長女出産
オートロックのマンションはエントランスでチャイムを鳴らし、家にいる誰かに扉を開けてもらう。
私の家は戸建て、しかも親も不在。
ただいまーおかえりーって、ドアが開くマンションに凄い憧れた。
そして何より、友達の家に行って友達のお母さんが用意したお菓子が出てくるのが凄く嬉しかった。
今でもオートロックのマンションに憧れたがある。
でも、実際住んでるのは戸建て。
いつかはオートロックのマンションに住みたいなー。
まだローン32年あるけど。
母親は保育士をしていた。
幼心に自分の子どもの面倒は見ないで他人の子どもの面倒を見てる事に嫉妬心を覚えていたのを感じていた。
私が熱を出していた時も仕事を休んでくれた事はなかった。
無性に泣けて部屋で1人で泣いていたのを覚えている。
なのに私も母親と同じ保育士と幼稚園教諭の免許を取れる短大へ進んだ。
高校2年生から付き合っていた直紀くん。
ジャニーズ顔の可愛らしい男の子はプレイボーイだった。
幼稚園の頃から何人か好きな子はいたけど、初めて本気で好きになった男の子。
お互い未経験でなかなか経験が進まなくて半年以上キスもエッチするまでもかかった。
周りが初体験をする中、お互い少し焦ってはいたけど、きっかけがなくて手を繋ぐまでしか出来なかった初々しいお付き合いだったけど。
いきなり自宅近くの森のある公園でキスをしてから、溜まっていた何かが壊れていくかの様に初体験まで行った。
凄く好きだった。
でも、直紀くんは男友達も女友達も大切な人。
男女の友情もある。と断言していた。
私にはそれが理解できなかった。
直紀くんは高校卒業後、料理の専門学校へと進んだ。
女の子が9割いる専門学校。
私は女子大。
ストーカー並みに私の方が学校が早く終わると直紀くんの学校まで行き、校門の前でまちぶせしたりした。
女の子達と楽しそうに門を出てくる直紀くん。
その子達に私が彼女だよと見せ付けるかのように直紀くんのバイクの後ろに当たり前の様に乗って電車で2時間かけて来た道をバイクで帰宅した。
直紀くんは私のヘルメットを同じ学校の女の子に使わせて後ろに乗せていて、喧嘩をしたりもした。
ある日、いつもの様に直紀くんは学校の女の子達とカラオケに行ってた時に喧嘩になり、私から別れを告げた。
『もう無理』と。
いつもなら
『そんな事言わないで』
と懇願する直紀くんも限界だったんだね。
『分かった。』
と、あっさり別れてしまった。
2年半、青春時代の恋愛と言えば直紀くんの顔しか思い浮かばないくらい好きだったなー。
直紀くんと別れた次の日にバイトしていたホームセンターの26歳の社員さんに別れたと話したら
『付き合っちゃう?』
と言われ、付き合ったけど、学生と社会人の恋愛ってそんな面白くもなんともなかった。
高3で同じクラスになったマミと彼氏の克也。
かっちゃん。
2人がかっちゃんの中学からの同級生何人かと連んでいたから週末の度に遊び歩いた。
スノボや飲み会、みんなでワイワイ楽しかった。
そのうち、かっちゃんの同級生の知くんと付き合う様になった。
知くんは大学生で一人暮らし。
一緒にいたら気楽だった。
でも、知くんの気持ちが重かった。
そのうちに高1から4年も付き合っていたマミと
かっちゃんが別れた。
マミの浮気。
マミ抜きでみんなで遊ぶ様になり、私とかっちゃんが意気投合し始め、知くんを裏切ってしまった。
修羅場だった。
知くんはかっちゃんより私を取ると言ってくれた。
友情より女。
逆にかっちゃんは身を引くと言っていた。
なんかそれで一気に知くんに冷めちゃった。
知くんには悪い事したと今でも思っている。
結果的に知くんとかっちゃんは絶縁した。
