生まれ変わり
うるっせえなあもう……ん、なんだ? ぜんぜん目が見えねえ! なんだよ、怖ぇよ。
――おめでと……ざいます! 元気な男の子……!
あん? 何言って――俺? おれのこと? 産まれた? え、誰から? 見えねえー!
一日経ったら、ようやく目は見えるようになってきやがった。
待て待て落ち着け。確かガキはそんなすぐ目が見えるようになるわきゃねえ。でも俺には見える。カレンダーだってバッチリだ。死んでる間に随分と時間が経ったみてえだな。
俺は確信した。これあれだ。見た目は子ども、頭脳は大人ってやつ。やったぜ! 生まれ変わったんだ。つーか死んだのかおれ。そうだ、車がカーブを曲がりきれなくて……。ま、いいか。今こうして生きてりゃ文句ねえぜ。
しっかし、まあ、なんというか……ブッサイクな親だなあ。この女のアソコから……やめよう。気持ち悪ぃけど、なんでか嫌いにはなれねえ。おう頭なでろ。
ところで親父はどこだ? 何だババア? ん、あんた病院の人? シグルは大変? 耳はまだよく――って、ああ、離婚したのか? 写真――、おっ! 親父イケメンじゃねえか! こりゃ死んだってワケじゃなく、捨てられたんだな。まあ、俺がいるからよ、いいじゃねえか。
生後二週間で一人歩きをマスターした俺は、びっくり赤ちゃんとしてTVに特集され、そこそこの額を稼ぎ出した。顔が良かったのもある。幸いにも俺は親父に似たらしい。俺たちを捨てた男は許せねえけど、いい顔の遺伝子をくれた点では感謝しなくもない。ガキなんかみんなサルみてえだけど、俺は――自分で言うのも何だけど、本当にかわいいのだ。こんだけかわいけりゃ俺ももっとガキを可愛がってやったのにってなもんよ。
金が入ると地味でブスだったママは派手になり、金遣いが荒くなった。仕事も辞め、毎日遊び歩くようになっちまった。自然俺はひとりで過ごす時間が多くなり、寂しい……くもないか、子役の仕事も一段落し、また平穏な毎日が戻った。はずだった――
やーっと帰ってきたか! 遅せぇよ! つかお前ばあちゃんとかいねぇの!? 俺もうミルクじゃなくて普通にメシ食えるんだからさ、せめてなんか置いてって……誰だお前。どっかで見たことあんな。
あ、親父か! てめえ、今さら何しに――あん? 生意気そうな面だあ? コーちゃんに似てるね、じゃねえよ。お前このタイミングってどう考えても金目当てだろうが。おら、出てけクソ親父!
へぶっ! えウソ、蹴った? 蹴ったぞコイツ! おい痛え!
おいブス煙草すぱすぱやってんじゃねえ! 助けろ! お前家だと吸わなかったじゃねえか! どうしちまったんだよ一体!? 子育てってやっぱめんどいー? だめだこいつ、とんでもねえクズだ。あたしも殴られたりしたしー? それはそれ、これはこれだろうが! お前の両親も相当なクズだな!
えっ、車の事故で死んだ、って? ……そういやよく見ると――あ、あああーーッ!
「ブス――おま、まさかお前は、あの、あの恋笑なのか!」
三嶋が打たれたんならしゃーない