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二話 捕らわれた私

真っ白い部屋で目覚めた亜梨花。そこへ次々と殺人犯の兄弟がやってくる。

逃げ出すために紡いだ兄弟との会話からは、彼らの隠している秘密の匂いが……。


「う……ん」

 

 頭が痛い。ずきずきした痛みで、私は目を覚ました。

 私がいたのは簡素なベッドの上で、シーツも壁も天井も、目に入るものは全てが白だった。

 起き上がろうとして気付く。両手両足がベッドの脚から伸びた鎖で拘束されていた。


「な、なにこれ……!」


 ガチャガチャと体を揺すって逃げ出そうとするが、拘束が外れる気配はない。

 混乱する中、部屋に一つだけある扉が開かれた。


「……目が覚めたみたいだね」


 入ってきたのは、さっきの眼鏡の男性だ。一瞬安堵しそうになって、すぐに思い出す。


(たしかこの人が誰かに指示を出した後、私は頭を殴られて……)


 自分の身に何が起きたのか。……おそらくこの男性にさらわれてしまったとみて間違いないだろう。

 そこへさらにもう一人、中学一年生くらいの背の低い男の子が入ってきた。声変わり前の少年ボイスが、眼鏡の男性に尋ねる。


「ヒロ兄ー、さっきの女、起きたんだ?」

「キリか。うん、たった今目覚めたみたいだ。晃平はまだ来られそうにないって?」

「うん。……この女も運が良いのか悪いのか」


 キリと呼ばれた少年が冷たく笑う。

 私は二人の顔を交互に見ながら、なんとか声を発した。


「あの、あなた達は、どうして私をさらったの……?」


 キリがきょとんとして、ヒロ兄と呼ばれた男性を見上げる。


「だってよ。正直答える義理は無いよねー?」

「まあ、そうだね……。でも、この子には知らせておいてあげた方がいいんじゃないのかな。晃平が来られないなら、まだもう少しここにいてもらうことになるし」


 ヒロにそう言われ、キリは、じゃあ俺が教えてやるよ、と再び笑った。


「お前、見ただろう。ミク兄が人を殺すところ」

「! ……見た、けど。あの殺人犯は、あなたのお兄さんだったの?」

「そうだよ。そしてミク兄が殺人をする時はいつも俺たちが見張ってる。そして目撃者がいれば、そいつを消すのが兄弟のルールだ。つまりお前は、もうすぐ俺たちに消されるんだよ」

「消さ、れる……」


 口の中がカラカラに乾いていた。

 生々しく覚えている、女の人の無残な遺体。私ももうすぐあんな風にされてしまうんだろうか。


「や、やだよ!」


 思った瞬間、口に出ていた。意味が分からない。私はただ、家に帰ろうとしていただけだ。悪いことなんて何もしてないのに。


「やだって言われてもねえ……」


 やれやれという顔でキリが私に顔を近づける。


「俺たちはもう何年もこんな風にして生きてんだよ。泣こうが喚こうが、お前の運命は変わらねえんだ」


 ぶっきらぼうに言い放つ。その瞳の奥に、何か辛そうな色が宿った気がして、私は思わず問いかける。


「何年も……?」


 私の急な問いかけに戸惑ったように、キリの顔がパッと離れる。

 ヒロがキリの方にそっと手を添えた。キリは明らかに動揺している。


「君は一応、捕らわれてる身な訳だから……。あんまり僕たちに興味を持つもんじゃないよ」


 ヒロの言葉に、私はさらに食い下がった。


「どうせ殺すなら、何を知られたって不都合はないんじゃない? ――さっきもまるであなたたちの兄弟が何度も殺人を犯してるみたいな言い方してたよね。どういうこと?」

「お、おい、ヒロ兄! この女やべえよ。目覚めてすぐこんなに喋りまくるやつ今までいたか!?」


 キリが不気味なものを見るような目を向けてくる。

 でも――当然だ。少しでも情報を引き出して、時間を稼いで、そうすれば少しはこの状況をなんとかできるかもしれない。

 私の頭の中にあるのはそれだけだった。

 ヒロは横たわった私を見下ろすと、声に同情を滲ませて言った。


「悪いけど、君を解放することは出来ない。何を言われても、僕たち兄弟はお互いのために、そうすることを決めてるんだ。ただ……」

「ただ?」

「もう少しこの状態が続くかも、とだけ言っておく」

「どうして?」

「ヒロ兄、もういいだろ。早くこの部屋出ようぜ。こいつと会話してたくないよ、俺」


 キリが泣きそうな顔でヒロのシャツの裾を引っ張る。……この状況での私のリアクションはそんなにおかしいんだろうか。

 その時。


「ヒロ兄、キリ兄!」


 部屋の中に、キリよりもさらに小さい男の子が入ってくる。ベッドの上の私と目が合うと、無邪気に手を振って再び兄たちに向き直った。


「ミク兄、元に戻ったよ! 早くみんなでご飯にしようよお」

「ちょうどよかった……。ほらヒロ兄! 行くぞ」

「ああ。――じゃあ、おとなしくしててね」


 ぞろぞろと部屋を出ていく兄弟を見送って、鍵の閉まる音を聞きながら私はここまでの会話でわかったことを、頭の中で整理する。


 女の人を殺していたのはミクという男の子であるということ。

 ミクを除く三人の兄弟が、殺害現場を目撃した人間を連れ去って殺しているということ。


(じゃあ、私がすぐに殺されないのはどうして?)


 手元にある情報では、考えてもわからない。

 私は再び鎖を解こうともがいたが、それも無意味だった。

 絶望の二文字がちらつく中、一輝の顔が頭に浮かんだ。


(一輝、資料提出間に合ったのかな。資料に必死になってるだろうから、私がいなくなったこと気づいてないかな。……私のこと探してくれてないかな)


 そう考えたとたん、急に自分が孤独な虜囚であることを思い知らされて、自然と涙が零れた。


長男ヒロ、三男キリのコンビでお送りしました!

次回からは次男、四男も出てきもますよー。

そして晃平とは……。

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