第34話:学園会議……への出席
「それでは、ディアボロさん。もう一度最初から説明してもらえますか?」
「は、はい、一般的に闇属性で回復魔法を習得するのは不可能とされていますが、極め抜くと習得できるんです。俺は学園入学前の1年間で必死に修行して……」
俺は今、大会議室にいる。
学園の。
周りにはアプリカード先生やレオパル先生を始めとした、たくさんの教員たち。
いずれもゲームで出てきた強力な先生の面々だ。
「闇属性で回復魔法を使う人間を、僕は初めて見た。入学試験から思っていたけど、君には大変に興味を惹かれるね。ところで、回復魔法はどれくらいの魔力を消費するんだい?」
「しかも、こいつは普通に攻撃魔法も使えるからな。聖属性なら話は別だが、闇属性でそんな器用な芸当ができるとは……どんな修行をした? 教えろ」
「私たちは……歴史的な瞬間に立ち会っていると……言わざるを得ません……身体の隅々まで……調べさせてもらえませんか……?」
四方八方から質問が飛んでくる。
どうしてこんな罰ゲームみたいな状況にあるかというと……。
「まぁまぁ、皆の者。そんなに詰め寄ってはディアボロが可哀想じゃ。一つずつ教えてもらおう」
長い白髭を蓄えたおじいさんが喋り出すと、先生たちは話すのを止めた。
――クルーガー・ナウレッジ。
史上最強の魔法使いと評される、“エイレーネ聖騎士学園”の学園長だ。
まさか、この俺がこんな早くに遭遇することになるとはな。
「ディアボロよ、まずは学園を代表してお礼を言わせてもらうぞよ。よくぞ、クララ姫を救ってくれた」
「あ、いえ……」
そう、俺がクララ姫の“落命の呪い”を解呪したからだ。
単なる回復魔法を使っただけだが、原作(フォルト君)以上の大事になってしまった。
俺の前評判もあったせいだろう。
「クララ姫が受けた呪いは、今までの呪いとはまるで性質が違う。国中のどんな魔法使いでも医術師でも治すことはできなかった。このワシですらな…………いったいどんな魔法を使ったんじゃ?」
クルーガー先生は口髭を撫でながら話す。
子どもに絵本の読み聞かせをしているような穏やかな口調だ。
だが、その目はあらゆる謎も異変も見逃さない気迫が伝わってくる。
あまりの緊張感にごくりと唾を飲んだ。
「ふ、普通の回復魔法です」
「あれが普通とな? ワシから見たら普通とはとても言えんがの。やっぱり、お主は面白いヤツじゃ」
「真面目に答えてください、ディアボロさん。私たちは誰も“落命の呪い”を癒すことはできませんでした。教員たるもの、あなたが何をしたのか知っておく必要があるのです。それくらいはわかるでしょう?」
クルーガー先生はホッホッホッと笑っているが、アプリカード先生にはきつく問い詰められた。
黒髪の痩せたイケメン先生だけは優しい笑顔を向けてくれているものの、他の先生たちはみな厳しい表情だ。
特に、スキンヘッドの軍人みたいな男の先生がめっちゃ怖かった。
「ま、まず、“落命の呪い”は魔王が封印された後に生まれた新世代の魔族が開発した呪いです。そのため、従来の術式では癒せないのです。ですが、闇属性を極めることで習得した回復魔法は、問答無用で癒す力があります」
そのまま、攻略サイトに書いてあった内容を話す。
前世知識様様だ。
入院生活でゲームをやり込んだおかげだな。
クルーガー先生を始めとして、他の先生たちは興味深そうに聞いていた。
「まさか……“落命の呪い”が新世代の呪いとはワシも知らんかったぞ。最近、魔族の情勢を探るのも困難になってきたからの。これは大変貴重な情報じゃ」
「学園長、さっそく王宮に報告しましょう。騎士団にも進言した方がよろしいかと。調査態勢も変えた方がいいはずです」
「まさか、魔族が新しい呪いを開発していたとは俺も思わなかったぜ。まったく、小癪なヤツらだ」
しばらく、先生たちは各々相談し合っていた。
この世界では、魔族と人間は敵対関係にある。
封印された魔王を完全に倒せるような人材を育て、人類と魔族の争いに終止符をうつ――それが、“エイレーネ聖騎士学園”の大きな目標だ。
まぁ、本来ならフォルト君がその人材となるわけだが、大丈夫かな。
なんか色々危なっかしいし……。
そのようなことを想っていたら、クルーガー先生に問いかけられた。
「ところで、ディアボロ。お主は何でそんなことを知っているんじゃ?」
「……え?」
「さっきも言ったが、新世代の魔族などワシですら聞いたこともなかった。一応、こんなんでも学園長だからの。情報収集にはそれなりの自負があるのじゃが……」
会議室にいる皆さんが一斉に俺を見る。
――な、なんて言えばいいんだ?
