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一話 殺人鬼との出会い

初投稿です。

のんびり続けていくつもりですので、よければお付き合いください!

 その日は、雨が降っていた。

 委員会からの帰り道、傘を持っていなかった私と一輝は、全速力で家路を駆けていた。濡れた髪が額に張り付いて気持ちが悪い。


「あっ」


 声をあげて、一輝のスピードが緩み、止まる。私は戸惑いながら立ち止まった。


「どうした?」

「……悪ぃ、文化祭の資料、学校に忘れてきた」

「ええっ、あれ今日中に委員長にメール提出でしょ? まずいじゃん。取りに戻りなよ」


 一輝は渋い顔で逡巡した後、踵を返した。


「マジでごめん、亜梨花! ほんとは彼氏として、お前を送ってから戻るべきなんだろうけど――」

「いいって、雨降ってるし、この森回ったら家すぐだもん」


 一輝は申し訳なさそうな顔のまま、今来た道を戻っていく。


「ほんっと、おっちょこちょいだなー」


 なんであんな奴が文化祭の実行委員になれたんだろう、と少し不思議に思いながら、私は再び家に向かって足を早めた。


 通学路の途中にある、深い深い森。私も一番奥までは入ったことがなくて、高校生になってからはその不気味さに、森を迂回して登下校するようになった。

 しかし今日はそんなことは言っていられない。すでにローファーの中の靴下までびちょびちょなのだ。


(森の中を突っ切る……って言ったって、森の端っこをショートカットするだけだ。別に平気平気)


 そう自分に言い聞かせつつ森に入る。雨のせいもあって、尋常じゃないくらい真っ暗だった。

しかし木々のお陰か、ほんの少し雨足が弱まったように感じる。ぬかるんだ道を、私は慎重に進んだ。

1人になった途端、さっきの一輝の言葉を改めて思い出す。


「〝彼氏として〟…かぁ」


その言葉に、違和感の様な小っ恥ずかしさの様な不思議な気持ちになった。

私達が付き合い始めたのは、つい先々週のこと。幼馴染みとしてずっと一緒にいた一輝からの告白は、私にとって驚き一色で、嫌悪感も無ければ付き合いたいという気持ちも正直、無かった。

でも、一輝が真剣に私のことを想ってくれてたんだと知って、これからは彼氏彼女として仲良くしてくのかなぁなんてぼんやり思いながら交際を承諾したのだ。


(だけど、いきなり彼氏だの彼女だの言われてもねぇ)


一輝からそんな言葉が出る度に、なんだか変な距離を感じてしまう。


(一輝と付き合ったこと、間違いだったかも…)


ふとそう考えてしまう。勇気を出して告白してくれた一輝には、絶対そんなこと言えないけど――。


ガサッ


突然、木々の向こうから音がした。

こんな雨の中、森にいるのは自分だけだと思っていたので心臓が飛び出るかと思った。


(いや、もしかして動物?)


森にいそうな動物……と考えて、リスくらいしか思い浮かばない。だって山じゃあるまいし、大型動物はいないだろう。


(ううん、今の音の大きさからして――)


人間かもしれない。

好奇心で体が動いた。

木々の隙間を抜け、音がした方を木陰から覗く。


「ひっ…!」


そこに居たのは、私と同じ歳くらいの少年。ラベンダー色の知性的な瞳と、透明に近い金髪が暗闇の中で光っていた。息を呑むほど端正で美しい顔立ちだ。

でも、私は彼の手の先の真っ赤なモノを見て、思わず悲鳴をあげてしまった。

白く華奢な彼の腕の先に、血塗れの女の人が捕まっていた。

女の人のお腹は醜く裂けて、彼女の口からは赤いあぶくが吐き出されている。


「…………」


 少年と目が合った。

 私を見た瞬間、少年は女の人から手を離した。重力に従い、女の人がパタリと地面に倒れ伏す。


「っ――――」


 次の瞬間、私は一目散に走り出していた。

 見なかったことにしよう。私は何も見ていないんだ。綺麗な男の子も、血塗れの女の人も。

 家に帰ろう。早く。早く。

 私は自分がどこに向かっているのかも分からずに走った。

 森の奥へ奥へ入っていってしまっているのかもしれない、と気づいたのは、駆け出して少し経って、後ろから男の子が追いかけてきていないことに安堵してからだった。


(よかった……。とにかく男の子に気をつけて、森から出よう)


 一度立ち止まり、呼吸を落ち着かせる。

 そして脳に十分酸素を送って、最初に頭に浮かんだのはあの綺麗な瞳と髪だった。


(あの男の子……私と同じくらいの年なのに)


「人を……殺す、なんて」


 途端にさっきの女の人がフラッシュバックする。今度は、お腹から流れ出した臓物まではっきり思い出してしまう。


「うっ……」


 吐き気を覚え、うずくまる。

 だめだ。リアルに思い出した途端、もう動ける気がしない。さっきの少年がこっちへ来るかもしれないのに。

 その時。


「大丈夫?」


 私の肩に誰かの手が乗った。びくっと大きく肩を震わせて振り返ると、そこには眼鏡をかけた優しげな男の人が立っていた。


「あ、の……」

「どうしたの? 顔が真っ青だけど」


 困惑した様子の男性に、私はつっかえつっかえ状況を説明した。


「……森の端で……男の子が女の人を、ころ、殺してるところを見たんです。気を付けてください、彼はこのあたりにいるかもしれない」


 男性は私の話を聞いて真面目な顔になると、そうか……と呟いた。


「どんな男の子?」

「紫の瞳で、金色っぽい髪の色をしてました。年は私くらい……高校生くらいだと思います」


 男性はその答えに何度も頷き、肩に置いた手のひらをすっと頭に移動させた。


「それは怖い思いをしたね」


 その手の温かさに安心感を覚えたのもつかの間、すぐに男性の放つ殺気に気付き、私は驚きと恐怖で目を見開く。


「――完全に見られてるな。お願い、キリ」


 はーいよ、という幼い少年の声と同時に後頭部に強い衝撃を受け、私の意識は失われた。


 

次回から兄弟たちがしっかり出てきます。お楽しみに!

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