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第1話 変なプライドが全ての発端となる

新作ラブコメです。

 「千種……お前って童貞だよな?」


 4月19日月曜日の放課後、何故か俺はまだ入学して間もない瑠璃色高校の1ーB教室で卑猥な質問を受けていた。

 

 教室には卑猥な質問を受けて顔を真っ赤にしている俺、一ノ瀬千種とそんな反応を見て楽しんでいる俺の親友岸部太陽だけがいる。

 太陽は黒板の前にある教卓に座り、足をブラブラさせながら俺の返答を待っていた。


 「ば…馬鹿な事を言うんじゃねえよ!高校生にもなってど…童貞な訳あるか!」


 バタン!!ガシャン!!


 未だに童貞だと言う事を知られたくはなかった俺は、動揺を隠せず勢いよく立ち上がってしまい机と椅子を倒してしまった。

 

 「あははは!千種はわかりやすいな」


 「だから童貞じゃねえって」


 放課後の教室で飛び交う「童貞」と言うワード、万が一にも女子生徒や先生に聞かれた場合俺たちの印象は一瞬にして「変態」になるだろう。入学早々そんなレッテルを貼られた男子生徒がどんな仕打ちに合うのか、想像しただけで悍しい。

 

 そんな事を一ミリも考えていないであろう我が親友太陽が、ニヤニヤと笑みを浮かべながら会話を続けてくる。

 

 「ふーん。そこまで童貞じゃないって言い切るなら、その証拠を見せてみろよ」


 こいつめ、俺が童貞であるかないかに何故そこまでこだわる?

 証拠まで見せろとは余程の理由があるに違いないし、これ以上アイツのペースに乗せられるのもなんかしゃくに触るし……。


 ここは一つ、俺も責めに徹するとしよう。


 「別に証拠を見せてもいいが、太陽の経験人数を先に教えてくれよ。証拠付きでな」


 どうだ太陽、お前がどれだけイケメンで陽キャで高身長でスポーツ万能で勉強が出来ると言っても女の子とそう言う破廉恥な行為はした事ねえはずだ。


 根拠があるのかって?当たり前だ!俺は太陽を中学時代から知っているしその時からあいつは俺の親友だった。

 だが一度も太陽が誰かと付き合っているなんて聞いた事がないし、その上女子の中ではホモ説まで流れてたくらいだ。(相手は何故か俺)

 何故あんなにも高スペックなのに彼女を作らなかったのかは俺も疑問だが、今重要なのは太陽が彼女を作った事がないと言う事実。つまり、彼女がいなかった=経験は無いと言う事になる。

 

 この勝負俺の勝ちだ!!いつから勝負になったかは知らんけど。


 「千種……その言葉を待ってたぜ!この写真を見てみろ!」


 「な!?こ…これは」


 太陽からいきなり渡されたスマホの画面には、ラブラブにいちゃついているブレザー姿の男女が写っていた。

 その男の顔には見覚えがある。そう、今俺の目の前にいる顔面偏差値高すぎ君だ。その隣に写っている女は知らないな。ふりふりファッションの黒上ボブでいかにも地雷系ですと言わんばかりの雰囲気を醸し出している超絶美少女、一体何者だ。


 「俺と写っているこの子は俺の彼女だ!どうだ?超可愛いだろう?ずーっと千種に自慢したくてな」


 か…彼女だと!?

 まさか…そんな事はありえない。何かの間違いだ!!


 「ちょ…ちょっと待て!俺の知る限りでは、太陽は誰とも付き合わない主義の人間なはず」


 「はあ?俺がいつそんなこと言ったよ」


 「だって中学の頃、一度も彼女作った事なかっただろ」


 「ああ、それはただ単に部活と勉強が忙しかったから敢えて作らなかっただけだ。だけど彼女自体はバリバリ欲しかったぜ?だから初めて出来た彼女を千種に自慢したくて今日は残ってもらったんだ」


 やられた……。まんまと太陽の罠に引っ掛かったと言うわけか。

 

 これじゃあ完全に俺の負けじゃねえか。

 高スペックな上に超絶美少女な彼女って……そしてそれをあんな屈辱的な形で自慢してきやがった。

 

 典型的な負けず嫌いの俺は、この状況がどうにも気に食わなかった。

 

 「そ…そうなんだ。やっと出来た彼女をた…大切にしてあげろよなハハハ」


 鏡を見なくても分かる。自分の顔が今、最高レベルに引きつっていると……。

 親友の初彼女を快く祝えないなんて、親友として最低だと思うよ。


 しかし、親友は親友でも俺の中で太陽はライバルだ!

