表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/96

第33話:一件落着……?

「どうしてくれるんだ、ディアボロォォォオ! クララさんが倒れてしまったではないかぁぁああ! 体調が悪いことを忘れたのかぁぁぁあ!」

「あのなぁ……」


 フォルト君は叫び、怒号を上げ、俺を糾弾する。

 お前が色々と無理させるからだろうが。


「君のせいだと言っているんだ、ディアボロォォォオ!」

「わかったから、ちょっと静かにしていてくれ」


 責任転嫁してくるフォルト君を退け、クララ姫の元へ駆け寄る。

 彼女の身体は黒い痣が浮かびつつあった。

 “落命の呪い”の症状だ。


「っ……ディアボロさん……すみません、ご迷惑をおかけして……」

「謝らないでください。あなたが悪いわけではないのですから」

「僕が悪いというのかぁぁぁあ、ディアボロォォォオ!」

「頼むから静かにしてくれ……」


 フォルト君は俺の耳元で騒ぐ。

 原作主人公とか関係なく、とにかく静かにしてほしい。


「“落命の呪い”は俺が癒します。今すぐ楽にして差し上げますからね」

「い、いくらあなたでも無理ですわ、ディアボロさん……国内の誰も解呪できなかった呪いです……それに、下手したらあなたにも呪いが……」


 クララ姫は息も絶え絶えになりながらも、俺の身を案じてくれた。

 たしかに、魔族の呪いは強力だが、原作なら解放度★1の回復魔法で癒せた。

 それほどフォルト君は特別な存在なのだが、今はそんなことはどうでもいい。

 俺の回復魔法は解放度★10だから、治せると思うんだ。


「大丈夫です。俺のことは気にしないでください。では、いきますよ……《闇の……」

「僕のクララさんに近寄るなぁぁぁあ! <聖弾>!」

「うわっ、や、やめろ! 危ないだろうが!」


 フォルト君が何発も<聖弾>を放ってくる。

 こんなときに何だよ、こいつは。

 別に大したダメージは食わらないものの、クララ姫に当たりそうで動くに動けない。


「フォ、フォルトさん……やめてください……ディアボロさんを攻撃しないで……」

「クララさん! 今、そのケダモノを追い払いますからね! 《聖弾》! 《聖弾》! 《聖弾》~!」


 フォルト君は構わず、連続で攻撃を続ける。

 ああ、もう埒が明かん。


「すまん、ちょっと気絶していてくれ……! 《闇・衝撃波ダークネス・ショックウェーブ》!」

「……ぉぶっ!」


 黒い光線がフォルト君の頭を射抜く。

 件の主人公様はぐたりと倒れた。


「ディ、ディアボロさん……今のは……?」

「暴走しているようなので気絶してもらいました」

「そうですか……騒がしかったですものね……」


 クララ姫もフォルト君はうるさい認識のようだった。

 妨害もなくなったので、心置きなく治癒できるぞ。


「では、回復魔法を使いますからね。ジッとしていてください。《闇の……」

「せ……先生を呼んだ方が……いいと思うのですが……それに……どんなに有名な医術師でも……治せなかった呪いですよ……危険です」


 癒そうとしたら、クララ姫が俺の手を退けた。

 彼女は治さなくていいと言っているが、そういうわけにはいかない。

 俺の運命がかかっているのだ。


「いえ! あなたの呪いは俺が治したいんです! お願いですから、俺に治させてください! 死んでも治します!(断罪フラグを回避して安心できる将来を迎えるために!)」

「……ディアボロさん……」


 クララ姫は苦しいだろうに、顔を赤らめながら笑みを浮かべる。

 俺を心配させないためだろうか。

 とはいえ、先生たちには知らせておくべきだな。

 緊急連絡用に配られた魔石を割る。

 小さな花火みたいな光が打ちあがった。

 上空で弾け、救難信号を知らせる。

 これで大丈夫なはずだ。


「それではクララ姫、動かないでくださいね……《闇の癒し》!」

「っ! …………あぁ~ん!! くぅうっ! …………くぁあっ! あっ……はっ……!」


 クララ姫は嬌声を上げられる。

 なかなかに大きな声で。

 森の中で二人っきり(フォルト君は気絶中)というシチュエーションかつ、彼女の恍惚とした表情もあって、いかがわしさがマックスだ。

 シエルとマロンに見られたら殺されるな。

 ……別に悪いことは何もしていないのだが、チームが分かれて良かったと思う。

 俺が魔力を込めるたび、呪いの痣は薄くなっていく。

 やはり、解放度★10まで到達すると、回復魔法もとんでもなく強いらしい。


「ど、どうですか、クララ姫。良くなっている気がしますか?」

「気持ちいいです……」


 またそんな直接的な表現を。

 ますますシエルとマロンがいなくて良かった。

 ……いや、別に悪いことをしているわけではなくてだな。


「う……嘘……呪いの痣が消えていきますわ! 今まで誰も治せなかったのに……!」


 寝ていたクララ姫は自分の腕や足の変化に気づくと、驚きの声を上げた。

