第30話:あいつはすげえ(Side:バッド①)
ディアボロとは、この学園で初めて会った。
あのキングストン公爵家の令息だ。
会ったことがなくても、その悪評はよく知っていた。
使用人を殴り、蹴り、挙句の果てには婚約者を歩行不能にした暴虐令息……。
噂を聞いただけでイラついたぜ。
学園で会ったら、根性を叩き直してやろうと思っていたんだ。
ところがどうだ。
学園でのあいつは、暴虐令息なんてあだ名がつくようなヤツじゃなかった。
授業態度は真面目だし、他人に乱暴を働くこともない。
周りにいる女たちも、ディアボロとは嬉しそうに話す。
あの、足が不自由になった婚約者さえ。
少なくとも、俺が見ている範囲ではあいつは善人だ。
噂は嘘だったのか?
――いや……真実だったんだろう。
噂が蔓延っていたのは学園入学前の話だ。
もしかしたら、ディアボロは変わったのかもしれない。
きっとそうだ。
俺はその過程を見たわけではないが、そのように強く思える。
感じると言った方が正しいか。
あいつが纏う魔力のオーラは、学生とは思えないほど練り上げられている。
体だって細身だが、引き締まった筋肉が隠れていることがわかった。
――この男はただ者ではない。かといって、暴虐令息でもない。
それが俺の評価だ。
さらに、ディアボロはかなりの努力家だと知った。
あいつは毎朝やたらと疲れている。
まるで精気を搾りとられたスケルトンのように……。
きっと、寝る間も惜しんで猛烈な訓練を積んでいるに違いない。
俺も負けてられんな。
そしてもう一つ、決して見逃せない物をあいつは持っていた。
やたらと女にモテるのだ。
婚約者のシエルはもちろんのこと、メイドのマロンもあいつにベッタリだ。
デイジーとかいう女も、ディアボロをジッと見ることが多いよな。
まったく、羨ましい限りだぜ。
俺はあいつからモテる秘訣を絶対に聞き出す。
ディアボロがただの学生ではないと確信したのは、とある試験のときだった。
ダンジョン“死者の石窟”からの脱出試験だ。
俺はフォルトとペアを組み、出口を目指していた。
あいつは女と組めなくて、ずっと文句を言っていたな。
大丈夫、俺もだ。
しばらく進むと、ディアボロとマロンに遭遇した。
なぜかフォルトがキレて、それを止めていたら今度は天井が落ちてきた。
土煙から現れたのは、アイアンゴーレム。
Aランクモンスターだ。
情けないことに、俺は足が震えちまった。
いくら修行を積んでいても、実際に見るモンスターは怖かったんだ。
それがAランクともなれば尚更な。
試験開始時で抱いていた“どんなモンスターもぶちのめしてやる”……なんて気持ちは、どっか行っちまってた。
さらに悪いことに、フォルトが先走ってアイアンゴーレムを分裂させた。
ああいうのを絶望って言うんだろうな。
俺は震えることしかできなかった……。
それなのに、ディアボロは真正面から突っ込んだんだ。
冷静に魔法で姿を消し、しかも一太刀で倒した。
信じられるか?
とても1年生のすることじゃねえよ。
――ディアボロ、やっぱりお前はすげえ。
学園での目標ができた。
これくらい俺も強くなりてえ。
待ってろ、ディアボロ。
もっと努力して、すぐに追いついてやるからな。
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