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その2

 四十になるこの歳まで全く忘れていた子供時代のことを私が急に思い出したのは、友人の留美に誘われたマナー教室がきっかけだと思う。

 留美は、娘の同級生の母親である。幼稚園の入園式でたまたま隣の席に座ったのがきっかけで親しくなった。娘の栞と彼女の息子は特に親しくもないのだが、親同士の私たちは妙に気が合って、子供抜きで付き合いが続いている。

 夏休みのある日、留美が言った。

「私、マナー教室に通おうかと思って」

「マナー教室?」

「来年、主人の父の十三回忌があるのよね。七回忌の時は下の子が臨月だったから行かなくて済んだんだけど、今回は家族みんなで行こうって言われちゃって。向こうは田舎だし、そういう作法に厳しそうだから、これを機にちゃんと習っとこうかな、と」

 そう思い立った留美がインターネットで見つけた「マダム・桜子のマナー教室」は、元華族のマダム・桜子が華族の知識を元に、月に二回、二時間ほどの講義を行うというものらしい。

「恵理ちゃん、もしよかったら一緒に行かない」

 月八千円の月謝は、パートで働く私には安くない金額だが、無理と言うほどでもない。平日の午後なら仕事にも家事にも差し支えない。

 私は誘いに乗った。

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