 中学時代から常に陽キャで人気者の太陽、それに比べて俺は陰キャでヘビーなオタク、太陽相手にライバルなんておこがましいとは思うけど、俺には変なプライドがある。プライドなんて捨てて普通に親友として接するべきだとは思うよ?だけどな、プライド以外何も持っていない俺からそれを捨ててしまったら俺には何も残らないんだよ。だから俺はプライドだけは捨てることが出来ないのだ。


 「ありがとよ千種。お前もラノベやアニメばっかり観てないで、彼女の一人くらい作ってみろよ」


 「は?もういるけど……」


 「え?」


 やべーーーー!!

 馬鹿なプライドが架空の彼女を作り出しちゃったよ!!

 

 どうすんのどうすんのこれ!!

 

 「まじで!?彼女出来たのか?」


 「あ…ああ。太陽の彼女より可愛い子だよ」


 訂正する最後のチャンスを失ったーーーー!!

 俺はどんだけ負けず嫌いなんだよ!!

 

 ごめんよ太陽、そんな彼女存在しないから!!


 「へぇ、写真見せろよ。お前の彼女と俺の彼女、どっちが可愛いか俺にも判断させてくれ」


 あ…あの太陽が、あのいつも穏やかな太陽が若干キレとる。

 これは今更全部嘘なんて言ったら確実にブチギレられるな…。


 「今更全部嘘なんて言うなよ?もし全部嘘だとしたら、お前が一番大切にしている大人気声優白雪桃の生サイン入り写真集を燃やすから」


 ヒイイイイ!!

 超怖えええよ!!

 なんか変な汗が出てきて止まんねえよ。


 「そ…そんなわけないだろハハハ。でもまだ写真撮ってないんだよ。また撮ったら見せるよ」


 「付き合ってるのに写真撮ってねえの?普通すぐに記念として一枚は撮るだろ。お前その彼女といつ付き合ったんだ?」


 ガンガン攻めてくるじゃん!!

 それにバリバリ怪しまれてるよね?

 

 バレた時点でアウトだし、こうなりゃ俺もヤケクソだ!


 「さっきだよ。さっきその子と付き合うようになったんだ」


 「さっきって事はこの学校の子だよな。名前は?何年何組の子?」


 もう無理か……。

 太陽が早く嘘だと認めろと言わんばかりの表情で俺に威圧してくる。


 仕方ない…お手上げだ。

 俺みたいな陰キャは学校の女子の名前なんて一人も覚えていないし、話した経験すらないのだから協力者を作ろうにも作れない。

 つまり、完全に詰みなのだ。



 プルルルル、プルルルル、プルルルル。


 「あっ、ちょっとごめん!」


 俺のポッケの中に入っていたスマホが、カオスな空気感の中鳴り響いた。

 完璧に仕組まれていたかのようなタイミング、俺はすかさずポッケからスマホを取り出し太陽に一言声を掛けて教室の外へ出た。


 

 一体この窮地を助けてくれた神様は誰なんだ?

 俺はそんなことを思いながらスマホ画面に表示されている名前を確認した。


 「早乙女花梨……」


 いたーーーー!!

 俺にもいたよ唯一知り合いの女子!!


