第26話:ダンジョン脱出試験
「くらえ! 《闇矢の嵐》!」
「《業火の舞》! ……あびゃあああ! モンスターの焼ける臭いしゅきいいい!」
『『グアアアア!』』
数体のグレムリンは俺の放った黒い矢で貫かれ、マロンの豪炎で焼かれていく。
狭い回廊に肉の焦げた臭いが充満するが、彼女はいたく喜んでいた。
なんでも、モンスターを殺した実感が湧いて嬉しいらしい。
〔三体のグレムリンを撃破。ディアボロ・マロンチームに、合計600ポイント加算されます〕
手の紋章からは声が聞こえる。
いいぞ、順調にポイントを稼げていた。
「ディアボロ様、私から離れないでくださいね。おいて行かないでください」
「大丈夫だよ。そんなことするわけないじゃないか。だから、もう少し離れてもらえるとありがたいんだけど。シエルに見つかったら夜がどうなることか」
「より激しくなりそうですね、ふふっ」
俺たちは今、うす暗い通路を歩いている。
ジメジメとしており、薄暗く、床や壁はひび割れた石作り。
学校の廊下ではない。
ここは全部で五層のダンジョン――“死者の石窟”だ。
“エイレーネ聖騎士学園”が管理するダンジョンの一つである。
なぜ、俺たちがそんなところにいるかというと、学園の授業が関係しているのだ。
◆◆◆
「では、みなさん。今日の授業もまた実地訓練です。概要を説明するのでよく聞いてください」
教室にアプリカード先生の声が響く。
実地訓練か……だとすると、あのイベントだろうな。
「特にディアボロさん、あなたはよく聞いてくださいね」
「あっ、はい、すみません」
ぼんやり前世の記憶をたどっていたら、アプリカード先生に注意されてしまった。
どうにかして高評価を得たいものだ。
「今回、皆さんに挑んでいただくのはダンジョンからの脱出です」
「「ダンジョンからの……脱出……?」」
アプリカード先生の言葉に、生徒たちは揃って疑問の声を出す。
普通ダンジョンと言ったら、上層から下層へ向かうことを想像する。
案の定、シエルたちもポカンとしていた。
「脱出ってどういうことかしら」
「入り口から下の方に行くのとは違うのでしょうか」
実は、これも原作の序盤イベントなんだよな。
“エイレーネ聖騎士学園”は高名な学校ということもあり、ダンジョンを何個も管理している。
ランダムで一つ選ばれ、脱出時間を競い合うのだ。
アプリカード先生は地図の映像を空中に出す。
「ご存じの通り、我が学園はダンジョンを何個も管理しています。将来、皆さんは遭難した冒険者の救援に向かう機会もあるでしょうから、実地訓練を積んでください。今回の試験も二人一組で行います。もちろん、親善試合の選抜試験でもあります。脱出時間とモンスターを倒したポイントで、順位が決まりますのでそのつもりで」
教室はざわつく。
原作はやりこみ要素もそれなりにあって、最速を競い合うスレもあったりしたんだよな。
「今回もディアボロと一緒だったらいいな。というより、24時間傍にいなきゃ気が済まないのだけど、どうすれば達成できるかしら」
「そうですねぇ。でも、私も一緒にいたいですし……そうだ、半分こにするというのはどうですか?」
「良い案ね、さすがマロン」
「え」
戦慄の会話を聞きながら、前方に座った紫髪の少女が目に入った。
ちなみに、コルアルの正体は未だ謎だ。
どうやらアイスが好きらしいということくらいしかわからない。
あとは魔法が強いってことか。
顔すらまだちゃんと見れていない。
目が合おうとすると、音速で背けられるのだ。
さすが悪名高いディアボロ。
女の子に嫌われる天才だ。
彼女もまた体調が悪いんじゃないかと心配なのだが、至って健康のようで、そこだけは安心できた。
「ディアボロって可愛い女の子見るの好きだよね」
「シエル様もそう思われますか。私も気になっていました」
コルアルを眺めていたら、シエルとマロンの目から光が消えていた。
まずい!
「あ、いや、そうじゃなくてだな! これにはちゃんとした理由が……」
「ディアボロさん! 聞いているんですか!」
「聞いています! すみません! 一言一句聞き逃さないレベルで聞いています! はい、すみませんでした!」
毎回、俺だけ怒られるのはなぜだ?
