第33話:一件落着……?
「どうしてくれるんだ、ディアボロォォォオ! クララさんが倒れてしまったではないかぁぁああ! 体調が悪いことを忘れたのかぁぁぁあ!」
「あのなぁ……」
フォルト君は叫び、怒号を上げ、俺を糾弾する。
お前が色々と無理させるからだろうが。
「君のせいだと言っているんだ、ディアボロォォォオ!」
「わかったから、ちょっと静かにしていてくれ」
責任転嫁してくるフォルト君を退け、クララ姫の元へ駆け寄る。
彼女の身体は黒い痣が浮かびつつあった。
“落命の呪い”の症状だ。
「っ……ディアボロさん……すみません、ご迷惑をおかけして……」
「謝らないでください。あなたが悪いわけではないのですから」
「僕が悪いというのかぁぁぁあ、ディアボロォォォオ!」
「頼むから静かにしてくれ……」
フォルト君は俺の耳元で騒ぐ。
原作主人公とか関係なく、とにかく静かにしてほしい。
「“落命の呪い”は俺が癒します。今すぐ楽にして差し上げますからね」
「い、いくらあなたでも無理ですわ、ディアボロさん……国内の誰も解呪できなかった呪いです……それに、下手したらあなたにも呪いが……」
クララ姫は息も絶え絶えになりながらも、俺の身を案じてくれた。
たしかに、魔族の呪いは強力だが、原作なら解放度★1の回復魔法で癒せた。
それほどフォルト君は特別な存在なのだが、今はそんなことはどうでもいい。
俺の回復魔法は解放度★10だから、治せると思うんだ。
「大丈夫です。俺のことは気にしないでください。では、いきますよ……《闇の……」
「僕のクララさんに近寄るなぁぁぁあ! <聖弾>!」
「うわっ、や、やめろ! 危ないだろうが!」
フォルト君が何発も<聖弾>を放ってくる。
こんなときに何だよ、こいつは。
別に大したダメージは食わらないものの、クララ姫に当たりそうで動くに動けない。
「フォ、フォルトさん……やめてください……ディアボロさんを攻撃しないで……」
「クララさん! 今、そのケダモノを追い払いますからね! 《聖弾》! 《聖弾》! 《聖弾》~!」
フォルト君は構わず、連続で攻撃を続ける。
ああ、もう埒が明かん。
「すまん、ちょっと気絶していてくれ……! 《闇・衝撃波》!」
「……ぉぶっ!」
黒い光線がフォルト君の頭を射抜く。
件の主人公様はぐたりと倒れた。
「ディ、ディアボロさん……今のは……?」
「暴走しているようなので気絶してもらいました」
「そうですか……騒がしかったですものね……」
クララ姫もフォルト君はうるさい認識のようだった。
妨害もなくなったので、心置きなく治癒できるぞ。
「では、回復魔法を使いますからね。ジッとしていてください。《闇の……」
「せ……先生を呼んだ方が……いいと思うのですが……それに……どんなに有名な医術師でも……治せなかった呪いですよ……危険です」
癒そうとしたら、クララ姫が俺の手を退けた。
彼女は治さなくていいと言っているが、そういうわけにはいかない。
俺の運命がかかっているのだ。
「いえ! あなたの呪いは俺が治したいんです! お願いですから、俺に治させてください! 死んでも治します!(断罪フラグを回避して安心できる将来を迎えるために!)」
「……ディアボロさん……」
クララ姫は苦しいだろうに、顔を赤らめながら笑みを浮かべる。
俺を心配させないためだろうか。
とはいえ、先生たちには知らせておくべきだな。
緊急連絡用に配られた魔石を割る。
小さな花火みたいな光が打ちあがった。
上空で弾け、救難信号を知らせる。
これで大丈夫なはずだ。
「それではクララ姫、動かないでくださいね……《闇の癒し》!」
「っ! …………あぁ~ん!! くぅうっ! …………くぁあっ! あっ……はっ……!」
クララ姫は嬌声を上げられる。
なかなかに大きな声で。
森の中で二人っきり(フォルト君は気絶中)というシチュエーションかつ、彼女の恍惚とした表情もあって、いかがわしさがマックスだ。
シエルとマロンに見られたら殺されるな。
……別に悪いことは何もしていないのだが、チームが分かれて良かったと思う。
俺が魔力を込めるたび、呪いの痣は薄くなっていく。
やはり、解放度★10まで到達すると、回復魔法もとんでもなく強いらしい。
「ど、どうですか、クララ姫。良くなっている気がしますか?」
「気持ちいいです……」
またそんな直接的な表現を。
