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第2話 幼馴染が怖いんです

 「あのう…それって少し変わった告白ですか?」


 やば!!焦りすぎて言葉を短くしすぎた!!

 彼女もそれはビックリしただろうに、突然見ず知らずの男から金を渡された上に告白まで受けたのだから。

 

 「ごめんなさい。少し言葉足らずでした。俺が言いたかったのは、彼女のフリをして欲しいって事なんです」


 「ああ、そう言う事だったんですね。でもどうして私?」


 「ええと…それは…色々と理由がありまして」


 言えるわけねえーー!!

 貴方が可愛いからとか太陽の彼女に勝てるルックスを持っているからとか。


 理由が全て顔ですもん!!


 「分かりました!理由は深くは聞きません。こんな見ず知らずの私に一万円も渡せる貴方はいい人に決まってますし。なので私はこのお金の分はしっかりと彼女のフリをさせていただきます」


 「ほ…本当ですか!?あ…ありがとうございます!!」


 ヤッホーい!!陰キャでオタクな俺が、陽キャでイケメンな太陽より明らかに可愛い彼女をゲットしたぞ!!偽だけど。


 「それで、彼女のフリって具体的に何をすればいいんですか?」


 確かに。まあまずは明日を乗り切らないといけないから、自己紹介と2ショット写真くらいか?

 その後の事はその都度だな。


 「じゃあまずは、自己紹介しますか」


 「そうですね」


 「では俺から、1年B組の一ノ瀬千種です。後は見た目通りの陰キャなオタクです……」


 なんか自分で言ってて、恥ずかしかったな。

 でもちょっと待てよ、彼女に恥ずかしい思いをさせない為に見た目だけでもマシにする必要があるのか?

 この目元まで伸びている前髪にボサボサの髪型、ブレザーの着こなしに丸まった背筋、おまけに少し歪んでいるメガネときた。考えるだけで疲れてくるな。今はやめておこう。


 「一ノ瀬さんも1年生だったんですね!私は1年A組です!名前は有栖川蜜柑って言います。凄く人見知りです」


 同級生だったんだ。こんなに可愛い子がいたのに全然知らなかったな。

 クラスも別だし当たり前か。

 

 「同級生だし、敬語はやめますか?」


 「そうだね…。その方が彼女のフリもしやすいと思う。呼び方は一ノ瀬君でいい?」


 「そ…それでいいよ!有栖川さん!」


 「私はさん付けなんだ」


 「ちょ…ちょっと恥ずかしいから」


 こうして俺と有栖川さんは偽のカップルとなった。

 何かあった時すぐに連絡が取れるよう、連絡先も交換した。

 その後に2ショット写真も撮ってもらい、太陽対策はバッチリだ。


 そして有栖川さんと別れた後、俺は花梨の事を思い出しダッシュで自宅に帰った。



 ハァハァハァハァ。


 「ごめん花梨!!遅くなった!」


 「もう遅すぎ!どんだけ待たせるのよ!」


 ダッシュで家に戻ると、すでに家の前で高校のブレザー姿をした花梨が不機嫌そうに立っていた。

 今日は親も帰りが遅く、チャイムを押しても誰も出なかったのだろう。


 悪い事をしてしまった。

 手には少し重そうな段ボールを抱えており、果物が入っていると言っていたので地面にも置かずずっと持っていてくれたようだ。


 「ほんとごめん!!それもずっと持っててくれたんだよな。家で少し休んで帰ればいいよ」


 「うん…そうさせて」


 俺は家の鍵を開け、来客用のスリッパを出してリビングへと向かう。

 その後ろを花梨もついてくる。


 「お邪魔します。懐かしい、昔と全然変わってないね」


 「まあな、家の中なんて何年経とうが変わんねえよ」


 花梨はソファに座ってリビングを見渡していた。後ろから見ていると、ポニーテイルにしている髪型と小柄で童顔という事もあり小学生にしか見えない。こんな事を言うと、絶対に怒られるので本人には言わないでおこう。


 そして俺は冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注ぐ。


 「でもあれだな、花梨が家に来るのも超久々だよな」


 「確かに。私が最後に来たのって確か中学1年生の頃だったよね」


 「それまではしょっちゅう一緒に遊んでたもんな」


 「本当にね。よく私が千種を泣かしてたっけ」


 「そうだったな。まじで花梨は凶暴だったわ」



 そんなたわいもない話しをしながら、俺たちはリビングでまったりと過ごしていた。

 だが、突然花梨が真剣な表情で口を開いた。


 「千種…彼女が出来たって本当?」


 「え?」


 「嘘だよね?」


 「何で花梨がその事を知ってるんだ?」


 「太陽から聞いたのよ!それでどうなの?彼女が出来たの?」


 太陽の奴、花梨を使って俺を探ろうって事か。

 しかし、俺にそんな手は通用しない。何故なら、俺の中でいくつもの情報漏洩パターンをシュミレーションしているからだ。そのパターンの一つに、花梨から太陽に情報が漏れると言うものも組み込まれている。

 

 我ながら最高なシュミレーションだ。


 「出来たよ。同級生の有栖川蜜柑って子だ」


 「あ…有栖川蜜柑って嘘でしょ…」


 「嘘じゃないよ。ほら」


 俺は完全に信じて貰う為、有栖川さんとの2ショット写真を見せた。

 これで間違いなく信じるだろう。


 「ほ…本当だったんだ。それも相手が、あの有栖川蜜柑って…私帰るね」


 「お…おい!何で急に帰るんだよ」


 「うるさい!!ほっといてよ!!」


 花梨は俺を怒鳴りつけると走って家から出て行った。

 そして一人取り残された俺は、静まり返ったリビングで何故怒鳴られたかを考えながら呆然と立ち竦む。


 一体何故あんなに花梨は怒ったのか。いくら考えても答えは出てこなかった。

 


 まあ深く考えても分からないものは分からないし、ラノベでも読むか。

 考える事をやめた俺は、オタクモードに入り自分の部屋でラノベとアニメを見まくった。

 これだけラノベやアニメを見まくるのには、好きだから意外にもう一つ理由があるのだ。


 実はまだ誰にも言っていないのだが、俺はラノベ作家を目指している。そのためのネタ集めとして、日々大量のラノベやアニメを見ていると言うわけだ。

 

 まあまだまだ始めたばかりで、全然評価もされていないのだけど。でもそのうち、俺は大物ラノベ作家になって見せる!!


 と言うわけで今日はもう寝よう。深夜1時、俺は大きな夢を掲げながら眠りについた。



 次の日ーーーー


 朝7時30分、我が家に一人の来客者が現れた。


 「おはよう。一ノ瀬君、一緒に学校行こ?」


 な…何で…有栖川さんが、俺の家に!?

 俺は起きたばかりでぼーっとしている頭を必死に起こしながら、状況整理に奮闘していた。

 

 



 


 



 


最後まで読んでいただき有り難うございます。

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