かっちゃんと付き合った。
かっちゃんは高校卒業後、川崎で契約社員で働き、一人暮らししていた。
私も自宅近くの保育園で働く様になり、週末は
かっちゃんのいる川崎で過ごし、土曜日の遅くに家に戻る生活をしていた。
22歳の春、有給が溜まり、新学期になってクラスの子ども達も落ち着いたから行事が始まる前に1週間休んでいいと園長に言われ、かっちゃんと休みを合わせて北海道へ旅行に行った。
社会人3年目は去年、年長を担任していた続きで
また年長組の担任。
6月から忙しくなる。
その前に初めて長期休暇を貰えた。
嬉しかった。
ウキウキしながら北海道へ。
レンタカーを借りて。
でもなぜが私の運転。
運転は好き。
まだナビもそこまで新しくないナビだったから果てしなく続く道にかっちゃんのナビが欲しかった。
なのにかっちゃんはずーっと隣で携帯いじってる。
ピロピロ鳴ってる。
それも朝昼夜関係なしに。
女の勘が働いた。
それでも旅行最終日までは我慢した。
せっかくの旅行を台無しにしたくなったから。
でも、我慢も限界に達した。
なんか私の体調も良くないし。
大好きなお酒も気持ち悪くてあんまり呑めなかった。
ストレスだろうと思た。
夜、かっちゃんがお風呂に入った時にメールが来たから見た。
女だった。
たわいも無い話。
私とかっちゃんが2人で見ていた、あいのりの話。
他の女ともあいのりの話で盛り上がっていた。
お風呂から出てくるかっちゃんにカマかけて聞いた。
『メールなってたよ。北海道きてずっとメールしてるでしょ。誰とメールしてるの?』
最初ははぐらかしてたけど、かっちゃんのお父さんの馴染みのスナックの新人で入った女だった。
私もそのスナックには何度か連れてってもらったことある。
お父さんもスナックのマスターも私の存在知ってる。
なのになぜアドレス交換するのか意味不明。
ムカついて
『別れる』って言った。
そしたら
『結衣が別れたいなら何も言わない』
って言われた。
もうおしまいなんだなって思って、明日帰るのに飛行機とか気まずいの嫌だから旅行終わるまでは恋人でいようって2人で決めた。
夜中、かっちゃんが何やらホテルの紙に何かを書いていた。
無事に羽田着いて、バイバイする時に手紙を貰った。
『こんな別れ方でごめん。
結衣は昔から知ってるからつい甘えた。
マミと別れてマミと結衣もきっと気まずくなって、知くんともダメになったのに幸せにしなきゃいけなかったのに本当にごめん』
かっちゃんと付き合ってからマミとも連絡取ってないのを気にしていたみたいだった。
連絡取れるはずがない。
きっと高校の同級生から、かっちゃんの事はマミの耳に入ってると思っていたから私からも連絡はした事ない。
マミからも来ないし。
友達をお互い無くした付き合いなんだから、こんな呆気なく終わっていいのか考えようってお互い少し離れて冷静に考えることにした。
北海道から帰宅後、まだ体調が良く無い。
明日からまた仕事なのに。
って思っていたら、ふと生理が来ていないのに気付いた。
生理用品を旅行バッグに入れていたので、色々あったから忘れていた。
考えたらもう生理遅れて1週間以上たっていた。
薬局へ走った。
妊娠検査薬なんて買ったことなかったから何か悪い事をしてる感覚に襲われた。
隠しながら自宅へ戻り、検査した。
陽性だった。
嬉しくなかった。
かっちゃんと冷静に考える期間ってさっき言ったばっかりなのに。
とりあえずお母さんに電話した。
ちょうど休憩時間なのを知っていたから。
『話があるんだけど』
『それより、ただいま。でしょ?
北海道楽しかった?』
電話越しに聞こえるお母さんからの私と真逆の声のトーン
『どうしたの?
