……。
今まで感じたことがないほどの嬉しさで胸がいっぱいになった。
このディアボロ様を見れば、お父さんもわかってくれると思う。
元気になったら私も魔法を特訓したいな。
もっと強くなってディアボロ様の役に立ちたい……いや、立つんだ。
メイドとしてだけじゃなく、一人の女としても……。
そして、ディアボロ様のお尻も守って差し上げたい。
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