そして、箱庭へ
橘仁志は目の前に現れた存在に対しびびっていた。
それはそうだろう。人知を超えた存在に対して驚かない奴などいるはずもない。
しかし、腰が抜けるほど驚いているのだが体が動かない。
(なんなんだこれ、体が動かない!いや、周りのやつも全部停まっているだと?どう言うことだ?)
そんな疑問に対し白い存在は口もないのに、こう答えた。
《貴方の思考以外の全ての時間を全て停止しました》
(停止だと?どうやってやってんだ?いや、というより、なんで言葉が通じてんだ?)
《全て魔力によるものです。貴方の思考を魔力で読み取り思念伝達により会話を行っています》
(魔力?そんなものがこの世界にあんのか?)
《貴方のスキルを運用しているものも魔力によるものです。貴方がたの世界におけるダークマターと呼ばれる物質がそれに該当します》
(俺のスキルだと?)
《ここでは詳細をお答え出来ません。しかし、貴方は該当する事象があると自覚しています》
ここまで言われ、仁志は思い当たる節がある。いや、思い当たることしかなかった。
(今までの馬鹿げた力はスキルとよるものだったのか。それに魔力なんてファンタジーなものまで存在するとは。)
そして仁志にとって1番大切な質問を投げかける。
(そっちの世界で俺は友を作ることが出来るのか?)
そう白い存在に問いかけると簡潔に
《可能です》とだけ答えた。
そうなれば答えは仁志の答えは一つしかない。元よりこの世界に未練のない彼は箱庭へ行くことを決意した。
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泣きじゃくった八条マイの前に白い存在が現れ、彼女は茫然としていた。つい先ほどこの世界が幻想だった事に気付き、果てには幻覚が見えてしまったと思いこんでいた。
さらには目の前のそれはおかしな事を聞いてくる。
(私の願い?さらに転送ってどういう事?)
そんな疑問に答えるかの様に
《貴方の住まう世界とは異なった世界へ転送されます。こちらの世界へ来れば、貴方の真の友が出来るはずです》
と返してきた。
(この世界にいては私はきっとこれからも迷惑をかけてしまう。ならいっその事こと違う世界でやり直した方が良いのかもしれないわ。向こうでなら本当のお友達で出来るかもしれないわ)
そこまで考えると彼女は箱庭行きを決意した。
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岩城静香の前に現れた謎の存在に問いかけられ彼女は興奮し一瞬冷静さを失った。
そして仁志やマイと同様のやり取りを行った。ただ他の二人と違って積極的であった。
(今の発言は、どこへ転送されるのかしら?ヨーロッパ?アフリカ?あなたのような訳の分からない存在がたくさんいるせかいかしら。)
そう矢継ぎ早に質問すると
《貴方の世界で言うと異世界です。こちらの世界では箱庭と呼ばれています。そしてこちらと貴方の世界では生態系が全く異なります。故に貴方の能力を優に超えるもの達も存在します》
そう質問に答えた。
(なら答えは決まった。もしかしたら自分のことも分かるかもしれないし)
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この様にして、3人は箱庭行きを決意した。
《ようこそ!箱庭へ!》
そう3人に告げると、その目の前の白い人型の塊は形を変えて大扉へと変貌した。
それはまるで、古代ギリシャのような白塗りの扉で見ているだけで足が竦みそうになる。
しかし、体は自然と扉へと向かいその中へと吸い込まれていった。
扉の中では落ちたり上がったり、さまざまな方向に引っ張られていた。
そして5分が経っただろうか。徐々にスピードが落ちていき、目の前に先ほどの大扉が近づいてきた。
扉の目の前で止まること最後は自分で扉を押し外の世界へと歩み出して行った。
ようやくこの物語の前置きが終了した感じです。
次回から本編に入りますのでよろしくお願いします。