ますますシエルとマロンがいなくて良かった。
……いや、別に悪いことをしているわけではなくてだな。
「う……嘘……呪いの痣が消えていきますわ! 今まで誰も治せなかったのに……!」
寝ていたクララ姫は自分の腕や足の変化に気づくと、驚きの声を上げた。
黒くて不気味な痣はもうすっかり消え、彼女の美しい肌が露になっている。
痣が完全に消えたところで魔法を解除。
クララ姫はもうすっかり身体を起こしていて、青ざめていた顔にも血の気が戻っている。
目にも力が溢れているし、呪いは消滅したと考えていいだろう。
信じられない様子で、クララ姫は自分の身体を見ていた。
「……とまぁ、こんな感じですね。俺の回復魔法が効いてくれてよかったです」
「ディアボロさん! 本当にありがとうございます! あなたは命の恩人ですわ! なんてお礼を申し上げたらいいのでしょう!」
「あっ、ちょっ、クララ姫! おやめください!」
回復が終わるや否や、クララ姫は思いっきり抱き着いてきた。
シエルやマロンとはまた違った感触。
何がとは言わないが。
さっきから冷や冷やする場面が続出だな。
まぁ、別に悪いことはしていないわけだが。
やたらと強く抱き着いてくるクララ姫を引き剥がしていると、上の方から慌ただしい声が聞こえてきた。
「何事ですか!? もしかして、クララさんの容体に何かありましたか!?」
「おい、何があった。怪我人か? 誰も死んでないだろうな」
アプリカード先生が箒で飛んでいて、後ろにはレオパル先生も乗っている。
シュタッと地面に降りると、真っ先にクララ姫の元へ駆け寄ってきた。
「クララさん、大丈夫ですか!? 呪いが悪化したんじゃ……!」
「医術師は学園に待機しているぞ」
「大丈夫ですわ、アプリカード先生、レオパル先生。私は問題ありません。いえ、問題ないどころか…………ディアボロさんが“落命の呪い”を解いてくれたんです!」
「「!?」」
アプリカード先生とレオパル先生は、驚愕の表情でクララ姫の身体を確認する。
しばらく彼女の身体を診ていたが、やがて安心した様子で語った。
「た、たしかに、痣が消えていますね……で、ですが、まさかこんなことがあり得るなんて……これは……まさしく奇跡です。ディアボロさんは奇跡を起こしたとしか言いようがありません」
「ディアボロ……貴様はいったいどれほどの力を持っているんだ……。こんな偉業は“エイレーネ聖騎士学園”始まって以来だ。学園長にも報告しなければ……」
二人の先生は、ため息を吐きながら呟く。
彼女らの評価も、本来なら原作主人公(フォルト君)がもらうはずだったんだよな。
悪役の俺が褒められるとは……なんだか不思議な感じだ。
そういえば、フォルト君は大丈夫かな……と思ったとき、当の彼はガバッと目覚めた。
「アプリカード先生ぃぃぃい! ディアボロがクララさんを虐めてますよぉおお! あっ、レオパル先生ぃぃぃい! ディアボロを捕まえてくださいぃぃい!」
「フォルト、落ち着け。クララも驚いている」
「何があったのかわかりませんが、まずは落ち着いてください。ディアボロさんは途方もない偉業を達成したんです」
アプリカード先生とレオパル先生が冷静に話すも、フォルト君は聞く耳を持たない。
前世では自分が彼をプレイしていたわけだが、なんか将来が不安になる。
不意に、ガサリ……と何者かが草むらから現れた。
こ、今度はなんだ?
ドキドキと心臓が脈打ちも、見知った女性だった。
深い藍色の髪をした女の子に、ウェーブがかかった栗色の髪の毛の女の子。
「シ、シエル! それにマロン!」
なぜこの二人がこんなところに。
「静かにあなたの後をつけていたの」
「え」
「私たちがディアボロ様から一時も目を離すわけがありません」
「え」
二人は揃って告げる。
衝撃的なセリフを。
つ、つまり、クララ姫を癒しているところを見られ……。
「ディアボロ……? どういうことかしら……?」
「何をされていたのでしょうか……? 私たちの目を盗んで……」
「あ、いや、違うんです! これは違うんです! 回復魔法を使うと、どうしてもこうなっちゃって……!」
必死にシエルとマロンを宥める。
クララ姫は静かに、神様も惚れるような美しい笑顔を向けてくれた。
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