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カジナ・ザカリア、決断

 コーヒーブレイクをして一息ついたところで、担当者は話を切り出した。

「さて、経歴書を見ると趣味に絵描きともあるが、この場で描くことはできるのかい?」

「え、」

 唐突なことにザカリアは驚いた。まさか、道具を用意するのだろうか? もちろん、鉛筆と紙があればデッサンやスケッチくらいは描けるだろうと思った。

「はい、鉛筆で、スケッチでよければできます」

「そうか、じゃあ私もモチーフにどうかい?」

 そして、担当者は手にしていた鉛筆と、書類を一枚裏返してザカリアの方へ差し出した。

「ええ、簡単なものでよろしければ」

「どうかな?それらしく構えた方がいいかね?」

 担当者は立ち上がって窓際へ近づくと、外を眺めるような構えをした。

「あ、はい、大丈夫ですよ」

 それからザカリアは。部屋の窓辺に立った姿を手早く描いた。いわゆるカリカチュアと呼ばれる類のもので、風刺画的な画風が特徴だった。

 そうして描き終わったスケッチを見た担当者は思わず笑みをこぼした。

「なかなかだね。風刺画みたいだ。何か本の挿絵にもできそうなくらいだ」

 担当者はそれから改まった様子になった。

「実はね、私はただの面接担当ではなくて、ここで局長をしている」

「きょ、局長、」ザカリアの顔に驚きが浮かんだ。「ということは、つまり、ここのトップの方ということですか!?」

「まあ、驚くだろうね」

「あ、あの、すみません。もっと、ちゃんとした似顔絵を描くべきだったでしょうか?」

 ザカリアは恥ずかしそうに言った。

「いやいや、まったく気にしていない。私は絵心がないもんでね」

 彼は苦笑した。

「それにしても、最初に私が局長だと名乗っていてたら、君は気を張っていたことだろう。人の素の部分というものを、ある程度は見極める必要があったからね。特にこの業界は臨機応変さは必要だし、個性というものも、実は重要だ。君で言えば絵描きが趣味ということで、画家を名乗れば他国への潜入活動では良い隠れ蓑にもできるだろう。それに、カメラを持ち込めないようなところで、スケッチの能力は大変役立つはずだ」

 そう聞いたザカリアは意外に思った。まさかこんなところで、画家としての活動もできることになるかもしれないとは!

「君がここへ訪れた時点で六割、いや七割くらいは採用の方向だった」そこで言葉を区切った。「それに、我が局の優秀な分析官によると適正ありとの診断結果だった」

「あの、いつ分析なんて受けたのですか」

「ああ、正直に言うと、あの鏡だよ」

 局長は部屋の鏡を指さした。

 ザカリアは、振り向いて部屋の後ろを見た。

「あの鏡がなんですか?」

「あれは半透鏡(ハーフミラー)でね。向こうに小部屋があって、この会議室の様子が見えるようになっている」

 ザカリアは思わず赤面した。

「君が鏡に近寄ってきたときは、思わずこちらが驚いたよ」局長は苦笑した。「なにより、身なりに気を使う性格だというのは分かった。それも悪いことではない」

 局長はテーブルの書類を整えながら続けた。

「あとは本人がどうかということだ。もちろん事務仕事もあるが、実際にはフィールドワークつまり、実際に現地に行ってもらうことも多い。場合によっては、これは特殊な場合だが、軍の部隊とも行動を共にすることもあるかもしれない。つまり、相当な覚悟がいる。いいかね?」

「はい」

 ここまで来たザカリアに、迷いはなかった。

「それと、諜報局と言ってもだね。軍の組織の一部であることに変わりはない。君には短期だが陸軍基地で訓練を受けてもらうことになるだろう」

「ぐ、軍で訓練ですか……」

「驚くのも無理はないな。しかし私も含めて大半は軍の部隊にいたり、経験を持っている。もちろん全職員というわけではないが、ほぼ全ての職員は定期的に射撃訓練などもおこなっている。君だけが特別というわけではない」

「わかりました」

「それでは、ようこそ我が国防軍諜報局へ」

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