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第3話 偽彼女は人気美少女ランキング1位だった

 「ど…どうして有栖川さんが家に?」


 俺は朝起きたばかりで脳がこの状況に追いついていなかった。


 それに俺のこの姿……見られたくねー!!

 ヨレヨレのパジャマ姿にボサボサの髪のこれはいつもか、まだ顔も洗っていないと言う状態。

 いくらオタクで陰キャだからと言っても、これは流石に恥ずかしい。


 「私なりに偽彼女って何をすればいいのか考えて…」


 「う…うん」


 「一緒に登校とかって…間違ってたかな?」


 何だその上目遣い!!反則だろ!!


 まあでも、一緒に登校すると言う事は間違いなく付き合っていると言う証明になるよな。

 そして何より、有栖川さんが考えてきてくれたのに断れるはずがない。


 「いやいやいや、全然間違ってないよ!ちょ…ちょっと待ってて!すぐ準備するから!」


 俺は有栖川さんに玄関で待っててもらい、いつもの10倍の速度で学校へ行く準備をした。

 なのでいつもより、数段見た目に清潔感がないような気がする。


 「お…お待たせ」


 「凄く早かったね」


 「ま…まあね。流石に玄関で長い時間は待たせられないよ」


 「気にしなくてよかったのに」


 有栖川さんがにっこりと笑って家のドアを開けた。


 そして俺と有栖川さんは、二人並んで通学路を歩いて行く。

 

 何だか夢を見ている気分だ。こんなオタクで陰キャな俺の隣に、こんなにも花のある超絶美少女が歩いているなんて。

 俺は一人優越感に浸りながら、周りをキョロキョロしていた。

 

 「一ノ瀬君、私たちってまだお互いの事全然知らないよね?」


 有栖川さんがそう口にした。


 「まあ、確かに」


 「学校までまだ距離があるし、お互いに質問のしあいっこしない?」


 それは名案だと思った。

 付き合っているのに相手の情報が0なんてのは、太陽なら確実につけ込んできそうだしな。

 それに、俺は有栖川さんからの提案は何があろうと断らないと決めていたのだ。


 何故かって?俺よりも有栖川さんのほうが人間として格上だからだよ。

 

 「それはいいね。お互いの事をしっかり理解しておかないと、何かあった時に大変だし」


 「じゃあ決まりね。一ノ瀬君から質問していいよ」


 うーん。三次元の超絶美少女に、一体何を質問すればいいのだろうか。

 アニメやラノベのヒロイン達になら、あれこれ質問できると思うのだが……。


 そうだ!こう言う場合、家族構成とか人間関係、後は好きなアニメキャラを押さえておけば間違い無いんじゃね?


 「ええと…家族ってどう言った構成になってるの?」


 「え?家族?」


 何この反応。まさかの質問をやらかした?

 

