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第8話 問題だらけの初出勤

 出勤時間まで残り20分。

 俺はすでに、アニメイトの前までやって来ていた。


 ふーむ。後20分もあるが、何をして時間を潰そうか。

 買い物とか?いやいや、ここはやっぱりアニメイトの勉強?ん〜どっちも20分じゃキツそうだな。


 

 そうだ!この時間を利用して、有栖川さんに例の件をラインで伝えておくと言うのはどうだろうか?

 これなら直接会ったり電話をするよりも、少しは俺自身の恐怖心が和らぐはずだ。


 ええと…何て送ろうかな。


 【有栖川さんこんにちわ。突然だけど、今週の土曜日に太陽カップルと初デート対決をするよ。細かい事については後ほど連絡を入れるので今週の土曜日は一日開けといて。また厄介毎に巻き込んでしまって本当にごめん】


 

 よし、こんな感じでいいんじゃないか?細かいチェックをしている余裕もないし、これで送信してしまおう。


 おっと、こんな事をしている間に残り時間が後5分になってしまった。

 急いで事務所に向かわないと。


 俺は有栖川さんにラインを送信してすぐにアニメイトの事務所へと向かった。

 そして事務所に入ると目の前に、腕を組み険しい表情をしている店長が立っていた。


 「お…お疲れ様で…す」


 「お疲れ様…」


 この人なんでこんなにキレてんの!?

 いや、これがこの人の普通なのか?


 「一ノ瀬千種君…」


 「は…はい」


 「今、何時か分かる?」


 「16時59分です…」


 これ…やっぱりキレてるよね!!

 声と表情がもうヤ○ザそのものなんですけど!!


 俺が時間を間違えたのか?

 ……いや、それはありえない。何故なら、昨日も今日も何百回と出勤時間は確認したからだ。


 些細なミスとかして、仕事の出来ない使えない存在だと思われるのも癪に障るし俺のプライドがそれを許さない。

 それなのに、何故出勤早々俺は店長にキレられているんだ!?


 「そうよね。なら、一ノ瀬君の出勤時間って何時?」


 「ええと…17時です」


 「ちゃんと分かってるじゃない。じゃあどうしてこの時間に来たの?」


 え?俺は何を聞かれているんだ?

 17時が出勤時間だから、17時に間に合うよう来ただけなのに。


 「17時が…出勤時間だからです」


 「あぁ?ふざけたことほざいてんじゃねえぞ若造が!!」


 ヒエーーーーー!!

 超怖いんですけどーーーー!!

 一体俺の発言の何が駄目だったの!?


 「いいか?普通仕事ってのは、開始時間の15分前には絶対に来るものなんだよ。そんな常識的な事から叩きこまないといけないなんて…ウズウズさせてくれるじゃねえか」


 な…何なんだこの人。

 て言うか、そんな常識初めて聞いたし!!

 

 ああ…もうすでに…逃げ出したい。


 


 ◇◇◇



 店長から強烈なお叱りを受けた俺は、龍崎さんと言うアニメイトバイト歴5年の先輩から色々と指導を受けていた。

 物の配置、どのエリアに何があるのか、そしてメインのレジ打ちの仕方などなど覚える事は山のようにありそうだ。


 

 「じゃあこれとこれ、後これを補充して来て」


 「分かりました」


 俺は龍崎さんから指示を受けて、人気アニメグッズの補充に向かおうとしていた。

 だけど俺はすぐに足を止める。


 何故なら、俺が補充先に向かうのと同じタイミングで花梨が事務所から出て来たからだ。


 「お疲れ様です。早乙女入ります」


 「お疲れっす早乙女ちゃーん!昼からずっと早乙女ちゃんの事待ってたよー!」


 出勤して来た花梨に対して、龍崎さんがとても親しげに挨拶をする。

 

 「あ、えっと…龍崎さんは今日も元気ですね」


 「そう?それは多分、早乙女ちゃんのおかげかな」


 「え…私ですか?」


 「そうだよ。だってさ、早乙女ちゃんみたいな可愛い子と毎日仕事が出来るって幸せじゃん?幸せって事は、疲れないって事じゃん?疲れないって事は元気って事じゃん?元気って事は困った事があったら俺を頼れって事…」


 は?何言ってんだこの人?

 結構頼れる人なのかなって思ってたけど…ただの馬鹿なのかも。


 「あ…ありがとうございます。また何かあれば…頼らせていただきます」


 「いいよ!いつでも待ってる!」



 花梨はそんな絡みを龍崎さんとした後、俺のところへやってきた。


 「お疲れ様」


 「おう。お疲れ」


 「さっきの見た?」


 「ああ。花梨って、龍崎さんと結構仲良いんだな」


 「は、はぁ!?あれのどこをどう見て仲がいいと思ったのよ!!」


 ええーー。何でこの人キレてんのーー。

 誰がどう見たって仲良さそうって思うでしょ普通。


 「ご…ごめん!俺の勘違いだったなら謝るよ」


 「べ、別に。それより、アニメイトの仕事はどうなのよ?」


 「うーん、初日から店長に大目玉喰らったよ。それに覚えることも沢山あって、色々と奮闘中って感じかな」


 「そうなんだ…頑張りなよ。千種なら絶対大丈夫…」


 「お…おう。ありがと」


 俺は花梨からの意外な言葉に、少し驚いた。

 

 「おい千種君!!何そんなところで話してんの!早く補充に向かわないか!それに俺の許可なく早乙女ちゃんと話しをしない事!分かった?」


 「あ、はい!すみません!」


 俺と花梨が会話をしているのに気づいた龍崎さんが、すごい剣幕で近づいてきた。

 そして何故か俺だけを注意し、花梨と会話するためには龍崎さんの許可が必要になった。


 「ちょっと龍崎さん!どうして千種だけを注意するんですか!話してたのは私もですし、どちらかと言うと最初に話しかけた私の方が悪い筈です!」


 「違う違う、ぜーんぜん違うよ早乙女ちゃん。そう言う次元の話じゃないんだよ」


 「どう言う事ですか?」


 「だって君は、とても可愛いレディじゃないか。それと違って、彼はただのメンズだ。それに彼は、君と俺の許可なく会話をした。それはとてつもなく大きな罪に値する。だからこれからは、彼に対してはとても厳しく指導をしていくよ」


 え…マジで?初日早々、俺ってやらかした?

 

 「ちょっと待ってください!そんなの納得出来ません!」


 花梨が龍崎さんに食い下がる。


 ありがとう花梨!

 そこまで俺の事を庇ってくれるなんて、花梨ってやっぱりいい奴だったんだな。


 「分かったよ。早乙女ちゃんがそこまで言うなら、考え直してあげてもいいよ」


 「本当ですか!!」


 本当ですか!!おっと、つい花梨と被ってしまった。


 「うん、じゃあ続きは二人で話そうか。分かるよね?」


 「わ…分かりました」


 え?どう言う事だ?

 俺みたいな新人には聞かせられない話なのか?


 そして二人は事務所の方に入って行き、ポツンと一人取り残された俺は頼まれた商品補充に向かうのであった。


 

 

 


 

 

 




 

最後まで読んでいただき有り難うございます。

もし良ければ、ブックマークと評価をよろしくお願いします。

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