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その6

 その週の土曜日、私はPTA役員の会合に出かけた。

「ばかねえ、なんで役員なんか受けちゃうの」

 と留美はあきれたが、好きで引き受けたわけではない。くじ引きで決まったのでしょうがなかったのだ。

 今、PTA役員のなり手は少ない。

 私が子供の頃と違い、今は母親も働いている家庭が多く、PTA活動にかける時間を惜しむ親ばかりだ。パートタイムで半日働いているだけの私でさえ、PTAの仕事を負担に感じる。フルタイムで働いている人には過酷な仕事だ。イクメンという言葉が流行っているものの、実際にはPTAの集まりに父親の姿は多くない。かといって、時間の融通がききやすい自営業や専業主婦の人たちばかりにお願いするのも違うと思う。

 進んで引き受ける人がいないから公平にクジ引きで決めることになっているのだが、クジで当たってもどうしてもできない人は、他の人に自分で交渉して代わってもらうこともできる。学校側は一切口出ししない。今の時代、学校側から個人に対して要請すると問題になるらしい。

 運悪くクジで当たってしまった私は、他の人に交代をお願いしなかった。そんなことで人間関係が悪くなるくらいなら、自分でやってしまったほうがいいと諦めたのだ。

「PTAなんか、廃止しちゃえばいいのに」

 これが私の本音である。

 十月には学園祭があり、そこでのバザーに親たちが準備や店番、何らかの係を割り振られる。それに対して文句を言う親もいて、面倒臭いことこの上ない。

 学校行事の諸々など、みんな業者に任せてしまえばいい。時代の変化に対応して行くべきなのだ。


 会合が終わり、席を立とうとした時、後ろに座っていた女性たちが話しているのが聞こえた。

「あの先生、Fラン大学出身なんですって」

 司会役をしていた若い男性教師のことだ。確か留美の子供の担任だったと思う。留美の話では、明るくていい人らしいが。

「ええ、そんなとこ出てても教師になれちゃうの。小学生のほうが頭いいんじゃない」

「Fランのくせに偉そうにって、家でもいつも子供とバカにして笑ってるわ」

 私は嫌な気分がした。

 昭和の昔と違って高学歴の女性が今は普通にいる。私でさえ、前述の先生よりは偏差値の高い大学を出ている。

 内心、不安に感じることもあるけれど、心の中に留めておくのに。子供の前で先生を馬鹿にした言葉を口にすると、子供も先生を見くびるようになる。少なくとも、小学生の子供より先生のほうが知識も人生経験も豊富なのだから、その点だけは気をつけているのに。

 世の中にはいろいろな人がいて、自分と違う価値観や道徳観を持つ人が多勢いる。私は、母親になってより一層それを痛感することとなった。自分と全く違う道徳観の人間と付き合うのはストレスが溜まるが、避けようがないことだった。

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