第15話:息子は変わった(Side:グランデ①)
ディアボロのことを考えるたび、我輩は憂鬱な気分になっていた。
キングストン家唯一の汚点。
だが、我輩にも責任の一端がある。
多忙を言い訳に息子の教育から目を背けていたのだ。
思い返せば、妻と別居してからだった。
ディアボロが荒れるようになったのは。
息子がああなったのはきっと、親からの愛情不足が原因なのだ。
そう思っても、今さら愛情を注ぐことなどできない。
我が子との接し方すら忘れてしまったのだ。
ある種の諦めから、離れて暮らすようになった。
しかし、ある日ディアボロは突然変わった。
飛べないはずの鳥が大空を羽ばたくかのような……劇的な変化だ。
周りにいる人間全てを攻撃する凶暴な視線は消え、謙虚で柔らかな目つきになった。
学園入学のため、魔法の修行がしたいと言う。
勉強嫌いのディアボロが、とうてい口にするような言葉ではない。
何か別の存在が憑依しているのでは、と疑ったほどだ。
“超成長の洞窟”まで使いたいと言ったときは、我輩もさすがに驚いた。
ディアボロは今までろくに魔法訓練してこなかったのだ。
どうしてそんなにやる気になったのか……その理由は今もわからない。
様子を見るため、使用許可を出した。
指導者には、戦友であるアルコルを呼び、厳しくしてくれと頼んだ。
正直なところ、すぐに投げ出すだろうと思っていた。
元々が怠惰で短気な性格だ。
……ところがどうだ。
ディアボロは真剣に修行に打ち込んだ。
途中で投げ出すようなことはなく、最後までやり遂げた。
あろうことか、回復魔法の習得まで達成したのだ。
有り得ない……。
そんなことは歴史上初めてだ。
だが、アルコルから直接聞いたから間違いない。
そして、我が輩は息子の実力を目の当たりにするのだった。
ディアボロはメイドとして務めるマロンの病気を治した。
咳が多発するという難病だ。
我輩も何人もの医術師や薬を手配したが、治ることはなかった。
そのような難病を、ディアボロは治してしまった。
マロンが庭を走り回る様子は、息子の変化を象徴しているかのようだった。
信じがたいことに、ディアボロの活躍はこれで留まらなかった。
シエル・ディープウインドゥ令嬢。
婚約者に謝りたいといった。
過去、自分が負わせた怪我を治したいと。
――“触れてはいけない話題”……。
当時、ディープウインドゥ家とはかなり揉めた。
当然だ。
自分の娘が傷つけられたが、どんな親でも憤怒の気持ちを抱く。
結果として、ディープウインドゥ家は引き下がってくれた。
公爵家という立場の違いからだろう。
我輩もまた保障はしたものの、それっきりにしてしまった。
シエル嬢の足が治ってから、本人とも伯爵夫妻とも話ができた。
ディアボロが両家の仲を修復してくれたのだ。
――我輩は、父として未熟だった。
息子の変化を見て、そう感じる。
我輩は一番大事な物を見失っていた。
ディアボロ、ありがとう……。
お前のおかげで我輩も新しい一歩を踏み出せる。
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