 黒くて不気味な痣はもうすっかり消え、彼女の美しい肌が露になっている。

 痣が完全に消えたところで魔法を解除。

 クララ姫はもうすっかり身体を起こしていて、青ざめていた顔にも血の気が戻っている。

 目にも力が溢れているし、呪いは消滅したと考えていいだろう。

 信じられない様子で、クララ姫は自分の身体を見ていた。


「……とまぁ、こんな感じですね。俺の回復魔法が効いてくれてよかったです」

「ディアボロさん! 本当にありがとうございます! あなたは命の恩人ですわ! なんてお礼を申し上げたらいいのでしょう!」

「あっ、ちょっ、クララ姫! おやめください!」


 回復が終わるや否や、クララ姫は思いっきり抱き着いてきた。

 シエルやマロンとはまた違った感触。

 何がとは言わないが。

 さっきから冷や冷やする場面が続出だな。

 まぁ、別に悪いことはしていないわけだが。

 やたらと強く抱き着いてくるクララ姫を引き剥がしていると、上の方から慌ただしい声が聞こえてきた。


「何事ですか!? もしかして、クララさんの容体に何かありましたか!?」

「おい、何があった。怪我人か? 誰も死んでないだろうな」


 アプリカード先生が箒で飛んでいて、後ろにはレオパル先生も乗っている。

 シュタッと地面に降りると、真っ先にクララ姫の元へ駆け寄ってきた。


「クララさん、大丈夫ですか!? 呪いが悪化したんじゃ……!」

「医術師は学園に待機しているぞ」

「大丈夫ですわ、アプリカード先生、レオパル先生。私は問題ありません。いえ、問題ないどころか…………ディアボロさんが“落命の呪い”を解いてくれたんです!」

「「!?」」


 アプリカード先生とレオパル先生は、驚愕の表情でクララ姫の身体を確認する。

 しばらく彼女の身体を診ていたが、やがて安心した様子で語った。


「た、たしかに、痣が消えていますね……で、ですが、まさかこんなことがあり得るなんて……これは……まさしく奇跡です。ディアボロさんは奇跡を起こしたとしか言いようがありません」

「ディアボロ……貴様はいったいどれほどの力を持っているんだ……。こんな偉業は“エイレーネ聖騎士学園”始まって以来だ。学園長にも報告しなければ……」


 二人の先生は、ため息を吐きながら呟く。

 彼女らの評価も、本来なら原作主人公(フォルト君)がもらうはずだったんだよな。

 悪役のディアボロが褒められるとは……なんだか不思議な感じだ。

 そういえば、フォルト君は大丈夫かな……と思ったとき、当の彼はガバッと目覚めた。


「アプリカード先生ぃぃぃい! ディアボロがクララさんを虐めてますよぉおお! あっ、レオパル先生ぃぃぃい! ディアボロを捕まえてくださいぃぃい!」

「フォルト、落ち着け。クララも驚いている」

「何があったのかわかりませんが、まずは落ち着いてください。ディアボロさんは途方もない偉業を達成したんです」


 アプリカード先生とレオパル先生が冷静に話すも、フォルト君は聞く耳を持たない。

 前世では自分が彼をプレイしていたわけだが、なんか将来が不安になる。

 不意に、ガサリ……と何者かが草むらから現れた。

 こ、今度はなんだ?

 ドキドキと心臓が脈打ちも、見知った女性だった。

 深い藍色の髪をした女の子に、ウェーブがかかった栗色の髪の毛の女の子。


「シ、シエル! それにマロン!」


 なぜこの二人がこんなところに。


「静かにあなたの後をつけていたの」

「え」

「私たちがディアボロ様から一時も目を離すわけがありません」

「え」


 二人は揃って告げる。

 衝撃的なセリフを。

 つ、つまり、クララ姫を癒しているところを見られ……。


「ディアボロ……? どういうことかしら……?」

「何をされていたのでしょうか……? 私たちの目を盗んで……」

「あ、いや、違うんです! これは違うんです! 回復魔法を使うと、どうしてもこうなっちゃって……!」


 必死にシエルとマロンを宥める。

 クララ姫は静かに、神様も惚れるような美しい笑顔を向けてくれた。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!

評価は下にある【☆☆☆☆☆】をタップorクリックするだけでできます。

★は最大で5つまで、10ポイントまで応援いただけます!

ブックマークもポチッと押せば超簡単にできます。


どうぞ応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ?聖属性の生徒いないんだっけ?他に
[気になる点] 解放度★1の回復魔法で癒せた。 聖属性 学年に1人はいるんですよね? 他のヒロインもだけど 先輩や卒業生(聖属性貴族)に王命、公爵命令で治療して貰わなかったの何故? 爵位的にディ…
[一言] この主人公君、なんで生活させてもらえてるの?ただの「ちょっと珍しい属性が使える」だけの平民でしょ?不敬とかいう範疇とうの昔に超えてるよね?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