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その14

 翌日の文化祭は、幸いにも好天に恵まれた。校庭で行われているPTAのバザーには、交代で店番が割り振られ、そちらも特に問題がなかった。

 私は夫と校門で待ち合わせて、娘の発表会のある体育館へ向かった。

 すれ違う人たちは皆、生徒たちの家族ばかり。知った顔もいくつか見える。その度に会釈をしてやり過ごすが、中には隣にいる夫の顔を値踏みするように見ていく人もいる。


 体育館に着くと、ちょうど次が娘のクラスの番だった。

 出し物のオペラは、オペラと言うよりは合唱に手振り身振りをつけているようなものだったが、それはそれで小学生らしく、微笑ましく見られた。子供たちは紙で作った王冠を被り、母親から借りたであろうショールを身にまとい、それぞれが自分の役どころを楽しんで演じている。


 考えたら、桜子のサロンも似たようなものだ。

 実際には貴族でも元華族でもない桜子や私たちが、菊池らはどうかわからないが、あたかも上流階級の人間であるかのように振る舞う。そこには現実の私はない。ただ貴族の役になりきって優雅な時を過ごしている。

 私は上流階級に対して憧れを抱いていても、現実にそうなりたいと願っているのではない。

 知人の中には実際に玉の輿に乗ろうと行動している人もいるが、私の憧れはそれとは違う。少女時代にお姫様のドレスを見てうっとりするような、そういった類いの憧れである。その憧れは現実にならないからこそ夢を見られるのだ。手に入れてしまえばそこに空想の入る余地はなくなり、ただの味気ない日常に堕ちてしまう。

 桜子のサロンが私に心地よいのは、それが虚構であることを皆が認識しているからかもしれないと思った。

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