その後、アプリカード先生からチーム分けを告げられ、俺たちはダンジョンへと転送された。
◆◆◆
「入り組んでいてわかりにくいですねぇ」
「早く上に行きたいが、階段が見つからんな」
俺たちはウロウロと通路を歩きまわる。
ダンジョンなのでうす暗いが、マロンが火魔法で照らしてくれているので、ぼんやりとは見えていた。
前世では、このRTAだって何度もやり込んでいた。
だから余裕でクリアできると思っていたのだが、やっぱりゲームで見るのと実際に行動するのでは勝手が違くて、少々てこずっている。
繰り返していうが、少々だ。
頑張ればこれくらいどうってことはないと思う。
そう思った瞬間、十字路に突き当たった。
「ディアボロ様、どちらに進みましょうか」
「そうだな……え~っと、とりあえず右に行ってみよう」
角を曲がったところで、ちょうど何かとぶつかった。
「うわっ! な、なんだ、モンスターか!?」
「きゃぁっ! 《重力圧殺》!」
突然、俺の全身が重くなる。
周りの重力が増したような感覚で、身体がミシミシと軋む。
こ、この魔法は……!
「ま、待ってくれ、シエル! 俺だ! ディアボロだ!」
「……ディアボロ?」
凛とした声が聞こえ、重力の圧が消えていく。
思った通り、暗がりから現れたのはシエルだった。
助かった。
彼女もまた、大変に実力をつけている。
下手したら、俺の身体が砕け散るところだったぞ。
これが愛の重さ……。
「やっぱり、シエルか。まだ第五層にいたんだな」
「まさか、ディアボロに会うとはね」
「シエル様、なんだかお久しぶりです」
脱出時間を競い合うといっても、俺たちは大事な仲間同士だからな。
ギスギスした空気にはならなかった。
そういえば、シエルのペアは……。
「コルアルさんも一緒にいるの?」
「ええ、一緒よ。コルアルさん、この人が私の婚約者、ディアボロ・キングストン」
シエルの後ろをよく見ると、紫髪の少女が隠れるように立っていた。
謎の少女、コルアルだ。
ようやくその正体を掴める瞬間がきたぞ。
「ディアボロの評判は最悪だったのだけど、今は見る影もないくらい改心したの。コルアルさんも仲良くできると思うわ」
「はぁ……どうも……」
どアルトの声。
俺と関わりたくない匂いがプンプンしてくる。
マロンの明かりに照らされ、その顔が明るみに出た。
紫の髪に紫の目、そして手に持つは見慣れた杖。
申し程度に額の髪を右に流していた。
……どうして、その程度の変装で誤魔化せると思ったんだ。
「……アルコル師匠ですよね?」
「ギクギクギクゥッ! ち、違うわい! だだだ誰じゃ、それ! ワシはコルアルじゃ!」
アルコル師匠は必死になって否定する。
なぜ学園に入学したのかわからんが、原作のシナリオに余計な変化が出そうで怖い。
「ディアボロ、何をいっているの。いくら魔法が上手だからって、コルアルさんがアルコル師匠のはずないじゃない」
「そうですよ。コルアルさんはアルコル師匠じゃありませんって。そもそも全然似ていないじゃないですか」
瓜二つなんだが?
なんなら生き写しって言われてもおかしくないのだが?
というか、名前がそうじゃん。
まぁ、いい。
二人にもアルコル師匠だということを証明してみせよう。
「あっ! あんなところにアイスが!」
「どこじゃ、どこじゃ、どこじゃー!」
コルアル(アルコル師匠)は血眼になってアイスを探す。
どうだ、これで俺の言うことを信じてくれただろう。
「コルアルさん、アイスが好きなんだ」
「これから美味しい季節が待っていますね」
微笑ましい笑みを浮かべるシエルとマロン。
なぜ誤魔化せてしまえるんだ。
「それはそうとして、マロン。私との勝負は忘れてないでしょうね?」
「はい、もちろんでございます。勝った方が、今晩ディアボロ様を独り占めできると……」
「私も負けないから。ということで、覚悟しておいてね、ディアボロ」
「……なるほど?」
知らないうちに、いつもの駆け引きが展開されていた。
マジか。
俺の体力……というか、精力はもつのか?
呆然としていたら、シエルとアルコル師匠は反対側に歩いていってしまった。
まぁ、いいか。
まずやるべきことは、試験のクリアだ。
通路を進んでいると、奥に階段が見つかった。
「ディアボロ様、階段ですよ! 早く行きましょう! 独り占めの権利をかけて!」
「う、うむ……」
駆け出すマロンに手を引かれ走る。
干からびるのが先か、はたまた断罪されるのが先か……。
俺はいつまでも気が抜けない。
気を引き締めて、上層階へと足を進める。
お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます
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おかげさまで、ハイファンタジーランキング6位まで来れました!
ありがとうございます!
この場をお借りして、読者の皆様に御礼申し上げます!
そこで本題ですが、表紙と言われる5位まで、本っっっ当にあと少しです!
皆さまの応援のおかげもあり、差も縮まってきました!
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