 「ご…ごめん!俺、女子に質問とかって初めてで……答えたくなかったら全然大丈夫だから!」


 「違うよ!嫌とかじゃないよ!最初の質問で家族構成を聞かれるとは思わなかったから、驚いただけだよ」


 「そうだったんだ。てっきり不快感を与えてしまったのかと思って、焦ったよ」


 はぁ、助かったぁ。まじで偽彼女を辞められる事態になるかと思ったぞ。

 次からは更に慎重に質問を選ばなくてはな。


 「それじゃあ私の家族構成を教えるね。まずはお父さん、それにお母さん、そして妹がいるよ」


 「なんか理想の家族っぽいと言うか…仲が良さそうな雰囲気が伝わると言うか」


 「全然そんな事ないよ。どっちかと言うと…逆かな」


 「そう…なの?」


 「あ…今のは気にしないで。次は私から質問するね」


 そう言うと、有栖川さんがすぐに質問をしてきた。

 あの悲しそうな表情、一体何だったんだろう。


 「一ノ瀬君って、趣味とかあるの?」


 「趣味ならたくさんあるよ。アニメ見る事、ラノベを読む事、ゲームをしたり、秋葉原に行ってフィギュア散策したりとか最近だと小説を書いたりとかもしてるかな」


 げ!?またやっちゃったよ。

 こう言うのは一般人には惹かれるんだよなぁ。


 「すごい!多趣味なんだね!私は趣味とか全然ないから羨ましい」


 「そ…そうなんだ。じゃあ今度、オススメのラノベとか貸そうか?」


 「え…いいの?私ラノベとか読んだ事ないから読んでみたい!」


 「全然いいよ!一人でも多くの人に、自分のおすすめが読んでもらえる事がオタクとしての喜びっていうか」


 あれ…俺何言っちゃってんだろ。

 有栖川さんがラノベを読んでくれるからって、気がおかしくなっちゃったのか?


 「何それアハハ。でもなんかいいね。そう言うの」


 「あ…ありがと」



 俺たちの間にあった目に見えない気まずさみたいなものが、学校が近くなるにつれて消えていった。

 この後も、お互いに色々と質問をしあって有栖川蜜柑と言う人物についてもよく知る事ができた。



 そして8時25分、学校に到着。


 俺は教室に入るとすぐに、クラスメイト全員からの視線を浴びた。

 クラスメイトは俺を見るなり、隣同士でヒソヒソと話し始めた。


 何だよ一体。


 「おはよう千種。お前今、超有名人だぞ」


 そう言ってきたのは俺の親友にしてライバルの太陽だ。

 

 「一体俺が何したって言うんだ?」


 「そりゃあ決まってるだろ。有栖川蜜柑、あの有名人との登校が話題になってんだよ」


 「え?」


 「まさかお前の彼女があの有栖川蜜柑って、マジ驚いたぜ」


 有栖川さんが有名人?一体何の話だ?


 「有栖川さんってそんなに有名人なの?」


 「はぁ?知らないのか?人気美少女ランキングだよ。お前も参加しただろ?」


 「あ…入学してすぐに陽キャの人から紙を渡されたような…」


 「それだよ。A組の溝渕が入学してすぐに女子のランキングを付けるって言いだして、全クラスの男子に配ったんだ」


 何とも女子から恨まれそうな企画だな。陽キャの考える事はよう分からん。


 「そのランキングで有栖川さんは、有名になったのか?」


 「そうだ!だって有栖川蜜柑は、60人いる女子の中でダントツの一位だったんだからな」


 スゲェー!!

 そんなにすごい人だったとは…偽彼女なんか頼んでしまってよかったのだろうか。


 「俺…有栖川さんのファンから殺されない?」


 「可能性は0とは言えないかもな。因みに俺の彼女は2位だったから、殺される確率はお前の方が高いぞ」


 「それってあんまり変わらなくね?」


 「まあそんな事より、有栖川との2ショット見せてくれよ」


 はいはい。しっかりと準備はしてますよっと。


 「はいこれ」


 俺は太陽に有栖川さんとの2ショットが写っているスマホ画面を見せた。

 

 「まじだ!まじであの有栖川と付き合ってんだな」


 「だからそう言ってるだろ」


 勝った。これで何とか写真集は守ることが出来た。

 ありがとう有栖川さん。


 「あ!そうだ!来週の土曜日にある林間学校でキャンプファイアーがあるんだけどさ、毎年その時に公開カップル宣言ってのをやってるみたいなんだよ」


 「へぇ」


 「今年もそれを溝渕達とやろうって話しになってるから、お前達も参加しろよな」


 「はい?」


 「決定な!」



 嘘だろおいーーーー!!

 どんだけ自分勝手なんだよ!!


 またしても問題発生じゃねえかーーーー!!



 こうして俺は、1年生の中で超有名人となり来週の林間学校への対策に悩まされるのであった。


 


 


 



 


最後まで読んで頂きありがとうございます。

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