実際に魔族の情報を調べたわけではない。
攻略サイトを見ただけだ。
しかし、ネットで見た攻略サイトがうんぬん……とかは、口が割けても言えない。
転生したことが知られたら、肉体がバラされる気がする。
丸眼鏡をかけたボサボサ頭の女の先生に。
し、仕方がない、適当に誤魔化せ、ディアボロ!
「ま、まぁ、何といいますか、神のお告げがあったというか夢に見たというか……」
「「なに!?」」
適当に言ったら、先生たちの顔つきが変わった。
「神のお告げ……!? 夢に見た……!? まさしく、伝承の通りじゃないか……!?」
「マジかよ……じゃあ、あいつが……」
「もしかしたら、彼が聖騎士の末裔なのでは……」
先生たちは相談を始めるわけだが、小声でよく聞き取れない。
いや、伝承とか末裔とか一部の単語が聞こえる。
なんか、どこかで……あっ!
ゲームの記憶は思い出した瞬間、心臓がドキリと脈打った。
――さっきのはフォルト君が言うセリフだ。
そうだよ、原作ではクララ姫の呪いを解いた主人公(フォルト君)は、今の俺みたいに会議に出席する。
そこで、神のお告げだとか夢に見たとか話して、彼の真の素性が徐々に明らかとなるのだ。
も、もしや、これは……。
――……またシナリオぶっ壊しちまった?
ごめん、フォルト君。
でも、わかってほしい。
しょうがなかったんだ。
何はともあれ、さっさと退散しよう。
「あ、あの~、もう帰ってもよろしいでしょうか。すみません、ちょっと疲れてしまいまして……」
「ああ、そうじゃの。少々引き留めすぎてしまったわい。試験でお疲れのところ悪かった。今日はもう休んでくれ」
話が大きくなる前に撤退する。
そそくさと出口へ向かった。
先生たちの視線が突き刺さるが、後ろは見ないようにしよう。
「ちょっと待ってくれ、ディアボロ」
「はい、なんでしょうか」
扉に手をかけようとしたとき、クルーガー先生に呼び止められた。
まだ何か質問があるのかな……と思うも、まったく予想と違う話をされる。
「夜の方もほどほどにしておくんじゃぞ。あまり若いうちからはっちゃけると後がキツいぞ? 人生は長いぞよ」
「…………え?」
「健康的なのは良いことじゃが、夢中になって学業が疎かにならんようにの」
笑いを堪える先生たち(アプリカード先生以外)。
その反応を見ていると、じわじわと心が焼け焦げていく。
――クルーガー学園長にまで、知られていたのか? 毎晩の営みを……? 俺の痴態を……?
「う…………うわああああああ!」
恥ずかしさに身を焦がしながら、大会議室を後にする。
走って走っても羞恥心が消えることはなかった。
ただ一つ、俺は強く決心する。
――少なくとも今日は営みを遠慮願いたい!
□□□
「さて、ディアボロ。わかっているわよね?」
「勝手に女の子……しかも王女様に手を出すなんて……嬉しそうな声まで上げさせて……」
「ち、違うんだ! あれは違うんだって! 回復魔法を使うと、どうしてもああなっちゃって!」
ついさっき決心したばかりなのに、さっそく操の危機にあった。
腕と足をベッドに縛られ、身動きがとれない。
身に纏うは頼りないタオルが一枚だけ。
「何回で搾り切れるかしら」
「どちらが先が勝負しましょう、シエル様」
「待っ……! 二人はまずい……! んはぁっ……! あああ~!」
外にはアプリカード先生がいそうな気がしたが、耐えかねて嬌声を上げてしまった。
右から左から押し寄せる快楽の波。
抗えるはずもなく、胸の底から吐息が漏れる。
今日もまた、俺は朝まで寝れないのであった。
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