 早乙女花梨。俺の幼少期からの幼馴染で幼稚園、小学校、中学校、高校とずっと一緒の腐れ縁。

 最近ではあまり話す事もなかったが、今回ばかりは最高にナイスだ。


 「もしもし」


 「もしもし、千種?」


 「どうした?」


 「あのさ…その…私のお母さんが貰い物の果物を千種の家に持って行けって言うから、これから行くね!!」


 ブチ。プー、プー、プー。


 な…何だったんだ。

 これから家に来るってことだけは分かったが、俺はまだ帰れない。


 だが勝機は見えた。

 何とか今を乗り切り、後で花梨に事情を説明して嘘の彼女になってもらえれば……。

 これで万事全て解決だ。



 ガラガラガラ。


 

 「電話は済んだか?」


 「ああ」


 「電話の相手は花梨か?それで彼女のフリをしてくれとでも頼んだか?」


 全て読まれとるぅーー!!

 流石は我が親友だなオイ!!


 待て待て一旦落ち着け。状況は最悪、打つ手がもう無い。

 しかし、俺のお宝を奴のような陽キャに燃やされるのも絶対にNOだ。


 だとすれば、ひとまず話しを終わらし1日でもいいから時間を稼ぐ事が今出来る俺の精一杯。


 「んな訳ないだろ。親だよ親、早く帰って来いってお叱りの電話だ。だから今日はもう帰るよ。明日この話しの続きをしよう」


 「まあ確かにな。もう18時30だし、俺もそろそろ帰らねえと。千種、明日お前の彼女の事全部話してもらうからな」


 「分かってるって」


 

 

 こうして俺と太陽は教室を出て、下駄箱に向かった。

 

 「ごめん、先帰ってて。ちょっとトイレ」


 俺は太陽を先に帰し、ずっと我慢していたトイレに駆け込んだ。


 

 ふぅ、危ないところだったぁ。いろんな意味で。

 それにしても、彼女の件どうするかな。

 一番の有力候補の花梨が駄目となると、俺に女子の知り合いなんていないし。


 

 「あの、すいません」


 「はい?」


 俺がトイレから出てローカを歩いていると、後ろから何とも聴き心地抜群な女子のボイスが流れてきたので反射的に返事をした。

 多分返事をした俺の声は、緊張と驚きのあまり変に高くなってたと思う。


 そして振り向いた先に立っていたのは、声から想像していた美女以上に最強の美女だった。

 スタイルは抜群、肌は透き通る白さ、髪型はウェーブがかかったボブヘアーをしており、目と髪の色は甘栗色と言うのだろうかとてもきれいな色をしている。

 

 俺の視線は彼女に釘付けだった。

 多分彼女は、俺の視線を見て気持ち悪い変態野郎に声を掛けてしまったと後悔している事だろう。


 「この辺りに財布とか落ちていませんでした?私落としちゃったみたいで」

 

 「さ…財布でしゅか!!み…見てないです!!」


 やってしまった。女子と話し慣れていない事が丸分かりな返答の仕方三点を全てしてしまった。言葉は噛む、声が大きくなる、目は泳ぐ、俺は恥ずかしさのあまり身体中の穴と言う穴から汗がにじみ出てきた。


 「そうですか…ごめんなさい。帰るところを引き止めてしまって」


 何その困り顔、助けてくださいオーラビンビンに感じるんですけど。

 女子ってみんなこうなの?こんなあざとい雰囲気がスタンダードなわけ?


 これは男子はやられるよ。うん間違いない。

 「男は死ぬまで女の掌の上で転がされながら生きていく生物である」と、有名な偉人が言っていたような気がするがまさにその通りだ。


 「こ…これ!!つ…使ってください!!」


 「え?いいんですか?」


 「はい!!」


 俺は急いで財布の中から全財産の1万円を取り出し、彼女に渡した。

 買いたい物は山ほどあった。最新刊のラノベ、好きなヒロインのフィギュア、だが後悔はしていない。

 

 なぜなら、ある条件を彼女に突き付けるからだ。


 「その代わりと言っては何なのですが……俺の彼女になってくれませんか!!」


 「ん?」



 突然出た俺の意味不明な言葉に、彼女は固まっていた。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

本日より毎日投稿を行うのでよろしくお願いいたします。


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