プロローグ 孫悟空異世界に行く!
西遊記が好きな作者が書いた、孫悟空の物語です。
はるか昔の中国、神々(かみがみ)を相手取り戦いを挑んだ猿の妖獣がいた。そいつの名は『孫悟空』!
しかし、最高神に敗れ今は、岩の中(岩の中といっても、鉄格子が一ヵ所あり日光が入る造りになっているが)に幽閉されている。
「今日でちょうど三百年目か……。」
岩壁に破片で日数を書き続け、過ぎた時間が残酷だと痛感させられた。
「こんなに年月が経っても、あいつらは笑っている。すまねぇ牛魔王、俺は勝てなかったよ。」
牛魔王の形見である、角のペンダントを握り言葉をふるわせる。
「あいつらを、神々をぶちのめす力が欲しい……!」
嘆いたところで何も変わらないのに、ついこぼれてしまう。
「はぁ、暗くなっても仕方ねぇし。今日も修行すっか!」
日課の修行を始めようとしたとき、肌に突き刺さるような悪寒を感じた。
「……!この感覚はあいつと相対したときの感覚、来やがったな最高神!」
因縁の相手が現れたと思い振り返る。しかし、そこにいたのは……。
「わたくしは最高神の娘、オメガよ!会えたことを光栄に思いなさい!孫悟空!」
「は…?」
予想外な人物が現れて、まぬけな声をあげる。
「なによ、わたくしに会えて嬉しくないの?」
「あいにく俺は、あいつに娘がいたことすら知らないからな。嬉しいとは思わない。」
オメガは頬を膨らませて、不服そうな顔をした。
「……わたくしのありがたみは後で教えるとして、今日はあなたに提案があって来たの。」
「俺が神からの提案を聞くと思うか?ましてや、最高神の娘からだぞ?」
「まぁ聞きなさい、お互いに得することだから。」
オメガは内容を話し始める。
「孫悟空、あなたにはわたくしの管理する"異世界"で暮らしてもらいます。」
「異世界だと…?信じがたいが、この世界以外に世界があるということか?」
異世界という聞き慣れない言葉を言われ、一つの疑問が浮かぶ。
「その通りよ。理解が早くて助かるわ。」
「で、俺のメリットは?そっちが頼んでいるのだから、期待していいよな?」
「えぇ、まずはこれを見て。」
オメガは後ろに手招きして何かを呼んだ。
「これなら、文句ないでしょ?」
目の前に出てきた物を見て俺は絶句した。
「筋斗雲!如意棒!お前ら無事だったのか!?」
筋斗雲と如意棒は意志をがある"物"で、俺の仲間。
幽閉されるとき、最高神に没収されてから再び会うことは今までなかった。
筋斗雲と如意棒は鉄格子の隙間から中に入ると、懐に入りこんだ。
「それじゃ、孫悟空。提案を受けてくれるかしら?」
「ここまでされちゃ断れないな……いいぜ、異世界に行ってやるよ。」
異世界というものに興味が湧いていたのもあり、オメガの提案を受けることにした。しかし……。
「だが、オメガ。その異世界にはどうやって行くんだ?」
意気揚々(いきようよう)と承諾したのはいいが、肝心の行く方法がわからない。
「その事なら心配ないわ。」
そう言い、オメガが指を鳴らすと俺の立っている場所に穴が開いた。
「へ?」
「頑張ってね~。」
「ふざけんな!覚えてろオメガ!」
落ちていく中、暗闇に叫び声が反響する。
完結まで頑張ります。