もしかしておめでた??』
母すごい
本当に何も言ってないのになぜその言葉が出てくるのか。
『うん』
『やったー。
お母さん40代でおばあちゃんになるのが夢だったの』
母48歳。
残り9ヶ月お腹にいたら49歳でおばあちゃんになる計算。
とりあえず、かっちゃんに言わなきゃ。
お母さんと電話切った後、かっちゃんに電話して話した。
『3日間考えさせてほしい』
それがかっちゃんの答え。
ちょっと待て。
何考えさせて欲しいって?
別れたくないって手紙までくれたよね?
それは子どもが出来てない付き合いだから?
お母さんは喜んでくれたのに、かっちゃんは喜んでくれないんだ。
そりゃそーだよね。
まだ22歳だもんね。
遊びたいよね。
納得は出来ないけど、もしもかっちゃんが父親になってくれなくても1人で育てようと思っていた。
帰宅した母にお父さんにはまだ言わないでとだけ伝えた。
お母さんはずっとハイテンションでだった。
かっちゃんの事なんて言えない。
3日待った。
その日は私の誕生日だった。
最悪の誕生日になるのか最高の誕生日になるのか。
かっちゃんから夜、電話きた。
『じゃあ、結婚しよう』
じゃあ?
でも、かっちゃんの性格ってこんなもんか。
スナックの女とも連絡取ってないって言ってた。
23歳。
一応、最高の誕生日になったのかな?
かっちゃんとの結婚が決まり、私のお父さんに報告。
かっちゃん、何度か会ってるけど正座して緊張してた。
でも、お父さんから出てきた言葉が
『おー。
おめでとー。
やったなー。
むしろ、かっちゃんが正座して話あるって言った時から何となく想像できたわ笑笑』
だった。
昔から私の常に味方でいてくれた父親。
娘に甘い父親があっさり認めてくれた。
その週末、両家顔合わせ
かっちゃんのお父さんは自営業で内壁屋さん。
お母さんはまだ仲良くなる前の高校1年生の時に脳梗塞で倒れ、半身麻痺している。
ゆっくりなら話せる。
いつもニコニコして優しいお母さん。
乾杯から、かっちゃんのお父さんは申し訳なさそうだった。
でも、うちの両親が孫の誕生に喜んでいたから
気まずい雰囲気にならず。
そして父親同士意気投合。
料亭からカラオケ。
妊婦の私が運転手でいるからって、終電超えで最後はかっちゃん父の馴染みのスナックへ。
かっちゃんとメールしてた女は休みだった。
私のお父さんとかっちゃんのお父さんが仲良くなってくれて良かった。
初顔合わせからそんなだったから何かあるたびに集まる仲の良い両家になった。
私は悪阻が酷く、入院してしまい、保育園には迷惑をかけてしまったがそのまま辞めざるを得なかった。
すぐに実家近くのアパートにかっちゃんとアパートを借りて入籍、安定期に入ってから結婚式、新婚旅行で沖縄にも行けた。
でも、予定日2週間前に自宅で破水。
病院へ行き、お腹にモニターを付けていたら
かっちゃんが
『あいのり観たいから帰っていい?
いつまで俺いなきゃいけないの?』
え?
待望の子どもが生まれるのに?
まだ陣痛きてないけど、破水したんだよ?
それを聞いてた看護婦さん、
『まだ生まれないから旦那さん邪魔だから帰っていいよ』
ってちょいキレ気味に言った。
なのにかっちゃん、足早で帰宅していきましたよ。
嫌味も分からないのか?
その日は陣痛来ないし、とりあえず入院。
次の日、朝早くから陣痛促進剤と子宮口を広げる処置が始まった。
でも3日たっても生まれず、子宮の中の羊水がなくなってしまい、緊急帝王切開で出産。
苦しくて吐きすぎて。
辛かったけど赤ちゃんに会えて涙出た。
なのにかっちゃんは労りの言葉も何も気持ちが動かないの?ってくらい普通で温度差を感じた。
でも、疲れ切っていた私は痛さと疲れ、
安心感で寝てしまった。
いつたっちゃんと両親が帰ったのかも覚えてない。
お祝いの焼肉食べてくるとか言ってたなー




